8 / 68
8
しおりを挟む
夜になっている。厚い雲の隙間から月明かりがチラチラ覗いている。この荒廃した世界で、月が見えるなんて、珍しいこともあるもんだな。端末で自分の場所を探ってみると、間もなく宿に到着だ。よかった、予定通り進めたな。無事に宿に到着して、ハクを解き放つ。ルネがハクの言っていたことを教えてくれた。自分で自分のことは出来る、だから心配不要とのことだった。ハクは暴れ馬どころか、すごく優しい子だった。危なっかしい俺たちの面倒を見なければ…と彼女の母性が爆発したらしい。なるほどな。ハクはただの馬じゃない。俺より遥かに色々なことが分かるようだ。そしてそれはルネも同様だ。二人共優しいから俺と一緒に旅をしてくれている。二人に恥ずかしいところはみせられないよな。
「ショーゴ、お腹空いたね」
「ずっと移動だったしね」
宿屋のレストランの席に着いて、俺たちはそれぞれ料理を頼んだ。ここに来るまでどうやって来たかと聞かれて陸路で来たと言ったら物凄く驚かれた。
陸路には強力なモンスターがウロウロしていて、とても進めないらしい。でも俺たちが歩いていた時にはモンスターの姿なんて見当たらなかったけど。きっとラッキーだったんだろう。明日はもっと気を引き締めないとな。宿屋の部屋は2つ取るつもりだったけど、ルネが一緒に寝ると言って聞かなかったので、少し大きな部屋にしてもらった。
俺はそこで装備を外した。ふう、やっと休める。ベッドに横になると、ルネがしがみついてくる。可愛いな。
「ショーゴ、おやすみ」
「おやすみ」
ルネが寝息を立て始める。俺は明日のルートを端末で確認していた。どうやら明日は野宿になりそうだ。モンスター対策はどうにかしないとな。
今日はよく休んでおこう。俺も目を閉じた。
「早く!早くしろ!!」
「ショーゴ!!助けて!!」
ルネが叫んでいる。俺は慌てて起きあがった。男たちがルネを麻袋に入れて拐おうとしている。俺の装備もだ。ルネは必死に抵抗している。男たちの手に噛みついたり殴ったりバタバタしている。
「なにをやっているんだ…」
俺の声に相手は怖気づいたようだ。
「ひぃっ!逃げろ!!」
「待て」
俺はものすごく怒っていた。強盗の腕をぐっと掴む。いつもより何故だか力が漲っている。
「なにをやっているかと聞いている」
ぐぐと男の腕を捻じると強盗は悲鳴を上げた。バキという骨が軋む音。結局奴らは何も盗らずに逃げ出していった。
「旦那!!大丈夫ですかい?!」
宿屋の主人は顔を殴られたのか、痣で青くなっていた。ひどい奴らだな。
「御主人こそ、その怪我…」
「あっしは大丈夫でさぁ。不覚を取っちまいました」
へへと照れたように主人は笑った。
「ショーゴ、怖かったよ!」
ルネが抱き着いてくる。俺はルネを抱き締めた。よかった、無事で。装備はまだ盗られてもいい。でもルネは絶対に守る。俺は気になって外に出た。ハクがこちらに駆け寄ってくる。騒ぎを聞きつけたのだろう。俺は彼女の首元を撫でた。
「ハク、あいつらはどっちへ逃げた?」
「ブル…」
「南東の方だって言ってるよ」
ルネがすかさず翻訳してくれる。俺は端末を見た。南東は中央に向かうためにこれから通る。
「馬はいたか?」
ハクは首を振って否定を示した。馬に乗らずにここまで来られるということは、近くに集落があるのかもしれない。宿の人が知らないってことは、最近出来たばかりか?
