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第10章 人が集う、嵐の春
184話 KAI君には会えたけど
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出演者の顔ぶれを聞いて、正直、場違いじゃないかと思った。
他に出るのは、絵を描くのが趣味だという人気女優と、その俳優の夫。
この二人は今度公開される映画の主演なのだそうだ。
あとは、その映画のテーマ音楽を担当したグループ。
……なんでそこに莉子が入る?
と思ったら、莉子がその映画のタイトル画を描いたんだという。
聞いてないぞ、それ。
しかも俺まで出る必要があるか?
ところが、これはテレビ局からの強い要請だったらしい……?
どうもそのあたりが怪しい気がする。
会場はホテルの大広間。
前方にはひな壇が用意され、司会者は有名アナウンサー。
完全に“場違い”の予感しかしない。
スタッフに促され、しぶしぶ雛壇へ上がると――
親しげににこっと笑う男性が目に入った。
「えっ……KAI君? なんでここに?」
「お久しぶりでーす!」
あの人気グループ“VOXIVE(ヴォクシヴ)”のKAI君だった。
そのあと、他のメンバーもぞろぞろと上がってきて、
「院長先生!」と声をかけてくれる。
途端に、なんだかうれしくなってしまった。
莉子がそっと耳打ちした。
「KAI君たちが、映画のテーマソングを歌ったんだって」
――なるほど、サプライズってやつか。
久しぶりの再会に、急に緊張が解けた。
もうどうでもいいや、と思えるほどだった。
アナウンサーがゲストたちに次々と話を振りながら、番組は進行していく。
MC「今回は、世界的にも注目されているアーティストの北原莉子さんが、映画のタイトル画を描かれたんですよね?」
莉子「はい、そうです。映画のタイトル画を描くのは初めてでしたけど、
出来上がった映画を観ると、ドキドキしますね」
MC「そしてお隣にいらっしゃるのは……ご主人様ですよね?」
莉子「はい。普段は病院にいるんですけど、今日はちょっと騙して連れてきました」
MC「ええ?騙したんですか?」
会場が一気に和み、みんながくすくすと笑った。
莉子「すごくシャイなんですよ。人前に出るのが苦手みたいで。あ、私もそうなんですけど」
――よく言うよ、まったく。心の中で思わず突っ込んだ。
KAI「でも院長先生はすごく優しいんですよ。
僕らが病院でお世話になったとき、本当に助かりました」
その言葉に思わずニコニコしてしまう。
女優の夫が「あれ?どこかでお会いしたと思ったら、あの病院の院長先生なんですね?
うわ~、家族でいつもお世話になっています。ありがとうございます」と言うものだから、
俺はもう、ただ照れ笑いをするしかなかった。
映画の裏話や撮影の苦労話などが続く。
俺はその映画を一度も観たことがないから、コメントのしようがない。
完全に“地蔵さん”状態だ。
結局、収録は1時間ほどで終了。
するとKAI君たちが立ち上がった。
「先生、久しぶりなのに、俺たちもう移動なんです。すみません、ゆっくり話せなくて」
「いいよ、頑張って。身体を大事にしてな。みんなもね」
「はい、ありがとうございました!先生もどうぞお元気で!」
バタバタと取り巻きと一緒に去っていく姿。
――相変わらず、嵐みたいな人たちだ。
*
今は帰りの車の中。
助手席の莉子に聞いた。
「なあ、莉子。KAI君たちが出るって、知ってたの?」
「ううん、私だって知らなかったよ。
ただ“夏に出てよ”って言われただけだもん」
「……は? 夏が知ってたの?」
「そうだよ。夏だって映画のクレジットに名前が出てるって言ってた。
なんかアニメプラスで協力したらしいよ」
くそ、夏め……。
ただじゃおかないからな。
他に出るのは、絵を描くのが趣味だという人気女優と、その俳優の夫。
この二人は今度公開される映画の主演なのだそうだ。
あとは、その映画のテーマ音楽を担当したグループ。
……なんでそこに莉子が入る?
と思ったら、莉子がその映画のタイトル画を描いたんだという。
聞いてないぞ、それ。
しかも俺まで出る必要があるか?
ところが、これはテレビ局からの強い要請だったらしい……?
どうもそのあたりが怪しい気がする。
会場はホテルの大広間。
前方にはひな壇が用意され、司会者は有名アナウンサー。
完全に“場違い”の予感しかしない。
スタッフに促され、しぶしぶ雛壇へ上がると――
親しげににこっと笑う男性が目に入った。
「えっ……KAI君? なんでここに?」
「お久しぶりでーす!」
あの人気グループ“VOXIVE(ヴォクシヴ)”のKAI君だった。
そのあと、他のメンバーもぞろぞろと上がってきて、
「院長先生!」と声をかけてくれる。
途端に、なんだかうれしくなってしまった。
莉子がそっと耳打ちした。
「KAI君たちが、映画のテーマソングを歌ったんだって」
――なるほど、サプライズってやつか。
久しぶりの再会に、急に緊張が解けた。
もうどうでもいいや、と思えるほどだった。
アナウンサーがゲストたちに次々と話を振りながら、番組は進行していく。
MC「今回は、世界的にも注目されているアーティストの北原莉子さんが、映画のタイトル画を描かれたんですよね?」
莉子「はい、そうです。映画のタイトル画を描くのは初めてでしたけど、
出来上がった映画を観ると、ドキドキしますね」
MC「そしてお隣にいらっしゃるのは……ご主人様ですよね?」
莉子「はい。普段は病院にいるんですけど、今日はちょっと騙して連れてきました」
MC「ええ?騙したんですか?」
会場が一気に和み、みんながくすくすと笑った。
莉子「すごくシャイなんですよ。人前に出るのが苦手みたいで。あ、私もそうなんですけど」
――よく言うよ、まったく。心の中で思わず突っ込んだ。
KAI「でも院長先生はすごく優しいんですよ。
僕らが病院でお世話になったとき、本当に助かりました」
その言葉に思わずニコニコしてしまう。
女優の夫が「あれ?どこかでお会いしたと思ったら、あの病院の院長先生なんですね?
うわ~、家族でいつもお世話になっています。ありがとうございます」と言うものだから、
俺はもう、ただ照れ笑いをするしかなかった。
映画の裏話や撮影の苦労話などが続く。
俺はその映画を一度も観たことがないから、コメントのしようがない。
完全に“地蔵さん”状態だ。
結局、収録は1時間ほどで終了。
するとKAI君たちが立ち上がった。
「先生、久しぶりなのに、俺たちもう移動なんです。すみません、ゆっくり話せなくて」
「いいよ、頑張って。身体を大事にしてな。みんなもね」
「はい、ありがとうございました!先生もどうぞお元気で!」
バタバタと取り巻きと一緒に去っていく姿。
――相変わらず、嵐みたいな人たちだ。
*
今は帰りの車の中。
助手席の莉子に聞いた。
「なあ、莉子。KAI君たちが出るって、知ってたの?」
「ううん、私だって知らなかったよ。
ただ“夏に出てよ”って言われただけだもん」
「……は? 夏が知ってたの?」
「そうだよ。夏だって映画のクレジットに名前が出てるって言ってた。
なんかアニメプラスで協力したらしいよ」
くそ、夏め……。
ただじゃおかないからな。
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