診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第10章 人が集う、嵐の春

182話 広報に託す・菜の花タイムズ

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 山野さんに通勤の足の件を頼んだところで、次は広報だ。

三枝君を呼んだ。

「お呼びでしょうか?」

相変わらずのイケメンぶりだ。カメラの前に立っても裏方でも、絵になる男だな。

「うん、いろいろニュースがあってね。『菜の花タイムズ』に出してほしいんだ」

「わー良かった。桜丘救命センターの記事を書いたあと、次のネタに困ってたんですよ」

「ちょうどいい。社長がね、駅近のビジネスホテルを買ったんだって」

「へっ?なんでまたそんな大きな話に?」

「今、スタッフの寮がまったく足りないんだよ。それで、菜の花病院と救命センターのどちらに入院しても、家族が格安で泊まれるようにしようって話になってね。朝食も無料なんだ。

それに、これから毎日スタッフが救命センターに通うことになるから、シャトルバスを増やしてドライバーも採用するし、運行コースも新しく作ってもらうんだよ。

多分、2~3日で決まると思う。だから、この記事を『タイムズ』に載せてほしいんだよ」

「わー!ビッグニュースじゃないですか?もう、その辺の病院とどれだけ差をつけるつもりなんです?」

ぷっと笑ってしまった。
「そうかな?」

「シャトルバスの車種もまだ決まってないしね。車体に入れるロゴやネームは、また莉子に頼まないといけないんだ」

「ええ~それもニュースですよ!デザイン決定まで追いかけたいです。写真付きで!」

「あとね、肝心の救命センターなんだけど――医師を4名募集してるのに、まだ応募がないんだ。
前の“古いイメージ”が残ってるみたいでね。今は体制も全く違うのに、みんなそこを知らない」

「じゃあ、僕が現地に行って取材してきます。現場の声をそのまま『タイムズ』に載せてもいいですか?」

「ああ、助かるよ。きっと今の雰囲気を知れば、印象も変わると思う。
給料もいいし、3次じゃなくて2次だから無理なシフトもない。

福利厚生も充実してるし、“菜の花レジデンス”に無料で住めて、シャトルバスで通勤できる。
――ね、いい条件だろ?」

「良すぎて信じてもらえないかもしれませんね。
実際に働いているスタッフのコメントを載せると、説得力が出ますよ」

「うん、そうしてくれる?あちこち取材して、気づいたことがあれば遠慮なく教えてほしい。よろしく頼みます」

「はい、承知しました!」

三枝君は軽やかに一礼し、勢いよく部屋を出ていった。
背中が弾んでいる。きっといい記事になるだろう。

よし、これで一件片付いた。
次は――莉子だな。

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