俺の頭の中を色々な考えが巡る。
「ショーゴ、これからどうするの?」
俺はルネの頭を撫でた。月明かりが優しく俺たちを照らしている。
「とりあえず休もう。俺はまだヘトヘトだ」
「うん」
ハクが再び走っていく。ルネと俺は部屋に戻って休んだ。まだまだ長い道中、休める時に休まないとな。
✢✢✢
早朝、宿屋で朝飯を食べて俺たちは出発している。かなり遠回りをしながらだ。この辺りには高い木々が生えているし目隠しの効果が期待できる。そこで、端末が鳴り出した。当然我等がピンフィーネ団長である。
「ショーゴ、何故遠回りを?理由を話せ」
あぁ、やっぱりそのことか。ピンフィーネさんには正直に話しておいたほうがいいよな。俺は昨日の件について詳しく話した。
「何、賊だと?ショーゴ、絶対に無理をするなよ。今から近くの騎士をそちらへ派遣させる」
「よろしくお願いします」
俺たちは東に向かって進んでいる。昨日のことがあったからわざとだ。俺の考えどおり、南東に集落があるとしたら、ぐるっと後ろに回って裏側から攻めたほうが有利だからな。攻めるなら…だけど。道なき道を俺たちは進む。
「ぁ」
ルネには何か見えたらしい。龍は目もいいんだな。ハクにも視認できているようだ。
「何かあった?」
「うん、小さいけど家がいくつかあるよ…でも」
やっぱり集落か。ルネはなにか言いたそうにして口を噤んだ。どうしたんだろう?しばらく歩くと向こうからもくもくと黒い煙が出ている。な、なんだ?火事か?このまま周りの木に燃え移ったりしたら俺たちもやられちまう。
「ハク!乗せてくれるか?」
「ブルル」
「僕も行くよ!」
ルネが龍の姿に戻る。俺はハクに飛び乗った。
全速力でハクを走らせる。ルネが飛びながら言った。
「やっぱりモンスターだよ、ショーゴ!人間を襲ってる!さっきもしかしてって思ったんだけど」
なるほどな。俺は騎乗から敵に切りかかった。なんだか、面倒なことに巻き込まれちまった。ルネがモンスターにかぶりつく。
「グギャッ」
ボンと敵は黒い煙のようになって消滅する。なんなんだ?最後の一体を倒した。火はルネが傍にあった布で消し止めてくれた。あちらこちらに死体が倒れている。男がほとんどだったけど、女性もいた。子供がいなかったのはまだよかった。全部見て回ったけど、生きている人間は一人もいなかった。奥には宝物庫と思われる部屋があった。もしかして盗んだものかもしれない。ルネに見てもらったらその通りだと言われた。こんなに宝を貯め込んでどうするつもりだったんだろう?何かに使う予定だったのか?
「おーい!!」
馬に乗った騎士さんたちがこちらにやってくる。俺も彼らに手を振った。
「わぁ、こりゃ酷いですね」
「あ!こいつ国際手配されているやつ!」
「悪いことはできねえな」
どうやらこの集落は最近出来たばかりみたいだ。賊の集まりだったらしい。ここを新しい拠点にして、近くにある宿の客を食い物にしようと狙っていたらしい。それがたまたま俺たちだったみたいだ。ある意味不運だったのか?俺たちじゃない。賊たちがだ。
「ショーゴ殿、あとは我々が処理しますので!あとこれを!」
騎士さんの一人に渡されたのは立派な弓と矢筒だった。
「これ…」
俺が驚いていると、騎士さんが笑う。
「団長よりお預かりしたものです。ショーゴ殿なら上手く扱うと仰っていました」
「あ、ありがとう」
俺は弓と矢筒を背負った。恐ろしいほど軽いな。
そばで待っていてくれたルネとハクの元に戻ると、龍の姿だったルネにまた押し倒されてキスされた。ルネはあっという間に人間の姿に戻る。どうやらルネは俺とキスすることで変身に集中出来るらしい。ちょっと嬉しい。毎回押し倒されるのには慣れないけど。
「ショーゴ、その弓素敵だね!」
青い瞳をキラキラさせて、ルネは言った。
俺は戸惑いを隠せなかった。、それは、俺が小学生の頃から弓道を習っていたからだ。大学に入ってからはあまりやらなくなっていたけれど、体は覚えているものだ。矢を番えず、弓の弦を引き絞ってみる。ああ、変わらない感触だ。新しい武器がこうして俺の元にきたのだ。
「とりあえず先に進もう」
ルネをハクに乗せて、荷物も持ってもらった。周りの木々がだんだん低くなってきているな。向こうには高い山々が見える。そんな折だった。大きな龍が俺たちの前に立ち塞がってきたのだ。あまりの巨大さにびっくりした。でも龍からは殺意や敵意を感じない。ルネがハクから飛び降りた。
