診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第9章 内定した方の為に

165話 菜の花タイムズの反響・2

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 岩城「実はさ、院長からもう一つ聞かされたことがあるんだ」

「なんだよ?」

岩城「都内の三次救命センター、知ってるだろ?」

――ああ、もう来たか。

「うん、知ってるよ」

岩城「お前さ、まさか全員引き抜いたんじゃないだろうな?」

「人聞きの悪いこと言うなよ。向こうから面接に来たんだ。俺のせいじゃないだろ?」

岩城「でもな、もう噂は広まってるらしい。最初に夫婦が辞めるって言い出して、内部調査をしたら“他にも辞めた

い人間が6人いる”って分かったんだと。今じゃ雰囲気は険悪だそうだ」

「救命医が言ってたよ。48時間勤務もざらで、家に帰れない。きつすぎて子どもも作れないって。『潰れても良いコマ扱い』ってぼやいてた。そんな扱いをしていた方が悪いだろ? うちに責任はない。あっちが勝手に崩れてるんだよ」

岩城「確かにな。結局、診断書まで出して“鬱”で退職希望って形にしてるらしいぞ」

「へえ、そうか。……可哀想にな。早くうちに来るようメールでも送ってやるか」

岩城「院長も気にしててな。“うちも一斉退職が出たらどうしよう”って戦々恐々らしい」

「大丈夫だよ。大学病院からは誰も来てない。今の段階ではね。岩城様と川瀬様を迎えられただけで十分だよ。……ただナースは分からないけどね。あり得る話だ。ナースの採用は看護部長と師長に任せてるんだよ」

岩城「そうか……それならいい。とりあえず現段階で報告しておく。医者や技師は取られる心配はないけど、ナースは知らないってな」

川瀬「岩城も大変だなあ。俺も早く辞めたいよ。食堂で色んな奴に聞かれまくってさ。でも医者と技師の枠が締め切りになったなら安心だ」

その時、西村主任が顔を出した。

「そろそろご飯にしませんか? おつまみも用意しましたけど」

岩城「あー助かる。俺、今夜は“夕飯要らない”って言って来ちゃったんだ」

「じゃあ食べていけば?」

西村「院長もいかがです? 余分にありますよ」

「悪いね。莉子には“先に食べてていいよ”って言ってあるから」

岩城「莉子ちゃんは元気か?」

「うん、いつも機嫌よくやってるよ」

やがておにぎりや小鉢が並んだ。

岩城「ところでさ、ナースとか助手、掃除スタッフはどれくらい集まった?」

「それがまだ全然足りない。あと20~30人は欲しい。助手ももっといていいし、掃除スタッフも必要だ。シフト制だから実人数の3倍は要るんだよ」

川瀬「それは大変だな。ナースも寮に全員入れたら集まるんだろうけど、さすがに負担が大きい」

「うん。だから寮に入れない人には住宅手当3万円を出してるんだ」

岩城「へえ~太っ腹だな。さすが浅田社長」

「まあね。でもまだ探してるよ。どこかにいないかな?」

話題は尽きず、時間はあっという間に過ぎていった。


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