診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
138 / 357
第7章 スタッフ強化作戦

136話 夏輝を見守って

しおりを挟む
 夏が帰宅したことで、しばらく色々考えていた。

そこへ管理課の山野さんから「相談がある」との連絡があり、院長室に来てもらった。

山野「すみません、突然お邪魔してしまって」

「いいですよ。何かありましたか?」

山野「実は2号館のことなんですが、私なりに色々調べてみました。パソコンでAIにも聞きまくったんですけど、分からないことだらけで……正直お手上げでした」

「偉いですね。そうやって自分で調べようとする姿勢は本当に素晴らしいですよ」

山野「この前、院長から“2号館の掃除スタッフは何人必要か”と聞かれたので試算してみたら、50人でも足りないかもしれないと分かって……。

まさか50人なんてと思ってシフトを組んでみたら、やっぱり足りない。

怖くなったんです。間違っているんじゃないかって」

俺は思わず笑顔になった。

「間違っていないですよ。私も試算したら50人くらいになりました。途方もない数ですよね。でもシフト勤務ですから、それだけ必要なんです。

技師もナースも助手も、どんどん増えて……正直、私も怖くなることがあります。つまり、それほど大変なんですよ」

山野「ああ、そうなんですね。……よかった。少し安心しました。それで、間違っていないならと思って、自分なりに組織図を作ってみたんです。拙いものですが、見ていただけますか?」

見せてもらった図には、頂点に院長、その下に管理課課長・山野。さらに2号館掃除主任、その下に各部署ごとのリーダー、その下に4~8名のスタッフ。

――見事すぎて、言葉を失った。

「山野さん、これは本当に素晴らしい。何も言うことはありません。

本来は私が用意すべきところなのに、スタッフ集めで手一杯で、管理の方まで手が回っていませんでした。

許してください」

「ええ?とんでもないです。私はただ形にしてみただけで、正しいかどうかを伺いたかっただけなんです」

「私はこれを最終案と認めます。確かに50人もいれば主任は必要だし、各部署にリーダーも欠かせない。間違いありません。この通りに進めてください」

山野「そうですか……良かった。ホッとしました」

「それでですね、山野さんに折り入ってお願いがあります。これはあなたにしかできないことです」

山野「お願い、ですか?」

「理事のことなんです。今、彼はすっかり自信を失っていて、やる気も出せずにいます。
芸術肌で本当に才能のある子ですが、現実的な実務は苦手で心が追い付いていないんです。
それでも何とか頑張ろうとしているのですが……今は限界に近い。
どうか山野さんの懐の深さで、理事を支えて、自信を取り戻させてやっていただけませんか?」

山野は静かにうなずいた。

「分かりました。私でよければ、いくらでもお手伝いします」

「ありがとうございます。実は、この素晴らしい組織図ですが……なかったことにしていただきたいのです。

代わりに、理事が自分で作れるように導いてやってほしい。彼自身の力を引き出して、自信につなげてほしいんです。私がやれば甘やかしにしかならない。だから、どうかお願いします」頭を下げた。

山野課長はしばらく考えたあと、真剣な表情で答えた。

「……私にできるか分かりません。でもやってみます。うまくいけばいいのですが」

「それで十分です。よろしくお願いします」

彼は深くお辞儀をして、部屋をあとにした。

――本当に申し訳ないお願いをしてしまった。でも、今は山野課長に託すしかない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...