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第9章 内定した方の為に
175話 爆弾の行方
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8名が揃って院長室にやって来た。
高原救命医が、やや緊張した面持ちで口を開いた。
「昨日のニュースを見ました。社長に本格的に動いていただいて……本当に感謝しています。ありがとうございました。」
その言葉に合わせるように、ほかのメンバーも一緒に深々と頭を下げた。
高原「それで、今後はどうなるのでしょうか? 正直、それが不安で……」
河本救命医も続いた。
「残されたスタッフも、医者が3名にナースが5名しかいないんですよ。救急はもう受け入れできないはずです。やっぱり今まで一緒に働いてきた仲間だから、心配で……」
「うん、わかるよ。その気持ちはね。――多分、今日か明日には結果が出ると思う。心配しなくていい。」
「結果、ですか?」
「そう。三次センターの経営母体の財団は、社長と古い取引先なんだって。 しかも、かなり支援していたらしい。
それを“考え直す”と通告したらしいから、多分2、3日中には経営を手放すと思うよ」
高原が驚いたように顔を上げた。
「えっ? それじゃあ、残った仲間はどうなるんですか?」
俺は少し笑って答えた。
「大丈夫だよ。財団が経営を手放さないと、あの悪評判のままでは人を募集しても誰も来ない。
今の状態じゃ体裁を保つことさえできないはずだ。
行政も黙っていないだろうし、三次救命センターも格下げになるはずだよ」
皆、しんと黙り込んだ。
「たぶん、財団の方から菜の花に打診してくると思う。
つまり“自分たちでは経営できないから、そっちで引き取ってくれ”と。
社長はそれを待っているんだ。」
「それって……菜の花が吸収するってことですか?」
「うん、そうなるね。今の財団には、残ったスタッフを守る力も、良くしてあげる気持ちももう残っていない。
できるくらいなら、君たちがこんなに傷つくこともなかっただろう。
だから、いっそ菜の花の傘下に入った方がいい。
そうすれば、残った人たちも菜の花の職員になる。
福利厚生も整っているし、給料も上がる。
何より、もう無理をさせるようなことは絶対にない。
それに、菜の花として募集すれば応募も来ると思う。
人が増えれば、現場も明るくなる。――その方がずっといい」
高原がほっとしたように息をついた。
「ああ……そうなんですね。じゃあ、僕たちが菜の花に来たのは結果として良かったんですね?」
「ははっ、そうだよ。君たちが勇気を出してくれたから、世の中も気づいたんだ。
みんなの行動が、確実に良い方向へ進んでいる。安心して」
「君たちが去る前は、人間関係も悪くなっていたと聞いたよ。
でも、“同じ菜の花の仲間になる”とわかれば、きっと残った人たちも安心するはずだ。
今頃は後悔していると思うよ。
正式にセンターが菜の花になったら、新しい制服でも持ってみんなで届けに行こう。
そうすれば、きっとわだかまりも溶けるさ」
「はい!」
8人の顔にようやく笑顔が戻った。
その後、連日ニュースはセンターと財団の動きを追っていたが、やがてひとつの結果が出た。
センターの責任者だった外科部長が、体調不良を理由に辞職――という報道だ。
結局、財団から“しっぽ切り”されたということだろう。
でも、これは違う。切れば済む話じゃない。
俺は岩城に電話をかけた。
「おお? ニュースを見たのか?」
「うん。あの外科部長、辞めさせられたんだろう?
