診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第9章 内定した方の為に

176話 センターの仲間たちを迎えて

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 その後、三次救命センターには行政の調査が入り、

医療法上も“第三次救命救急センター”の認定基準を満たせなくなっていたため、

自動的に格下げされ、再編が必要となった。

 経営母体の財団は最終的にセンターを手放し、
 経営と再生を菜の花病院に正式に依頼。
 こうしてセンターは、菜の花の傘下に入ることになった。

新しい名称は――

「菜の花病院 急性期・桜丘救命センター」

桜丘というのは、センターがある地域の名前だ。

ニュースでもその後の経過が報じられた。

<報道内容>

「運営資金は浅田工業グループが全額負担します。
 救命センターの再生のため、菜の花病院は大学と臨床教育提携を締結。
 医師の派遣および技術支援を行います。
 また、現場管理は菜の花病院の労務・医療安全チームが担当します。」

 ――あれ? 責任者の欄、理事の“浅田夏輝”になってる。
 ふっ、いつの間に……。

そして、岩城が訴えていた大学病院長も粋な計らいをしてくれた。

菜の花と臨床連携協定を結び、

医師の派遣(岩城と川瀬)を行うことを正式に決定したのだ。

岩城の派遣期間は退職希望日の2026年10月末まで。

川瀬は2026年3月末まで。

――うれしいなあ。

岩城が「特命調査医」、川瀬が「臨床派遣医」として来てくれることになった。

さらに「学会発表や研究活動については、大学の名義を併用できる」とのこと。
うん、結構結構!
最初から“教育と臨床面では協力する”と言っていたんだからね。

 これで大学も医師派遣という実績が残り、
 “支援した”という体裁が保てる。
 臨床症例も得られるし――転んでもただでは起きないよ、あの院長は。
 まあ、いいところもあるけどね。

翌日、みんなでそろってシャトルバスに乗った。

菜の花の新しい制服とIDカード。

俺、岩城、川瀬、理事、桐生、そして花束を抱えた八名のスタッフ。

ドリンクバーや備品類は先に運び込んでおいた。

今日は“お弁当付きのお祝い”だ。

菜の花フーズからは昼前に弁当を届けに来てくれるという。

短時間の滞在だが、気持ちは十分だ。

センターに到着すると、正面玄関には真新しい看板が掲げられていた。

〈菜の花病院 急性期・桜丘救命センター〉

玄関前には何人かのスタッフが出迎えてくれた。

入口を入ると、残っていた8名のスタッフ全員が待っていた。

 ――言葉にならない。

胸の奥が熱くなるような、感無量の再会だった。

あとは、ここからは彼らに任せよう。

高原君が一歩前に出て、花束を差し出した。

「ありがとう。お疲れさまでした」

続いて、8人それぞれが花束を渡していく。

「ごめんね……」

ナースにそう言われて、真理さんや美咲さんが涙をこぼしながら抱き合っていた。

ほかの救命医たちも、固く手を握り合っている。

「帰ってきてくれたのか?」

そう声をかけられて、少し照れながら笑った。

 ――人の心は壊れても、またつながることができる。

 それが“菜の花”の力なんだと思った。


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