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第10章 人が集う、嵐の春
194話 豪華客船の新婚旅行
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今日の11時が、川瀬と主任の出航時間だ。
豪華客船での四週間の船旅――長い新婚旅行が始まる。
菜の花を早朝6時半に出れば、余裕で着く。
「行ってらっしゃい~!」と、桃香のかわいい声に見送られて出発した。
まだ冷たい春の風が吹いていた。
見送りに行くのは、俺と理事の二人。
病院の6人乗りの小型送迎車には、すでに大きなトランクが二つ積まれている。
それぞれのスーツケースが座席を一つずつ占領してしまったので、
莉子と桃香は残念ながら留守番組だ。
本当は桃香に大きな客船を見せたかったけどね。
「いっぱい写真撮ってきてね」と、二人からの手紙と小さな花束を預かってきた。
まだ通勤ラッシュ前で道はすいている。
「お兄さん、今日はどこを通って行くの?」夏が期待していた。
「もちろん景色のいいところを通るよ。首都高3号線から湾岸線、ベイブリッジを渡るよ」
「わ~うれしい!」主任の明るい声が後ろから聞こえた。ふっ。
湾岸線に入ると、前方に東京湾の景色が広がった。
このコースなら1時間ほどで横浜港・大さん橋に着くはずだ。
川瀬は落ち着かない様子で、何度も時計を見ている。
主任は白いジャケットに淡いブルーのストールを肩にかけ、穏やかに外を眺めていた。
夏「今日は天気が良くてよかったね」
「うん。船旅には最高の日だね」
それから約1時間後、ブリッジを降りて横浜の街に入った。
ベイブリッジの上からも、港に停泊する巨大な客船の船体が見える。
なんて大きいんだろう!
夏「すげえ~デカいなあ~!」と見とれていた。
白く輝く船体と青い海――そのスケールに誰もが息をのんだ。
大さん橋ターミナルの入口では、制服姿のスタッフが笑顔で迎えてくれる。
「おはようございます。お荷物はこちらへお願いします」
「じゃあ、二人だけ先に降りて。2階のカフェでコーヒーでも飲もうよ。
車を停めたら行くからさ」
川瀬「OK、カフェね。先に行ってるよ」
主任「ありがとうございました」
晴れやかな表情だった。
案内係に従って、トランクをカートに載せている二人の姿がバックミラーに映った。
夏「お兄さん、車はどこに停めるの?」
「大さん橋の屋上がすごくいいスポットなんだって。そこに駐車場があるから停めるよ」
夏「わ~そこからも景色が良さそうだね!」
車を停めて、ターミナルの2階カフェに向かった。
夏が珍しそうにキョロキョロしている。
「夏も船に乗りたいのか?」
夏「そんなの決まってるでしょう?」
クスクス笑いが出てしまう。聞くんじゃなかった。
カフェに着くと、海が一望できる席で川瀬が手を振った。
川瀬「ありがとうな。ここまで来てくれて」
主任「本当にお手間をお掛けしました」
「いいよ、遠慮するなよ。人生の最高のイベントだろ?」
二人は照れくさそうに微笑んでいた。
夏「ここは最高に景色がいいね。客船も目の前だしさあ」
ゆっくりお茶をしていると、そろそろ乗船手続きの9時半になった。
「川瀬、忘れ物はないか?」
「あるわけないだろう? 10回くらい見直したよ」ぷっ。
「夏、あれ」――手提げ袋を目で合図した。
夏「うん、わかった」
理事が用意してくれた花束と莉子や桃香の手紙を主任に手渡す。
夏「これは菜の花病院からの餞別です。船室に飾ってください」
川瀬は恥ずかしそうに頭を下げた。
「ありがとう。本当にお世話になりました。行ってきます」
その声に、俺は笑って答えた。
「うん、思いっきり楽しんできて。いっぱい遊んでこいよ」
スタッフの案内に従い、二人がゆっくりと乗船ゲートへ向かう。
スカーフが風になびき、春の陽光に照らされていた。
「俺たちは上のデッキで見送ろうよ」
「うん、行きたい」
紙テープが宙を舞い、朝の光を受けてきらきらと輝いていた。
船がゆっくりと岸を離れ、屋上デッキに上ると、客船がよく見える。
川瀬たちに手を振った。向こうも笑顔で俺たちに手を振り返していた。
夏がずっと動画を撮っていた。
俺は写真を撮って莉子や桃香に送った。
