診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第11章 新しいステージへ

202話 憂鬱な連休

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 もうすぐゴールデンウィーク。

世間は浮き立ち、家族も楽しみにしている。

なのに、心はまるで曇り空みたいに晴れない。

莉子や桃香を喜ばせたい気持ちはある。

でも、どうしても気持ちがついてこない。

混雑するのは分かってる。

それでも、なぜ人はわざわざ出かけるんだろう?

俺は、ただ静かに家で眠っていたい。

ずっと家にいたら、ダメなのかな……。

これって、歳のせいなのか?

ふと、もし莉子や夏が俺と同じくらいの年齢だったらどうだったんだろう?

そんなことを考えてしまう。

……まあ、考えたところでどうにもならない。

こんなことを口にすれば、きっと家族と揉めるだけだ。


「夏、ゴールデンウィークの予定って、もう決まった?」
「うん、決まったよ」
「どこに行くの?」

「まずは桃香が一番喜ぶディズニーランド。近くの景色が最高のホテルに2泊。
次に莉子が楽しみにしてる横浜でフランス料理と、桃香がやりたがってたカップヌードル作り。
ホテルはみなとみらいの高級ホテルに2泊。時間があれば、横浜の動物園とすき焼きのランチも。以上!」

「ふ~ん……俺はホテルにいてもいい?」
「ダ~メ」
「まさかディズニーランドって、二日連続で行くの?」

「ピンポーン! 29日から行くよ。だから30日~2日は平日だけど有休を取る。

桃香は学校を休ませる。その代わり、3日~6日の一番混む連休は家でゆっくりするよ」


……地獄、決定。


「なんだか、みんなに悪いね。間の平日に休んじゃってさ」
「大丈夫。お兄さんと俺は有休、莉子は普通に休めばいいだけだから」
「桃香は三日も学校を休ませて平気なのか? 遅れたりしない?」
「桃香なら、もう上の学年の勉強してるから、1年間休んでも余裕だよ」
「ふ~ん……そうなんだ。莉子はそれ、知ってる?」
「うん、知ってるよ。横浜を楽しみにしてた」


……もう、アリ地獄。

どうして肝心の俺だけ、こんなに盛り上がれないんだろう。
最低だ。

連休まで、あと1週間。
気持ちは沈んだまま__。


……待てよ?
 __なんかおかしい‥‥‥。

俺、変だ。
すぐに部屋へ戻り、書斎の引き出しを開けた。

あっ……ない。

いつ切れたんだろう?

気づかなかったってことは、飲み忘れてたってことだ。

抗うつ剤が切れてる。しまった。


忙しさに紛れて、うっかりしてた……。

どうしよう。夜なのに……。

夏や莉子には知られたくない。

でも、背に腹は代えられない。
青山先生に電話した。

「こんばんは。北原ですが」

「こんばんは。珍しいですね、お電話くださるなんて」

「夜分、申し訳ないのですが……最近、体調がすぐれなくて。
多分、抑うつ状態なんです。でも、薬が切れていて……どうしたものかと思って。突然すみません」

「ああ、そうでしたか。それはつらいですね。ええっと、今手元に何錠かならありますので、差し上げますよ。
でも、診察した方が良さそうですが……僕は今からでも構いませんよ?」

「ありがとうございます。でも、それはちょっと難しくて……すみません、薬をポストに入れていただけませんか?」
「はい、承知しました。明日、処方しましょうか?」

「それが……病院の関係者には知られたくないんです。すみません、ネット診療を探して薬を送ってもらいます」

「あっ、じゃあ待ってください。僕の友達に頼んで手に入れますから大丈夫です。
ポストに入れておきますね。名前は日比野佑月というやつです。送ってきたら受け取ってください」

「本当に助かります。ありがとうございます。代金はどうしたらいいですか?」

「僕から払っておきますから、あとで代金をお知らせしますね。そしたら僕のポストに代金を入れておいてください」

「何から何までお世話になってすみません。ありがとうございました」

それから30分後、ポストに行くと、封筒に薬が6錠ほど入っていた。
助かった。

すぐ飲んだ。

ああ……でも、連休までに間に合うかな……。

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