診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第7章 スタッフ強化作戦

125話 ポスト選び・頭が痛い

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 花井部長に渡辺智一先生の件を相談した。

それだけではない。産婦人科部長にしたい川瀬のこと。

そして素晴らしいキャリアを持つ佐藤麻酔医。

この人には前職同様、麻酔科部長と集中治療室の部長を兼任してもらいたい。

さらに少し悩むのが小児科だ。

本当は抜群のキャリアを持つ人材がいれば理想だったが、今いる医師たちは悪くないものの突出した人はいない。

三浦医師を含めて現在は4名。その中から1人を部長にして、外来も入院もベビーもまとめて見てもらうしかない。

それから臨床検査室。ここも大所帯になった。



会議室で履歴書を広げながら、花井部長、理事、桐生君と人事を検討した。

その結果、産婦人科部長は川瀬医師。

小児科は2号館の山口未来医師(東大出身)。

ここは最年長ということもあり、東大の御威光も借りようかと。

あまり人には聞かせられないが、まあ順当に人を納得させられるだろう。

突出した人がいなくても、立場は人を磨くものだからね。

それから放射線科。ここも人数が多くなった。

部長は2号館の二人の医師から選ぶことになったが、わずかな年齢差で白石由美医師(34歳)を年長者として据えることにした。

その代わりにサテチーフを田嶋亮君(39歳)、本館チーフを一番の古株で貢献者の本居君に。

これならそれぞれの顔も立つだろう。

ただし、人事の発表はオープン2か月前に行う。

最後までキャリアある人材が現れる可能性を捨てきれないからだ。

だから今はまだ内緒。医師名の発表はオープン2か月前、HPで公開することに決めた。

 ――はぁ、会議が終わったらどっと疲れた。

もう何もやる気がしない。

オンコールにして早めに帰宅した。「ちょっと頭が痛い」と言い訳して。(笑)




家に戻ると莉子がいた。

「春ちゃん、どうしたの? 具合悪いの?」

「疲れただけなんだけどさ、頭が痛いってことにしてサボった」

「ふふふ、春ちゃんでもそういうことがあるのね。なんかお菓子でも食べる?」

「お菓子って何があるの?」

莉子は少し照れながら笑った。

「えへへ、恥ずかしいんだけど、イタリアのお菓子“カッサータ”っていうのをネットで調べて作ったんだよ」

「えっ? 莉子が? 珍しい……というか初めてじゃない?」

「うふふ、そうだよ。すごいでしょう?」

「じゃあ絶対食べたい!」

頬を緩ませながら莉子が冷凍庫から白いケーキを切り、赤いお皿に乗せてくれた。

真っ白な生地に赤や緑、黄色のドライフルーツ。

その中にピスタチオやクルミが散りばめられている。まるで宝石箱のようにきれいだった。

「わぁ、すごいじゃない!」

「えへへへ、食べたらもっとすごいよ」

一口食べてみる。冷たくて甘い。

チーズケーキにドライフルーツを入れて凍らせたような、不思議に美味しい味わいだった。

「莉子、これ最高だよ! 本当に美味しい!」

どんどんスプーンが進む。

「コーヒーでも飲む?」

「うん、ホットでお願い」

「OK、待っててね」

仲良くしていたところに、なぜか夏が帰って来た。


「えっ? 二人で何やってるの? お兄さん、頭が痛いんじゃなかったの? 俺、診察に来たんだよ!」

俺と莉子は思わず顔を見合わせ、へらへら笑ってしまった。

「莉子、しょうがないから夏にも出してあげて」

憮然としていた夏だったが、ケーキに目が釘付けだった。

「夏、何飲む?」

「俺もコーヒー」

ははっ、希望はちゃんと言うんだな。

一口食べて「うま~い! これなに?」

「莉子が作ったんだよ。イタリアのカッサータってお菓子」

「へえ~莉子がねぇ。初めてだよね? これ店に出せば絶対売れるよ!」

満面の笑みで喜ぶ莉子。

――たまに早く帰ると、こんな良いことがある。

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