診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第12章 夏デビューへ

232話 音楽事務所社長に交渉・2

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 黒田社長「マネジメントはどうするのですか?」

「夏輝には個人秘書がいて、桐生と言います。前職が大手ゲーム会社でプロダクトマネージャーをしていた人で、動画制作会社アニメプラスの社長も兼任している人物です。マネジメントは彼に頼もうと思っています。

ただ、芸能関係は皆初めてなので、勉強もするべきだと思っています。それで、年数を決めての契約でお願いできたらありがたいです。

また、細かい契約については顧問弁護士に助言を求めるつもりです。

ただ、それでも承諾していただける価値が夏輝にあるなら、ということになるのですが……いかがでしょうか?」

わ~という感じで、みんな唖然としていた。


黒田社長「では、こうしましょう。そちらの“できる範囲”がどういうものかをまとめて、ファイルで送っていただけますか?それをうちの方で検討させていただきますので、それでよろしいでしょうか?」

「はい。ありがとうございます。それで結構です」

黒田社長「夏輝君はどう思っていますか?今後、どうしたいのですか?」

「はい。僕は今回、素晴らしい体験をさせていただいて、本当に感謝しています。

ただ今後は、体力があまりないので一時的に頑張れても、他のメンバーのようにずっと続けるのは無理だと思います。

身体が弱くなっているので、それは自分ではどうしようもないんです。

でも、歌の面白さには気づいたので、これだけは今後もレッスンを続けて進めていきたいです。

メンバーと歌うのも楽しいのですが、将来的には自分一人で歌って、ネット配信ができたらいいなと思っています」

黒田社長「そうですか。確かに、歌だけでもどうにでもなりますよ。ところで、今までの仕事は続けるということですが、それに間違いないですか?」

夏輝「はい。間違いないです。捨てることは絶対にできません」

社長「ほう~。ちなみに、昨年の年収などを聞いてもいいですか?」

夏が俺の方を見たから、思わずニヤッとしてしまった。

「正直に言ってください。俺も知らないし」ちょっと笑った。

皆もくすくす笑った。

夏輝「ええっと、多分13億くらいです。株の配当金は除外して、なんですけど……」

みんなが目を丸くした。俺だって、夏の顔を「えーっ」とばかりに見てしまった。

まあ、大体12億くらいだろうとは思っていたけど……もっと多かったんだ。げっ。

社長の頬が緩んだままだった。

「なるほどね。それなら納得しますね。普通は、事務所に入りたい人は第一優先にするんだけど……珍しい例外のようですね」

後藤マネージャー「驚きましたね。確かに、これなら歌を始めても第一優先にはできませんね」

黒田社長「まったく、面白い新人だね。芸能界の歴史を変えるんじゃないの?」と笑っていた。

黒田社長「では、お話はよく分かりましたので、ご希望の形や条件を遠慮なく、なんでも言ってください。
それが実現できるかどうかは何とも言えませんが、こちらもよく検討してみます。
では、今日はこの辺にしておきましょうか」

「はい、分かりました。お時間をいただきましてありがとうございました。ファイルは3日以内に送らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」

その後は、帰宅して真っ先に夏のお父さんに報告をした。

話し合いの内容も伝えると、笑っていた。

社長「度肝を抜かれたんじゃないの?下手すると、事務所の純利益より多かったかもしれないよ」と言われた。

そうなのかな?音楽事務所の利益なんて、考えたこともなかった。

社長「でも、言って正解だったよ。それで対応を変えるはずだよ。侮れないと思えば、公平に利益を考えると思うからね。
なんと言っても、向こうは契約をする優先順位が“1位”なんだから。逃すなら、向こうの先が知れてるよ。

夏輝のあの声と歌唱力の才能があれば、自分で音楽事務所を作っても十分にやっていけるからね。

不足する人材は、プロを雇えばいいんだからさ」

ははっ、出た!お父さんのセレブ流考え。
もう先のことを考えてるし、プロを雇えばいいなんて簡単に言えるところがすごい。

それで、弁護士にもどんどん手伝ってもらったらいいと言ってくれた。

また、”桐生君が3倍くらい忙しくなると思うから、もう一人、片腕になれる人を至急募集するように”とのことだった。
まったく、こっちが思っていたことが全部お見通しなんだよね。経営者って本当にすごい。

その晩は、夏と二人でパソコンでエージェント契約について調べまくって、できる限りの情報を集めた。

明日はもちろん朝一で桐生さんと会議をするつもりだ。

そうだ、念のために想君にも来てもらおう。

想君ならAIも叶わない感性で要点をまとめてくれるからね。

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