診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第8章 もっと寮が欲しい

160話 紹介者リレー

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 寮があることで地方の人材を確保できるし、上京してくるスタッフにも喜ばれている。

実際、「寮があるから決めた」という人がほとんどだった。

こちらの出費は大きいけれど、人手不足に泣かずに済む。

そして何より――寮生たちの結束力と絆は強い。

これはお金では買えないものだ。

社長には申し訳ないと思いつつ、また寮をお願いした。

昨日Zoom面接をした高原さんから、早速みんなのアドレスと履歴書がファイルで送られてきた。

用意がいいなぁ(笑)

ほとんどの医師が決まっていると聞いて、焦ったんだろう。

そして今夜――「ズーム面接をお願いします」と連絡が入った。



<ズームにて>

「こんばんは。初めまして、菜の花の院長、北原です」

「こんばんは、よろしくお願いします!」

あれっ? 複数の声がした。

画面に次々と顔が映り、みんなで手を振っている。

アハハハ! 思わず笑ってしまった。

こちらが笑うと、みんなも一斉に笑顔を見せてくれた。

「皆さん、こんばんは。そろって面接ありがとうございます。意見は一致しているようですね?」

アハハハと笑い声が返ってくる。

「すみません。僕は救命医の高田道弘です」

隣が顔を出す。

「僕も救命医の河本隆です」

「はい、分かりました。お二人も昨日の高原さん同様、しっかりしたキャリアをお持ちですね。

こちらとしては最高にありがたいのですが……そちらの病院、大丈夫なんですか? 第三次救急センターでしょう?」

高田「はい、そうなんですが……もう“潰れてもいいコマ”扱いなんですよ。
家に帰れず、休む暇もなく、体がもたない。

菜の花のHPを見て、あまりの違いに『これは嘘だろう』と皆で疑ったくらいです。

でも、どうも本当らしいと分かって……。

まだ募集開始から2か月なのに、もうほとんど決まっていると聞いて、取り残される!と焦りました」


「なるほど。うちも大勢のスタッフを一度に確保しないといけませんから、正直焦りました。

でも浅田工業の浅田社長という強力なバックアップがあったからこそ実現できたんです。なければ絶対に無理でした」

高田「そうだったんですか……。それにしても寮があれだけあって無料だなんて、正直“嘘”だと思いました。元は取れるんですか?」

思わず笑った。

「そうなんですよ。どうも社長には大きな目標があるらしくてね。達成までは突き進むつもりのようです。

私はそれを信じて進めるだけ。幸い、スタッフのみんなも楽しんでくれているようで……間違ってなかったと思っています」

河本「では、僕たちを受け入れていただけますか?」

「もちろん。皆さんご一緒にどうぞ」

河本「では、ナースに代わりますね」

画面が揺れて、ごそごそと――女性2人と男性2人が一斉に顔を出して手を振った。

「セーノ! 私たちも行きたいでーす!」

大爆笑! しばらく言葉が出なかった。

「ようこそ、菜の花へ。ぜひいらしてください。

ええっと、ICUナースの東山真央さんと、西田美咲さん、

救命ナースの柏木修平さん、浅野晴輝さんで間違いないですか?」

「はーい!」

「では後ほど内定確約書のファイルを送りますから、署名して送り返してください。

引っ越し手当はお一人10万円。さらに早期契約者には感謝金を最初の給料に加算します。

それから……紹介者への謝礼が入職から3か月後にあります。どなたを紹介者にしますか?」

「ええ? どうしよう……」と全員が顔を見合わせ、決めにくそう。

「ではこうしましょう。最初に面接を受けた高原さんご夫妻から始めて、次に高田さん、その次に……と順番に紹介者に。1名だけは受け取れませんが、あとで皆さんで分ければいいじゃないですか」

わーっと拍手喝采! こちらまで笑いが止まらなかった。

こうして、一度の面接で6名を確保。

嬉しい。ただただ嬉しい。

救命医2名、救急ナース2名、ICUナース2名――。

ああ、ありがとう。


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