診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第17章 夏輝・人気と自由と……

329話 初めての夜景

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 莉子たちが買ってきてくれたお弁当を、みんなで食べてから片付けを続けた。

そんなに持ってきたつもりはなかったけど、
一から生活用品を揃えるって、やっぱり結構大変なんだね。

余分なストックなんてペーパー類しか買ってないのに、調味料や台所用品が思った以上に多かった。

莉子「夏、ここに何日逃げるつもりなの?」

夏「う~ん、分かんないけど、そんなに長く居たら仕事が困るから、せいぜい二日かな?」

「いや、一人で二日も過ごせるのか?」

夏「じゃあ、お兄さんが迎えに来てよ」

「夜中でも良いから帰って来いよ。朝礼があるんだから」

「ええ‥‥‥」と言いながらちょっとふくれてた。

──念のため、3日分くらい引きこもってもいいように、何か用意しておかないと。
いっそウーバーイーツか?

それとも、救命センターにお弁当を取りに行こうかな。
そっちの方が絶対美味しいに決まってる。
でも、救命センターに往復したらバレるな。

それじゃ“引きこもり”にならない。
それで受付に聞いてみると、ウーバーイーツに頼んで、受付預かり→すぐ取りに行く、というのはOKらしい。


夕方になると、どんどん荷物が届き始めた。
家電類は段ボール箱に入っているから、ゴミが増えてすごいことに。

夏がマンション用に注文していたキーボードと吸入器も届いた。

俺は、さっそく炊飯器でご飯を炊いた。
できるだけ沢山炊いて、おにぎりを冷凍しておかないとね。

野菜も少しは買ってきたから、今夜は鍋にすることにした。
──ああ、でもカッコいい鍋物用の鍋はない。

普通の鍋で作って、みんなでつつくことにした。
今夜はミルフィーユ鍋。

ポン酢としょうがおろし、細かいネギがあれば完成。
卓上IHは届いている。

この頃になると、外はすっかり暗くなっているはずなんだけど、でも“真っ暗”とは違う。

周囲が明るすぎて、なんだか不思議な感じだ。

飛行機に乗っているような──着陸途中のような?
宙に浮いているような、そんな感覚。

足元が心もとない……。
──なんせ、こんな高層に住んだことがないからな。

掃除は、マンションが契約しているミニメイドサービスにお願いした。
在宅している時でないと来てもらえないから、これからは週に1回は行かないと駄目だね。
それも面倒な気がする。

「さあ、みんな食べよう!」
みんなダイニングに集まった。

今日は鍋とご飯と浅漬けだけ。──シンプルだな。
あとで、コーヒーでも飲みながら夜景をゆっくり眺めよう。

バルコニーには、キャンプ用の折り畳みの椅子を4脚置いた。
肘掛けにボトルを入れられる穴が開いてるやつね。

夏が別荘……と言ってたから、いつか役に立つかなと思ってね。
コーヒーテーブルも折り畳み式の簡単な物。
普段はバルコニーの端っこについてる物置に入れておけばいい。


バルコニーにいると繁華街に近いから、やっぱり電車の音や賑やかな声は聞こえる。
音は上に抜けるから、しかたがない。

でも──なんて素敵な都会の夜景なんだろう。
莉子「なんだか全部がキラキラ輝いてるね」

桃香「パパ、すごいねえ。素敵な夜景だね」

夏「うん、そうなんだけど、結構下の音がうわ~んと聞こえるね。耳栓すればいいのかな?」

「でも、ここまで高いと虫が来ないからいいよね」

ゆっくりとコーヒーを飲んで、
──この素晴らしさを、しっかり満喫した。

この先、何があるかは分からないけど──

夏とお父さんのおかげで、軽々とトラブルを抜けていける。

セレブって、いいなあ~。

こっちまで、おこぼれに預かってるよ。

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