診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第5章 2号館、屋上から動き出す

85話 西村サイド・お返し

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三輪さんたちが作ってくれただし汁。……最高にうれしい!!

こんなにありがたいことはない。

どうして今まで思いつかなかったんだろう?

なんか失礼に当たるような気がしていたんだよね。

あの二人は尊敬する大先輩。

お二人が作っただし汁を欲しがるなんて、私にはできなかった。

でも――川瀬先生が、あっさりと実現してくれた。

ああ~、だから頭のいい人は好きなのよ!

どうしよう……なんかお返しがしたい。何がいいかなあ?

とりあえず今夜の夕食に何か作るか。でも寮生たちがうるさいかもね。

あいつら、食べ物に関しては目ざといんだよな~。

……まあいいや、開き直ろう。

仕事終わりにスーパーでステーキを買ってきた。

どうせうるさいから、みんなの分も買ってきた。これで文句は出ないだろう。

今度からサテも全員、20時から30分間休憩を取ることになった。

だから20時になるとみんなが集まってくる。

私はちょっと早めに戻って、お肉を焼いた。

ソースはステーキソースじゃなくて、和風のわさびソースにしてみた。

――わさび、絶対に合うよね。

みんなが帰ってきた途端――

「ええ~? なに? この匂い!」

とすぐにバレてしまった。

亜衣「主任! 今日はステーキなんですか? すご~い。何かのお祝いですか?」

「そうなのよ。お祝いなの」

上間「今日、厨房が出来たお祝いですか?」

「う~ん……ちょっと違うけど。まあいいから食べて!」

スープも牛肉のスープにしたから、みんなカップを持って並んで!

「わーすごい!」

「はーい!」

お肉は一口大に切って小皿に盛りつけ、みんなに回した。

最後に川瀬先生が来た。もちろん、取っておいた分を多めに足して。

「さあ、頂きましょう!」

佐藤「あれ? 川瀬先生のお肉、多くない?」

青山「わー、分かりやすい! 確かに多いな」

川瀬先生は笑い転げていた。

結局みんなのじとっとした視線が集まったので、しょうがなく打ち明けた。

「そうなのよ。今日は川瀬先生が、私の仕事を毎日1時間も短縮してくれたの。だからお返しなの」

青山「え? 一時間も? って、どういうことなんですか?」

「あのね、私はみんなのために美味しいだしを取ろうと思って、毎日1時間かけてたの。

でも川瀬先生が見かねて院長に伝えてくれたのよ。

そのおかげで、フーズの三輪さんたちが作ってくれただし汁を、寮にも回してくれることになったの!

すごいと思わない? 御礼くらいしたくなるでしょう?」

吉岡「ああ~そうなんですね。それは気が付かなくて申し訳ありませんでした」

するとあちこちから「ごめんなさい」という声が飛んできた。

川瀬先生はちょっと困った顔をして、苦笑いしていた。

「いや~ねえ、もういいのよ。とにかく、これで毎日1時間楽になったんだから、それで充分。

さあ早く食べないと、せっかくのお肉が冷めちゃうわよ!」

「はーい!」

声が揃ったところで、ちょっと川瀬先生の方を見た。

――にこっと、嬉しそうな顔をしてくれた。


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