診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
210 / 357
第11章 新しいステージへ

208話 天空の露天風呂「宙」

しおりを挟む
 夕食は本当に豪華だった。

俺と夏だけ会席で、莉子と桃香がブッフェ。

ちょっと半信半疑だったけれど……

窓から見える夜景が素晴らしかった。

莉子は颯爽と桃香を連れて料理を取りに行った。

俺たちはコースが始まった。

やっぱり本当だった。季節感あふれる前菜の盛り合わせ。

これが一番好きなんだ。

横目で見ると、桃香がエビフライばかりを食べていた。

そんなに好きだったかな?

「桃香、エビフライばかり食べてると胃がもたれるよ」

桃香が「えー?」とばかりに莉子にヘルプの目を向けた。

莉子「いいのよ。胃がもたれないと分かんないんだから」

ぷっ、そうなんだ。

また桃香がニコニコしてぱくついていた。

「そんなに好きなら、うちでもっと塩焼きのエビを食べさせないとダメだね」

夏「もう~お兄さんは本当に桃香に過保護だよ。エビが高級品だから、こういうところでいっぱい食べるんじゃないの?」

「あっ、そうか。でもそれを夏が言うか?」

セレブな夏が高級品を認識しているなんて、そっちの方が驚きだ。

莉子がくすくす笑っていた。

とにかく、食事を美味しくいただけて大満足で終わった。


さあ~、楽しみにしていたお風呂だ。

最上階の天然温泉大浴場『天空の湯』。

そして屋上の露天風呂は、名前が<天空の露天風呂「そら」>。

もう期待感でいっぱいだ。

「夏、風呂の入り口で待ち合わせな」

夏は着替えやタオルを持って、ニヤニヤしながらやってきた。

そして浴場に入ると、ガラス張りの浴槽から東京湾の夜景が一望できた。

……凄すぎる。

「夏、身体を洗ったら、露天風呂に行こうよ」

夏がなぜか小さい声で囁いた。

「お兄さん、露天風呂でいたずらしないって約束できる?」

そんなのはおかしい。知らん顔していた。

露天風呂は何のためにあるんだよ。

さあ~、開放的な露天風呂に入った。

なんて星空が近いんだ。

やはり海に囲まれた先端に立っているせいか、なんとなく海の匂いを感じる。

気のせいかもしれないけれど、解き放たれた感じが最高だ。

夏もやって来た。

「わー、気持ちいいねえ」

なんとなく、そばにカニ歩きで近づいた。

しかし獲物もカニ歩きで逃げていく。

……なんだよ。全く。楽しみがない。諦めた。

適当なところであがった。

着替えて出口を向かうと、「じゃあな」と別れた。



俺が部屋に帰ると、真っ暗だった。

え? よく見ると、莉子と桃香は疲れたらしく爆睡中だった。

しょうがない。着替え一式を持って、夏の部屋に行った。

「え? お兄さん、どうしたの?」

「もう莉子と桃香が爆睡中だった」

「へえ~、よほど疲れたんだろうねえ」

「いっぱい呑もうよ」と誘うと、うれしそうな笑顔になった。

「うん、いいよ。おつまみもあるよ」

そうか、かわいいヤツ。

このために用意していたのかな?

「へえ~、用意が良いじゃん」

「うん、俺も今夜は飲みながら寝ようと思ってた」

「寂しかったのか?」

夏が少しはにかんで、うつむいた。

「いいよ、おいで」手を取って抱きしめた。

漆黒の空の下、遠くの灯りが波のように揺れていた

ロマンティックな二人の夜が始まった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...