「ルネシア、ショーゴとは番になれたのですか?」
この声、聞き覚えがあるな。確かルネのお姉さんだ。
「まだだよ。僕はショーゴを龍の仕来たりに巻き込みたくない」
「あなたって子は」
「大体、母様のペンダントを失くしてる時点で僕に龍姫の役割を果たせないって証明してるようなものじゃないか!」
ルネがこんなに感情的になるのは見たことがない。
「ルネシア、加護は必ず元に戻します。あなたにも村に戻ってきて欲しい。皆そう思ってますよ」
「姉さん…」
龍は再び飛び去っていった。お姉さん、優しいな。
「姉さんもこうと決めたら梃子でも動かないんだから」
はああとルネがため息を吐いている。俺は笑ってしまった。ルネもそうだからだ。血は争えないのかもしれないな。しばらく歩くと木のない開けた場所に出た。日も暮れてきたし、そろそろ寝る準備をした方がいいかもしれない。俺は小学生の時に一度キャンプをしたことがあるだけだ。つまり素人である。
「火なら僕、熾せるよ」
乾いた木々を集めて、ルネがふう、と息を吐くと、もう火が付いてしまった。もしかして魔力?すごいな。さて、夕飯の支度をしようかな。食べないと元気出ないし。
ハクが持ってくれていた荷物の中から銅製の小さな鍋を取り出す。近くの川から水を汲んできて沸騰させる。いくら水が綺麗でも、生水は怖いもんな。団長がくれた栄養食を水に溶かすと熱いスープの出来上がりだ。ルネと代わりばんこにスープを飲んだ。そんなに驚くほど不味くない。ハクは近くに生えている草をむしゃむしゃ食べている。
テントを設営して、と。
中で端末を見ながらルートを確認する。うーん、今日は色々あったからあまり進めなかったな。
「ショーゴ、どう?」
ルネが不安そうな顔で尋ねてくる。
「大丈夫だからな。ほら、寝よう」
ルネの頭を撫でると、うんと頷いてルネは目を閉じた。俺も眠ろう。
「ショーゴ、お腹空いたね」
「ずっと移動だったしね」
宿屋のレストランの席に着いて、俺たちはそれぞれ料理を頼んだ。ここに来るまでどうやって来たかと聞かれて陸路で来たと言ったら物凄く驚かれた。
陸路には強力なモンスターがウロウロしていて、とても進めないらしい。でも俺たちが歩いていた時にはモンスターの姿なんて見当たらなかったけど。きっとラッキーだったんだろう。明日はもっと気を引き締めないとな。宿屋の部屋は2つ取るつもりだったけど、ルネが一緒に寝ると言って聞かなかったので、少し大きな部屋にしてもらった。
俺はそこで装備を外した。ふう、やっと休める。ベッドに横になると、ルネがしがみついてくる。可愛いな。
「ショーゴ、おやすみ」
「おやすみ」
ルネが寝息を立て始める。俺は明日のルートを端末で確認していた。どうやら明日は野宿になりそうだ。モンスター対策はどうにかしないとな。
今日はよく休んでおこう。俺も目を閉じた。
「早く!早くしろ!!」
「ショーゴ!!助けて!!」
ルネが叫んでいる。俺は慌てて起きあがった。男たちがルネを麻袋に入れて拐おうとしている。俺の装備もだ。ルネは必死に抵抗している。男たちの手に噛みついたり殴ったりバタバタしている。
「なにをやっているんだ…」
俺の声に相手は怖気づいたようだ。
「ひぃっ!逃げろ!!」
「待て」
俺はものすごく怒っていた。強盗の腕をぐっと掴む。いつもより何故だか力が漲っている。
「なにをやっているかと聞いている」
ぐぐと男の腕を捻じると強盗は悲鳴を上げた。バキという骨が軋む音。結局奴らは何も盗らずに逃げ出していった。
「旦那!!大丈夫ですかい?!」
宿屋の主人は顔を殴られたのか、痣で青くなっていた。ひどい奴らだな。
「御主人こそ、その怪我…」
「あっしは大丈夫でさぁ。不覚を取っちまいました」
へへと照れたように主人は笑った。
「ショーゴ、怖かったよ!」
ルネが抱き着いてくる。俺はルネを抱き締めた。よかった、無事で。装備はまだ盗られてもいい。でもルネは絶対に守る。俺は気になって外に出た。ハクがこちらに駆け寄ってくる。騒ぎを聞きつけたのだろう。俺は彼女の首元を撫でた。
「ハク、あいつらはどっちへ逃げた?」
「ブル…」
「南東の方だって言ってるよ」
ルネがすかさず翻訳してくれる。俺は端末を見た。南東は中央に向かうためにこれから通る。
「馬はいたか?」
ハクは首を振って否定を示した。馬に乗らずにここまで来られるということは、近くに集落があるのかもしれない。宿の人が知らないってことは、最近出来たばかりか?