その後、どうしてるのかと思ってさ。もう、どこも雇ってくれないだろう?」
岩城が少し笑った。
「ははあ~ん。北原ならそう言うと思ってたさ。大丈夫だよ。裏から手を回しておいた。
今は大学の研究部に引き取ってもらったんだ。
一応“教育・研修し直し”って形でね。再生してもらわないと困るからさ。」
「そうか……さすが岩城だな。ありがとう。
これであの8人も後悔しないと思うよ。外科部長も責任を取ったわけだしさ。
伝えておくよ。本当にありがとう。」
電話の向こうで、岩城は短く笑った。
――正義が一巡して、人の心が少しずつ癒えていく音がした。
高原救命医が、やや緊張した面持ちで口を開いた。
「昨日のニュースを見ました。社長に本格的に動いていただいて……本当に感謝しています。ありがとうございました。」
その言葉に合わせるように、ほかのメンバーも一緒に深々と頭を下げた。
高原「それで、今後はどうなるのでしょうか? 正直、それが不安で……」
河本救命医も続いた。
「残されたスタッフも、医者が3名にナースが5名しかいないんですよ。救急はもう受け入れできないはずです。やっぱり今まで一緒に働いてきた仲間だから、心配で……」
「うん、わかるよ。その気持ちはね。――多分、今日か明日には結果が出ると思う。心配しなくていい。」
「結果、ですか?」
「そう。三次センターの経営母体の財団は、社長と古い取引先なんだって。 しかも、かなり支援していたらしい。
それを“考え直す”と通告したらしいから、多分2、3日中には経営を手放すと思うよ」
高原が驚いたように顔を上げた。
「えっ? それじゃあ、残った仲間はどうなるんですか?」
俺は少し笑って答えた。
「大丈夫だよ。財団が経営を手放さないと、あの悪評判のままでは人を募集しても誰も来ない。
今の状態じゃ体裁を保つことさえできないはずだ。
行政も黙っていないだろうし、三次救命センターも格下げになるはずだよ」
皆、しんと黙り込んだ。
「たぶん、財団の方から菜の花に打診してくると思う。
つまり“自分たちでは経営できないから、そっちで引き取ってくれ”と。
社長はそれを待っているんだ。」
「それって……菜の花が吸収するってことですか?」
「うん、そうなるね。今の財団には、残ったスタッフを守る力も、良くしてあげる気持ちももう残っていない。
できるくらいなら、君たちがこんなに傷つくこともなかっただろう。
だから、いっそ菜の花の傘下に入った方がいい。
そうすれば、残った人たちも菜の花の職員になる。
福利厚生も整っているし、給料も上がる。
何より、もう無理をさせるようなことは絶対にない。
それに、菜の花として募集すれば応募も来ると思う。
人が増えれば、現場も明るくなる。――その方がずっといい」
高原がほっとしたように息をついた。
「ああ……そうなんですね。じゃあ、僕たちが菜の花に来たのは結果として良かったんですね?」
「ははっ、そうだよ。君たちが勇気を出してくれたから、世の中も気づいたんだ。
みんなの行動が、確実に良い方向へ進んでいる。安心して」
「君たちが去る前は、人間関係も悪くなっていたと聞いたよ。
でも、“同じ菜の花の仲間になる”とわかれば、きっと残った人たちも安心するはずだ。
今頃は後悔していると思うよ。
正式にセンターが菜の花になったら、新しい制服でも持ってみんなで届けに行こう。
そうすれば、きっとわだかまりも溶けるさ」
「はい!」
8人の顔にようやく笑顔が戻った。
その後、連日ニュースはセンターと財団の動きを追っていたが、やがてひとつの結果が出た。
センターの責任者だった外科部長が、体調不良を理由に辞職――という報道だ。
結局、財団から“しっぽ切り”されたということだろう。
でも、これは違う。切れば済む話じゃない。
俺は岩城に電話をかけた。
「おお? ニュースを見たのか?」
「うん。あの外科部長、辞めさせられたんだろう?
その後、どうしてるのかと思ってさ。もう、どこも雇ってくれないだろう?」
岩城が少し笑った。
「ははあ~ん。北原ならそう言うと思ってたさ。大丈夫だよ。裏から手を回しておいた。
今は大学の研究部に引き取ってもらったんだ。
一応“教育・研修し直し”って形でね。再生してもらわないと困るからさ。」
「そうか……さすが岩城だな。ありがとう。
これであの8人も後悔しないと思うよ。外科部長も責任を取ったわけだしさ。
伝えておくよ。本当にありがとう。」
電話の向こうで、岩城は短く笑った。
――正義が一巡して、人の心が少しずつ癒えていく音がした。
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