男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ

文字の大きさ
10 / 52

好き

しおりを挟む
ファストフード店に入ると、やはりここも混んでいた。
店員らが忙しく働いている。
二階であれば席が空いていると言われて、注文を済ませた2人は商品の載った盆を持って階段を上がる。

樹はチーズバーガーを選び、克樹はこの店で一番大きなハンバーガーを頼んでいた。
オニオンリング、ポテト、ナゲットも忘れない。

「「いただきまーす」」

2人は各々のバーガーにかぶり付いた。
口一杯に頬張りすぎて咀嚼に時間がかかる。
もぐもぐと噛み続け、2人は口の中のバーガーをようやく飲み込んだ。

「うっわ、美味いねえ」

克樹がすかさず炭酸ジュースを飲んでいる。

「うん、美味しい。ジャンクフード最高」

樹もジュースを飲んだ。
次はオニオンリングを掴んで頬張る。
衣がざくざくするのが食べていて気持ちいい。

「ジャンクフードだけど、野菜も摂ってるからいいよね」

「そうだよ!じゃがいもだって野菜だし」

克樹もそんなことを言いながらポテトを食べている。

(かっちゃんと一緒だと嬉しいな)

そこまで考えて、樹は頭を振った。
なんだか思い出してはいけないことを思い出しそうになった。だがその記憶は自然と引きずり出されてくる。

(俺、かっちゃんが大好きなんだ)

「いっくん?どした?」

克樹に顔を覗き込まれて、樹は首を横に振った。

「なんでもないよ」

(かっちゃんはきっとやだよね)

なんだかのどがひりひりした。目頭が熱い。

「かっちゃん、俺トイレ行ってくる」

「うん」

樹はトイレに駆け込んだ。どうしようもないこの熱い気持ちを樹はずっと忘れたつもりになっていた。
だが、克樹と楽しく毎日過ごすうちに思い出してしまった。
自分の兄が大好きで、ずっと劣情を抱いている。そんな自分が嫌で仕方なかった。

なんでこんなに、大事なことを忘れていたのだろう。克樹とはこれからもずっと一緒だ。
この気持ちを抱えたまま、これから生きていかねばならないのだろうか。
だが、今までもこの気持ちは確かにあった。
ずっと見ないふりをしてきたのは自分だ。
自分に改めて落ち着け、と言い聞かせる。

「いっくん?大丈夫?」

ドアの外から克樹の声がした。克樹は今どんな表情をしてるのだろう。
切なくてすぐには声を出せなかった。

「じゃ、向こうで待ってるね」

克樹の足音が遠くなる。
樹はなかなかその場を動けなかった。

(しっかりしろ、俺。普通にすればいいんだ)

顔を洗って席に戻ると、克樹はスマートフォンを弄っていた。

「お、お待たせ」

「いっくん、もうちょいだから食べちゃお?」

「うん!」

ようやくナゲットやポテトを完食する。2人は再び街へ繰り出していた。
克樹にいつも通り手を握ってもらえて嬉しい。

(俺はかっちゃんの弟だ。それで十分じゃないか)

だが、本当はもっと克樹が欲しくてたまらなかった。しかし、そんな望みは絶対に叶わないのだ。
樹は足元が崩れたような不安感をおぼえた。
だが大きく呼吸する。
克樹は自分の気持ちに気が付いていない、そう信じたい。それに今日はせっかく2人きりなのだ。もっと楽しみたかった。

「いっくん、まだ二時過ぎだしゲーセンでも行かない?」

「行く!」

克樹はゲームが上手い。樹が欲しいものはたいてい取ってくれるのだ。
そんな所も大好きだ。

「よーし、出発!」

2人は歩いてゲームセンターに向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

処理中です...