俺の頭の中を色々な考えが巡る。
「ショーゴ、これからどうするの?」
俺はルネの頭を撫でた。月明かりが優しく俺たちを照らしている。
「とりあえず休もう。俺はまだヘトヘトだ」
「うん」
ハクが再び走っていく。ルネと俺は部屋に戻って休んだ。まだまだ長い道中、休める時に休まないとな。
✢✢✢
早朝、宿屋で朝飯を食べて俺たちは出発している。かなり遠回りをしながらだ。この辺りには高い木々が生えているし目隠しの効果が期待できる。そこで、端末が鳴り出した。当然我等がピンフィーネ団長である。
「ショーゴ、何故遠回りを?理由を話せ」
あぁ、やっぱりそのことか。ピンフィーネさんには正直に話しておいたほうがいいよな。俺は昨日の件について詳しく話した。
「何、賊だと?ショーゴ、絶対に無理をするなよ。今から近くの騎士をそちらへ派遣させる」
「よろしくお願いします」
俺たちは東に向かって進んでいる。昨日のことがあったからわざとだ。俺の考えどおり、南東に集落があるとしたら、ぐるっと後ろに回って裏側から攻めたほうが有利だからな。攻めるなら…だけど。道なき道を俺たちは進む。
「ぁ」
ルネには何か見えたらしい。龍は目もいいんだな。ハクにも視認できているようだ。
「何かあった?」
「うん、小さいけど家がいくつかあるよ…でも」
やっぱり集落か。ルネはなにか言いたそうにして口を噤んだ。どうしたんだろう?しばらく歩くと向こうからもくもくと黒い煙が出ている。な、なんだ?火事か?このまま周りの木に燃え移ったりしたら俺たちもやられちまう。
「ハク!乗せてくれるか?」
「ブルル」
「僕も行くよ!」
ルネが龍の姿に戻る。俺はハクに飛び乗った。
全速力でハクを走らせる。ルネが飛びながら言った。
「やっぱりモンスターだよ、ショーゴ!人間を襲ってる!さっきもしかしてって思ったんだけど」
なるほどな。俺は騎乗から敵に切りかかった。なんだか、面倒なことに巻き込まれちまった。ルネがモンスターにかぶりつく。
「グギャッ」
ボンと敵は黒い煙のようになって消滅する。なんなんだ?最後の一体を倒した。火はルネが傍にあった布で消し止めてくれた。あちらこちらに死体が倒れている。男がほとんどだったけど、女性もいた。子供がいなかったのはまだよかった。全部見て回ったけど、生きている人間は一人もいなかった。奥には宝物庫と思われる部屋があった。もしかして盗んだものかもしれない。ルネに見てもらったらその通りだと言われた。こんなに宝を貯め込んでどうするつもりだったんだろう?何かに使う予定だったのか?
