診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
166 / 431
第9章 内定した方の為に

164話 菜の花タイムズの反響

しおりを挟む
 その後、紆余曲折を経て、各部長たちが途中入職者向けのスケジュールを作成し、菜の花タイムズに掲載してもらった。
これにより、入職日の予約を受け付けることになった。

一番人気は2か月前、つまり10月1日。

スケジュール的に10月から本格始動することが分かるから、誰だってその日に入りたくなる。

ただし寮の入居は9月初旬に集中していた。――つまり「1か月のんびりしたい」ということだろう。

まあ、それもご褒美だ。ゆっくり休んでくれればいい。

きっと辞めるにあたってはいろんな戦いやストレスがあったはずだから。

例の都内の三次救急病院……恨まれるだろうな。潰れないか少し心配だ。

下手をすると救急患者の受け入れ制限に追い込まれるかもしれない。

なにせ救命医3名、救命ナース3名、ICUナース2名――計8名が一度に辞めるのだから。

病院にとっては死活問題だ。

だが、あの救命医が言った通り「潰れても良いコマ扱い」しかしてこなかった。その責任は病院側にある。

そんな折、岩城から「今夜そっちに行く」と連絡があった。
サテの寮で川瀬と飲みたいらしい。面白そうだ。

サテのリビングに入ると、西村主任と川瀬、それに岩城がもう来ていた。
主任は忙しそうに台所仕事をしている。

「よっ、元気か?」岩城はやたら元気そうだ。
寮生が一斉に来るのは20時。それまでは人も少ない。

「どうした?急に。何かあったのか?」

岩城「おい……何だよ、あの菜の花タイムズは! 全国の病院関係者が見て度肝を抜いたと思うよ。医者と技師が100%集まった? あれ、本当なのか?」

ふっと笑った。こうなると、こっちも余裕が出る。

「マジだよ。ウソ書くわけないだろ?」

岩城「一体どうやって全部集めた? まだ募集始めて2か月だろ? 俺、院長に嫌味を言われたぞ」

「ククク、何て?」

岩城「“岩城君、菜の花は医者や技師を全部採用したそうだけど、あれは本当かね?見栄張ってるんじゃないの?”だとよ」
院長の口真似までして笑わせる。

川瀬「だから本当だって言ったろ?」

俺はついヘラヘラ笑ってしまった。……ああ、気分がいい。

「じゃあ、明細見せてやろうか」

携帯に移しておいた医師や技師のリストを見せる。

岩城はしばらくスクロールを続け、現職病院の名前まで一つひとつ確認していた。

やがて――ふう、と深いため息。

「これで信じたか?」

岩城「……まあ、ちょっと待て」

川瀬「実際リスト見た方がびっくりしてんじゃない? ぷっ」

くすくすと笑う川瀬。

「明日、院長に伝えてくれ。“全部事実です”って。外科医だけで8名いるし、宮本君を入れたら9名だ。救命医も4名、麻酔科医は5名いるから手術体制も万全。臨床工学士も5名揃ってる」

――ああ、今が最高に嬉しい。この瞬間が至福だ。

岩城「……俺、すげえとこに来るんだな。はぁ~……予想以上だよ。まいった。完全にまいったよ」

「うちに来たら忙しいぞ。やることが山ほどある。なんせ指導してもらわないといけないしね。外科医なんて全員、岩城狙いなんだから。頼むよ」

笑いながらも、俺は涼しい顔のままだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

月弥総合病院

僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...