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第4章 菜の花、未来を味わう
80話 桐生サイド・秘密の逢瀬・2
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「木曜日にさ、僕をどっかに連れてってほしいなあ~」
甘える声で陽翔が囁いた。
「どこかって……もう決めてるんだろう?」
「ふふ、バレた? ネットで見つけたんだ。すっごく素敵な宿。日帰りでもいいから、ね?」
差し出された画面には、海を一望できる広いデッキと露天風呂、そして秘密めいた寝室。
「へえ……。専用の露天風呂から沖の船まで見えるのか」
「いいでしょ? 内風呂もあるし、ベッドも大きくてふかふかで……寝転がったら最高だよ」
「陽翔……もう心は決まってる顔だな」
「うん。悠、お願い。……そこで燃えたい」
思わず口元が緩む。
「怖いこと言うなよ」
陽翔は無邪気に体を預けてくる。
「……分かった。明日行こう」
「やった!」
「今夜は早く寝ろよ」
「やだ」
――結局その夜は、陽翔が力尽きるまで抱いた。
*
翌朝は海辺にあった岩場の潮だまりに、陽翔が興奮して足をつけて遊んでいた。
昼食は潮の香りの中で漁師料理を堪能した。
サザエの釜めしは香ばしいお焦げが絶妙で、明日葉の天ぷらは驚くほど柔らかく、口の中で軽やかにほどけた。
「悠、これ……止まらないくらい美味しいよ」
「そんなに喜んでくれるなら、連れてきた甲斐がある」
陽翔は満足げに笑いながら、すぐに甘える声を出す。
「もうお腹いっぱい。早く宿に行こう?」
「……欲張りだな。よし、行こう」
ナビを頼りに車を走らせる。丘の入り口で曲がって宿の駐車場に入った瞬間―。
「……っ、陽翔、やばい。すぐ戻るぞ」
「えっ、なに? どうしたの?」
僕は迷わず車をバックさせ、国道に戻した。
「ちょっと! 宿はどうするの?」
旧道に入り、車を止めて深く息をついた。
「あそこに……院長の車があった。多分、理事も一緒だ」
「……っ、よりによって今?」
「そうだ。あの二人、さすがだよ。いい場所を知ってる。常連なのかなあ?」
陽翔はふくれっ面で、唇を尖らせた。
「僕、すごく悔しい。あんな素敵な場所で二人が燃えてるんだよ? 嫉妬でどうにかなりそう」
堪えきれず笑みが漏れる。愛しいほど嫉妬深い。
「安心しろ。第2候補も探してあるからさ」
実はハプニングがあったら困ると思い、第2候補の宿も探しておいた。
30分ほど戻り、少し山に入ったところに贅沢な造りの離れがある。
電話を入れると、休憩利用もできるという。
露天風呂からは海を望める。十分だ。
「……ほら、陽翔。もっといい場所がある。だから、機嫌直せよ」
「ほんとに?」
「嘘ついてどうする」
陽翔はふくれっ面のまま、こちらをじっと見つめる。
「……じゃあ、行く」
小さな声に、思わず息が漏れた。
「……ったく、お前ってやつは。……俺から目を逸らすなよ」
そう言いながらハンドルを握る指先に、自然と力がこもった。
「宿に着いたらいっぱい抱いてやるよ。それでいいだろう?」
「うん、わかった。待ち遠しいよ……」
またレバーを持つ手に重ねて来た。
ぎゅと握り返した。
甘える声で陽翔が囁いた。
「どこかって……もう決めてるんだろう?」
「ふふ、バレた? ネットで見つけたんだ。すっごく素敵な宿。日帰りでもいいから、ね?」
差し出された画面には、海を一望できる広いデッキと露天風呂、そして秘密めいた寝室。
「へえ……。専用の露天風呂から沖の船まで見えるのか」
「いいでしょ? 内風呂もあるし、ベッドも大きくてふかふかで……寝転がったら最高だよ」
「陽翔……もう心は決まってる顔だな」
「うん。悠、お願い。……そこで燃えたい」
思わず口元が緩む。
「怖いこと言うなよ」
陽翔は無邪気に体を預けてくる。
「……分かった。明日行こう」
「やった!」
「今夜は早く寝ろよ」
「やだ」
――結局その夜は、陽翔が力尽きるまで抱いた。
*
翌朝は海辺にあった岩場の潮だまりに、陽翔が興奮して足をつけて遊んでいた。
昼食は潮の香りの中で漁師料理を堪能した。
サザエの釜めしは香ばしいお焦げが絶妙で、明日葉の天ぷらは驚くほど柔らかく、口の中で軽やかにほどけた。
「悠、これ……止まらないくらい美味しいよ」
「そんなに喜んでくれるなら、連れてきた甲斐がある」
陽翔は満足げに笑いながら、すぐに甘える声を出す。
「もうお腹いっぱい。早く宿に行こう?」
「……欲張りだな。よし、行こう」
ナビを頼りに車を走らせる。丘の入り口で曲がって宿の駐車場に入った瞬間―。
「……っ、陽翔、やばい。すぐ戻るぞ」
「えっ、なに? どうしたの?」
僕は迷わず車をバックさせ、国道に戻した。
「ちょっと! 宿はどうするの?」
旧道に入り、車を止めて深く息をついた。
「あそこに……院長の車があった。多分、理事も一緒だ」
「……っ、よりによって今?」
「そうだ。あの二人、さすがだよ。いい場所を知ってる。常連なのかなあ?」
陽翔はふくれっ面で、唇を尖らせた。
「僕、すごく悔しい。あんな素敵な場所で二人が燃えてるんだよ? 嫉妬でどうにかなりそう」
堪えきれず笑みが漏れる。愛しいほど嫉妬深い。
「安心しろ。第2候補も探してあるからさ」
実はハプニングがあったら困ると思い、第2候補の宿も探しておいた。
30分ほど戻り、少し山に入ったところに贅沢な造りの離れがある。
電話を入れると、休憩利用もできるという。
露天風呂からは海を望める。十分だ。
「……ほら、陽翔。もっといい場所がある。だから、機嫌直せよ」
「ほんとに?」
「嘘ついてどうする」
陽翔はふくれっ面のまま、こちらをじっと見つめる。
「……じゃあ、行く」
小さな声に、思わず息が漏れた。
「……ったく、お前ってやつは。……俺から目を逸らすなよ」
そう言いながらハンドルを握る指先に、自然と力がこもった。
「宿に着いたらいっぱい抱いてやるよ。それでいいだろう?」
「うん、わかった。待ち遠しいよ……」
またレバーを持つ手に重ねて来た。
ぎゅと握り返した。
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