「おーい!!」
馬に乗った騎士さんたちがこちらにやってくる。俺も彼らに手を振った。
「わぁ、こりゃ酷いですね」
「あ!こいつ国際手配されているやつ!」
「悪いことはできねえな」
どうやらこの集落は最近出来たばかりみたいだ。賊の集まりだったらしい。ここを新しい拠点にして、近くにある宿の客を食い物にしようと狙っていたらしい。それがたまたま俺たちだったみたいだ。ある意味不運だったのか?俺たちじゃない。賊たちがだ。
「ショーゴ殿、あとは我々が処理しますので!あとこれを!」
騎士さんの一人に渡されたのは立派な弓と矢筒だった。
「これ…」
俺が驚いていると、騎士さんが笑う。
「団長よりお預かりしたものです。ショーゴ殿なら上手く扱うと仰っていました」
「あ、ありがとう」
俺は弓と矢筒を背負った。恐ろしいほど軽いな。
そばで待っていてくれたルネとハクの元に戻ると、龍の姿だったルネにまた押し倒されてキスされた。ルネはあっという間に人間の姿に戻る。どうやらルネは俺とキスすることで変身に集中出来るらしい。ちょっと嬉しい。毎回押し倒されるのには慣れないけど。
「ショーゴ、その弓素敵だね!」
青い瞳をキラキラさせて、ルネは言った。
俺は戸惑いを隠せなかった。、それは、俺が小学生の頃から弓道を習っていたからだ。大学に入ってからはあまりやらなくなっていたけれど、体は覚えているものだ。矢を番えず、弓の弦を引き絞ってみる。ああ、変わらない感触だ。新しい武器がこうして俺の元にきたのだ。
「とりあえず先に進もう」
ルネをハクに乗せて、荷物も持ってもらった。周りの木々がだんだん低くなってきているな。向こうには高い山々が見える。そんな折だった。大きな龍が俺たちの前に立ち塞がってきたのだ。あまりの巨大さにびっくりした。でも龍からは殺意や敵意を感じない。ルネがハクから飛び降りた。
「ルネシア、ショーゴとは番になれたのですか?」
この声、聞き覚えがあるな。確かルネのお姉さんだ。
「まだだよ。僕はショーゴを龍の仕来たりに巻き込みたくない」
「あなたって子は」
「大体、母様のペンダントを失くしてる時点で僕に龍姫の役割を果たせないって証明してるようなものじゃないか!」
ルネがこんなに感情的になるのは見たことがない。
「ルネシア、加護は必ず元に戻します。あなたにも村に戻ってきて欲しい。皆そう思ってますよ」
「姉さん…」
龍は再び飛び去っていった。お姉さん、優しいな。
「姉さんもこうと決めたら梃子でも動かないんだから」
はああとルネがため息を吐いている。俺は笑ってしまった。ルネもそうだからだ。血は争えないのかもしれないな。しばらく歩くと木のない開けた場所に出た。日も暮れてきたし、そろそろ寝る準備をした方がいいかもしれない。俺は小学生の時に一度キャンプをしたことがあるだけだ。つまり素人である。
「火なら僕、熾せるよ」
乾いた木々を集めて、ルネがふう、と息を吐くと、もう火が付いてしまった。もしかして魔力?すごいな。さて、夕飯の支度をしようかな。食べないと元気出ないし。
ハクが持ってくれていた荷物の中から銅製の小さな鍋を取り出す。近くの川から水を汲んできて沸騰させる。いくら水が綺麗でも、生水は怖いもんな。団長がくれた栄養食を水に溶かすと熱いスープの出来上がりだ。ルネと代わりばんこにスープを飲んだ。そんなに驚くほど不味くない。ハクは近くに生えている草をむしゃむしゃ食べている。
テントを設営して、と。
中で端末を見ながらルートを確認する。うーん、今日は色々あったからあまり進めなかったな。
「ショーゴ、どう?」
ルネが不安そうな顔で尋ねてくる。
「大丈夫だからな。ほら、寝よう」
ルネの頭を撫でると、うんと頷いてルネは目を閉じた。俺も眠ろう。
17
あなたにおすすめの小説
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
a life of mine ~この道を歩む~
野々乃ぞみ
BL
≪腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者≫
第二王子:ブライトル・モルダー・ヴァルマ
主人公の転生者:エドマンド・フィッツパトリック
【第一部】この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
【第二部】この道を歩む~異文化と感情と、逃げられない運命のようなものと~
必死に手繰り寄せた運命の糸によって、愛や友愛を知り、友人たちなどとの共闘により、見事死亡フラグを折ったエドマンドは、原作とは違いブライトルの母国であるトーカシア国へ行く。
異文化に触れ、余り歓迎されない中、ブライトルの婚約者として過ごす毎日。そして、また新たな敵の陰が現れる。
二部は戦争描写なし。戦闘描写少な目(当社比)です。
全体的にかなりシリアスです。二部以降は、死亡表現やキャラの退場が予想されます。グロではないですが、お気を付け下さい。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったりします。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 閑話休題以外は主人公視点です。
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる