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第14章 2号館がオープンへ
265話 契約違反
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仕事を終えて寝室に行くと、夏はまだベッドの中にいた。
そっと隣に入り、抱きしめると、夏が両手を俺の首に回してきた。
「夏、話は聞いたよ。こっちも黙ってないから安心して。弁護士に相談するよ。
もう、あの事務所とはやりたくないでしょう? 無理しなくていいんだよ」
「俺……KAIに悪くて……もう、合わせる顔がないよ」
また嗚咽を漏らして、泣き出した。
「うん、無理しなくていいよ。
でも、せっかくKAI君と友達になれたんだから、メールは送っておいた方がいい。
放映が終わったら、こっちは契約違反として断固たる態度で訴えるつもりだからね。
KAI君もショックを受けたと思うし、夏とKAI君、両方の名誉を回復できるようにするから」
「そんなこと……できるの?」
「できるさ。夏も契約書をよく読んでみるといいよ。
でも、放映が終わらないと行動には出られない。
だから、KAI君にも“待ってて”って伝えるといい。ただし、内緒でね」
「うん、わかった。KAIにメールするよ」
その後、桐生さんが詳細を社長に報告し、弁護士に連絡を取ってくれた。
こちらはすべての証拠をまとめ、放映を待つことにした。
*
やがて年が明け、番組が放映された。
やはり、今回の内容は契約書と明らかに異なっていた。
これは、完全な契約違反だった。
しかし……夏は驚くほど歌がうまくなっていた。
澄んだ高音に、思わず聞き惚れてしまった。
恐らく、ボーカルトレーナーか誰かの推薦があったのだろう。
なるほど、一人で歌わせたい気持ちは分かる。
一人でも十分に歌手としてやっていける——
素人の俺でさえ、そう思うほど感動した。
皮肉なことに、周囲からの反応もすごかった。
インスタやSNSでもバズり、音楽事務所には仕事の依頼などの問い合わせが殺到したという。
ただ、すでに仕事の依頼先はオリオンではなく、
Natsu Entertainment Groupに変更されていた。
オリオンミュージックの文字とリンクは、すべて消された。
正月明けに届くよう、契約解除通知書を夏の名前でオリオンの社長宛に送った。
さて、どう反応するのか——。
こちらも「文書で返答を」と記していたため、返事を待った。
翌日、速達で返事が届いた。
「話し合いたい」という内容だった。
こちらは桐生、村瀬、俺、そして弁護士の4人で出向くことにした。
話し合いの内容を録音させてもらう旨を確認したところ、OKだったので、後日、正式な場を設けることになった。
もちろん、こちらは事前に作戦を立てて臨んだ。
その準備には、最近アニメプラスに入った芹沢正樹さんのアドバイスもあった。
彼は、元大手音楽事務所の企画部長。
桐生君が引き抜いてきた、頼れる人物だ。
ファンの目線から見れば、前回はデュエットだったのに、今回は夏一人。
わがままに見えてしまう可能性もある。
だからこそ、「事務所の指示による変更」であることを、
きちんと告示してもらわないと、夏のイメージは損なわれたままになる。
KAI君のファンからすれば、夏が敵対視されても仕方がない。
それが、芸能界の怖さでもある。
今回は、KAI君もショックを受けていて、
その後の出演を嫌がったそうだ。
けれど、グループとして専属契約をしているため、
一人だけ休むわけにはいかなかったらしい。
それでも、夏はメールを通じて、KAI君が理解してくれたと言っていた。
ただ——オリオンはもう信用できない。
夏自身が「辞めたい」と言っている。
確かに、こういうことを平気でやる事務所だ。
次は何を仕掛けてくるのか、まったく信用できない。
でも、そんなことをしなくても——
夏には、一人でやっていけるだけの基盤がある。
そこが、普通の新人とは違うところだ。
そっと隣に入り、抱きしめると、夏が両手を俺の首に回してきた。
「夏、話は聞いたよ。こっちも黙ってないから安心して。弁護士に相談するよ。
もう、あの事務所とはやりたくないでしょう? 無理しなくていいんだよ」
「俺……KAIに悪くて……もう、合わせる顔がないよ」
また嗚咽を漏らして、泣き出した。
「うん、無理しなくていいよ。
でも、せっかくKAI君と友達になれたんだから、メールは送っておいた方がいい。
放映が終わったら、こっちは契約違反として断固たる態度で訴えるつもりだからね。
KAI君もショックを受けたと思うし、夏とKAI君、両方の名誉を回復できるようにするから」
「そんなこと……できるの?」
「できるさ。夏も契約書をよく読んでみるといいよ。
でも、放映が終わらないと行動には出られない。
だから、KAI君にも“待ってて”って伝えるといい。ただし、内緒でね」
「うん、わかった。KAIにメールするよ」
その後、桐生さんが詳細を社長に報告し、弁護士に連絡を取ってくれた。
こちらはすべての証拠をまとめ、放映を待つことにした。
*
やがて年が明け、番組が放映された。
やはり、今回の内容は契約書と明らかに異なっていた。
これは、完全な契約違反だった。
しかし……夏は驚くほど歌がうまくなっていた。
澄んだ高音に、思わず聞き惚れてしまった。
恐らく、ボーカルトレーナーか誰かの推薦があったのだろう。
なるほど、一人で歌わせたい気持ちは分かる。
一人でも十分に歌手としてやっていける——
素人の俺でさえ、そう思うほど感動した。
皮肉なことに、周囲からの反応もすごかった。
インスタやSNSでもバズり、音楽事務所には仕事の依頼などの問い合わせが殺到したという。
ただ、すでに仕事の依頼先はオリオンではなく、
Natsu Entertainment Groupに変更されていた。
オリオンミュージックの文字とリンクは、すべて消された。
正月明けに届くよう、契約解除通知書を夏の名前でオリオンの社長宛に送った。
さて、どう反応するのか——。
こちらも「文書で返答を」と記していたため、返事を待った。
翌日、速達で返事が届いた。
「話し合いたい」という内容だった。
こちらは桐生、村瀬、俺、そして弁護士の4人で出向くことにした。
話し合いの内容を録音させてもらう旨を確認したところ、OKだったので、後日、正式な場を設けることになった。
もちろん、こちらは事前に作戦を立てて臨んだ。
その準備には、最近アニメプラスに入った芹沢正樹さんのアドバイスもあった。
彼は、元大手音楽事務所の企画部長。
桐生君が引き抜いてきた、頼れる人物だ。
ファンの目線から見れば、前回はデュエットだったのに、今回は夏一人。
わがままに見えてしまう可能性もある。
だからこそ、「事務所の指示による変更」であることを、
きちんと告示してもらわないと、夏のイメージは損なわれたままになる。
KAI君のファンからすれば、夏が敵対視されても仕方がない。
それが、芸能界の怖さでもある。
今回は、KAI君もショックを受けていて、
その後の出演を嫌がったそうだ。
けれど、グループとして専属契約をしているため、
一人だけ休むわけにはいかなかったらしい。
それでも、夏はメールを通じて、KAI君が理解してくれたと言っていた。
ただ——オリオンはもう信用できない。
夏自身が「辞めたい」と言っている。
確かに、こういうことを平気でやる事務所だ。
次は何を仕掛けてくるのか、まったく信用できない。
でも、そんなことをしなくても——
夏には、一人でやっていけるだけの基盤がある。
そこが、普通の新人とは違うところだ。
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