診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第11章 新しいステージへ

204話 美味しいところ取り

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  薬でしばらく眠っていたようだ。

ふと目を覚ますと、夏がベッドの下に座り、俺の手のひらに頬を寄せていた。

「な、つ……ずっと、そこにいたの?__もう大丈夫だから……」

「お兄さん、ごめんね。何回もつらい思いをさせちゃって……俺と一緒にいるから、こんなことになるんだよね。本当にごめんなさい……」

涙がぽろぽろと流れていく。

目をぎゅっとつぶり、つらそうに嗚咽する。

夏を泣かせたかったわけじゃない。

「夏、泣かなくていいから……ベッドに入っておいで」

そう言うと、点滴の反対側からそっとベッドに入ってきた。

そして俺の胸にしがみついた。片方の手で、夏の髪を撫でる。

「俺が選択してきた道だから、夏のせいじゃない。だから泣かなくていい」

かわいい夏。胸に頬をつけて、静かに泣いている。

「病院が急に大きくなってきたから、やっぱり負担になってるんでしょう?」

「違うよ。今は少し休みたいだけ。だから、明日には元気になってるよ」

「本当?」

「うん、本当」

「なんか食べる? おかゆ、食べられる? 作ってくるよ」

……ああ、まだ食べられそうにない。

「う~ん、まだいいよ。もうちょっと寝るから……」

また目を閉じると、いくらでも眠れそうだった。

そのまま__また眠りに落ちた。




その後、どれくらい眠っていたのだろう?

目を覚ますと、目の前に莉子と桃香が心配そうに俺を見つめていた。

「うん? どうしたの?」

「パパ、大丈夫? 早く元気になって」

桃香が俺の顔に頬を寄せてくる。桃香の髪を撫でてやる。

「春ちゃん、今、夏がおかゆを作ってるよ。食べられる?」

「……分からないけど、食べてみるよ」

「うん、じゃあ持ってくるね。桃香、一緒に行く?」

「ううん、パパのそばにいる」

「桃香、パパのベッドで一緒に寝る? 寝るなら入っておいで」

「うん」

背中の方からゴソゴソと上ってきた。キングサイズベッドだからね。

そばに来たから、ぎゅっと抱きしめてやった。
心配したんだね。かわいそうに……。

そのうちに、莉子と夏がおかゆを持ってきてくれた。

「あっ、桃香は調子よくパパにくっついてるな」

莉子がからかうように言う。

「お兄さん、おかゆ食べられる? 温泉たまごもあるよ」

「夏、ありがとう。食べるよ」

「あー、ダメえ! 桃香が食べさせてあげるの!」

ふっ、急にどうした?

莉子と夏が顔を見合わせて、憮然としている。ちょっと笑いそうになる。

桃香が急いでベッドを降りて、俺の前に来た。

「じゃあ、パパ、あーんしてぇ」

……おかしい。笑ってしまって、あーんができない。

でも、なんとかこらえて、あ~んして食べさせてもらった。

莉子と夏が腕組みして、横目で見ていた。

夏「こういうのって、美味しいとこ取りっていうんだよね?」

莉子「はあ__娘がライバルだとはねえ……」

でも、桃香が嬉々として食べさせてくれた。

断るわけにはいかないだろう?

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