「いいねえ。これで川瀬も本当に幸せになるね」
――いってらっしゃい。
最高の旅を。そして笑顔で帰っておいで。
豪華客船での四週間の船旅――長い新婚旅行が始まる。
菜の花を早朝6時半に出れば、余裕で着く。
「行ってらっしゃい~!」と、桃香のかわいい声に見送られて出発した。
まだ冷たい春の風が吹いていた。
見送りに行くのは、俺と理事の二人。
病院の6人乗りの小型送迎車には、すでに大きなトランクが二つ積まれている。
それぞれのスーツケースが座席を一つずつ占領してしまったので、
莉子と桃香は残念ながら留守番組だ。
本当は桃香に大きな客船を見せたかったけどね。
「いっぱい写真撮ってきてね」と、二人からの手紙と小さな花束を預かってきた。
まだ通勤ラッシュ前で道はすいている。
「お兄さん、今日はどこを通って行くの?」夏が期待していた。
「もちろん景色のいいところを通るよ。首都高3号線から湾岸線、ベイブリッジを渡るよ」
「わ~うれしい!」主任の明るい声が後ろから聞こえた。ふっ。
湾岸線に入ると、前方に東京湾の景色が広がった。
このコースなら1時間ほどで横浜港・大さん橋に着くはずだ。
川瀬は落ち着かない様子で、何度も時計を見ている。
主任は白いジャケットに淡いブルーのストールを肩にかけ、穏やかに外を眺めていた。
夏「今日は天気が良くてよかったね」
「うん。船旅には最高の日だね」
それから約1時間後、ブリッジを降りて横浜の街に入った。
ベイブリッジの上からも、港に停泊する巨大な客船の船体が見える。
なんて大きいんだろう!
夏「すげえ~デカいなあ~!」と見とれていた。
白く輝く船体と青い海――そのスケールに誰もが息をのんだ。
大さん橋ターミナルの入口では、制服姿のスタッフが笑顔で迎えてくれる。
「おはようございます。お荷物はこちらへお願いします」
「じゃあ、二人だけ先に降りて。2階のカフェでコーヒーでも飲もうよ。
車を停めたら行くからさ」
川瀬「OK、カフェね。先に行ってるよ」
主任「ありがとうございました」
晴れやかな表情だった。
案内係に従って、トランクをカートに載せている二人の姿がバックミラーに映った。
夏「お兄さん、車はどこに停めるの?」
「大さん橋の屋上がすごくいいスポットなんだって。そこに駐車場があるから停めるよ」
夏「わ~そこからも景色が良さそうだね!」
車を停めて、ターミナルの2階カフェに向かった。
夏が珍しそうにキョロキョロしている。
「夏も船に乗りたいのか?」
夏「そんなの決まってるでしょう?」
クスクス笑いが出てしまう。聞くんじゃなかった。
カフェに着くと、海が一望できる席で川瀬が手を振った。
川瀬「ありがとうな。ここまで来てくれて」
主任「本当にお手間をお掛けしました」
「いいよ、遠慮するなよ。人生の最高のイベントだろ?」
二人は照れくさそうに微笑んでいた。
夏「ここは最高に景色がいいね。客船も目の前だしさあ」
ゆっくりお茶をしていると、そろそろ乗船手続きの9時半になった。
「川瀬、忘れ物はないか?」
「あるわけないだろう? 10回くらい見直したよ」ぷっ。
「夏、あれ」――手提げ袋を目で合図した。
夏「うん、わかった」
理事が用意してくれた花束と莉子や桃香の手紙を主任に手渡す。
夏「これは菜の花病院からの餞別です。船室に飾ってください」
川瀬は恥ずかしそうに頭を下げた。
「ありがとう。本当にお世話になりました。行ってきます」
その声に、俺は笑って答えた。
「うん、思いっきり楽しんできて。いっぱい遊んでこいよ」
スタッフの案内に従い、二人がゆっくりと乗船ゲートへ向かう。
スカーフが風になびき、春の陽光に照らされていた。
「俺たちは上のデッキで見送ろうよ」
「うん、行きたい」
紙テープが宙を舞い、朝の光を受けてきらきらと輝いていた。
船がゆっくりと岸を離れ、屋上デッキに上ると、客船がよく見える。
川瀬たちに手を振った。向こうも笑顔で俺たちに手を振り返していた。
夏がずっと動画を撮っていた。
俺は写真を撮って莉子や桃香に送った。
「いいねえ。これで川瀬も本当に幸せになるね」
――いってらっしゃい。
最高の旅を。そして笑顔で帰っておいで。
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