診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第11章 新しいステージへ

206話 ディズニーランドへGO!

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 なんとか体調も回復して、4月29日は早朝6時に出発した。
運転は夏だ。

「どこ通るの?」

「いつもの道ですよ。湾岸線を通って葛西インターで降りて、一般道を行きますよ」

「そしたらさ、一般道に入ったらコンビニで停めてくれない?」

「了解」

莉子が「お腹空いたね。なんか買うんでしょう?」

桃香はまだ眠そうに目をこすりながら言った。

「ママ~、まだ眠いよ……」

「桃香はまだ寝てなさい。着いたら起こしてあげるから」

あっという間にコンビニに着いた。順調だな。

買い物は各自がいろいろ選んでいた。

そして現地に着いた。よし! まだまだ駐車場に余裕があるぞ。

まだ7時を少し過ぎたばかりだ。

「車の中で朝食を食べよう。桃香も起こそうよ」

「桃香、着いたよ!」

車の中で朝食を済ませ、ゲートに並んだ。どんどん人が増えてきたぞ。

「夏、俺さ、どこかにベンチがあったらそこに座ってるから、適当に遊んだら電話してくれない?」

「莉子も分かった? 桃香と迷子にならないように遊んでおいで。携帯は持ってる?」

「もう持ってるわよ~。じゃあ、遊んでくるから、どっかで座っててねえ」



ものすごいダッシュの中を、俺は端の方に逃げた。ははっ。高度な技術だ。

そして、ちょうどいい木陰のベンチを見つけた。

まあ、朝一からベンチに座る人なんていないからな。

それにしても音楽がけたたましい。ついていけない。

ベンチで寝ることにした。帽子を顔に乗せる。

今日は秘密兵器を持ってきたんだ。

ベンチに広げるクッションの利いた細長いアルミシート。空気で膨らます枕。

長めのジャケットは掛け布団代わりだ。

……浮浪者と間違われないか?

いや、ディズニーランドに浮浪者はいない。

人目につかないこともあって、気持ちよく眠ってしまった。

そのうちに夏から電話がかかってきた。

「お兄さん、どこにいるの?」

「GPSで見ろよ」

そのうちにやって来た。

「お兄さん、こんなに小道具をいっぱい持ってきてたの?」

「尊敬できるレベルだろ?」

ウプッ、フフフ、と笑ってる。

「なんか飲みたいかなあ? それに、ちょっとお腹空かないか?」

「俺もお腹空いたよ。莉子たちは夢中だから、放っておこうよ」

見ると、近くの見えるところに店があった。なんだか派手なものを売ってるぞ。

「夏、あれを買ってきてくれない? 俺はアイスティー。あとはなんでもいいよ。
大きな紙の袋で包んでくれるやつがいいかな。ほら、あそこを歩いてる女の子が持ってるだろ? あれだよ」

「お兄さん、注文が多いねえ。わかったよ。なんか適当に買ってくるよ」

そのうちに、赤と白の縦じまの派手な紙袋に入ったポテトフライやドーナツ、ハンバーガーなどを買ってきてくれた。
「おっ、ありがとうね」

夏は早速食べ始めていた。

俺はバッグの中からビニール袋を取り出し、ハンバーガーを入れた。

そして代わりに、さっきコンビニで買ったおにぎりを派手な紙袋に入れた。

「お兄さん、何やってるの? 持ち込み禁止なんだよ」

「分かってるよ。でも、大人の男は子供みたいなものは食べたくないんだよ。
ほら、こうすれば誰が見てもハンバーガーを食べてるみたいに見えるだろ?」

赤と白の三角になった大きな紙袋の中におにぎりを入れて、そのまま隠すようにかぶりついた。

「ああ~旨い。外に出るとなぜかおにぎりを食べたくなるんだよねえ~」

「お兄さん、ずる~い。だったら俺だっておにぎりの方が良かったよ」

「きっとそういうと思ってたよ。まだあるよ。食べる?」

うんうんと嬉しそうに欲しがった。まるでワンコだな。

夏のハンバーガーを別のビニール袋に入れて、代わりにおにぎりをバッグから出して入れてやった。

夏も思いっきりかぶりついていた。

「うま~い! やっぱりおにぎりはうまいねえ~」

そこへ、なぜか桃香の声がした。

「パパー! なに食べてるのー?」

ウプッ……のどに詰まる。アイスティーを飲んだ。

莉子が不思議そうに俺を見ていた。

「桃香も食べる!」

「まだあるよ」

バッグから、さっきのビニールに入れたハンバーガーを出してやった。

お腹空いていたんだな。喜んで食べている。やっぱり子供だねえ~。

莉子は俺の顔のそばに頬を寄せた。

えっ、キスするつもりか? ここで?

莉子が耳元でささやいた。

「春ちゃん、唇に海苔がついてるわよ」

夏がぷーっと吹き出した。


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