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二十二章
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1・イサキさんが回復して数日が経過している。俺たちは再び法廷にいた。今日はレジスタンスのみんなや王族代表で第八王女もいる。もちろん第三王子もだ。今日こそライラさんの疑いを晴らすぞ。
「体調は大丈夫ですか?」
「はい。すっかり良くなりました」
イサキさんがにっこり笑っている。よかった、すっかり元気になったみたいだな。
サダハルさんが証拠を確認している。
俺ももう一度確認しておこう。
・シャンデリアを落としたのはホミールさん。ライラさんに王族、を傷付けると脅されたから。
・第三王子はライラさんに脅されて渋々レジスタンス活動をしている。
・イサキさんは王子を監禁したホミールさんを複数人で目撃している。
(ホミールさんも彼女がなにか見ている、と証言した。なにかは不明だ)
俺たちは、ライラさんの疑いを晴らさなければならない。
そして、この国の内乱を収めなければ。
いよいよ法廷が始まる。
「準備はよろしいですかな?」
「検察側、完了しています」
「弁護側……完了しています」
サダハルさん、緊張してるな。
「今回の件では、証人の証言が二転三転するというようなことが頻発しています。そのようなことのないよう、慎重に証言するように」
裁判長の言うことは最もだ。
「では証人をお呼びしてください」
一番最初の証人、それはもちろんイサキさんだ。前回、何らかの魔法で、証言を中断させられてしまった。それをしたのはホミールさんで間違いない。でも証拠はない。神々の力じゃないかってシャオは言っていたな。
「では証人、証言をお願いします」
「ここで改めて言っておきます。殿下は灯台に監禁されていました」
「なんですって!!その証拠はあるのですか?弁護人」
「はい、監禁された際、殿下は抵抗を試みたようです。こちらの勾玉をとっさに掴んでいました」
サダハルさんは勾玉を証拠品として提出した。
「な…これは血液が付着しています。一体誰のものなのでしょうか?」
「そちらの血液は鑑定したところ…」
サダハルさんの顔が青い。
「イサキさんのものでした」
イサキさんがぽかん、としている。俺たちも同じ気持ちだ。
「そ!そんなはずは!俺は!!」
「証人、落ち着いてください」
ホミールさんが笑っている。ここまで読んでいたのか?
「とにかく、真相はまだわかりません。改めて情報を見直しましょう」
・王子は監禁された際、誰かに後ろから頭を殴られた。その際、勾玉を掴んでいた。
・勾玉に付着していたのはイサキさんの血液だった。
一体どういうことなんだ?わからないことが多すぎる。
「証人、あなたが王子を監禁したのですか?」
「違います!有り得ません、そんなこと…!」
「では、第三王子が監禁された際、あなたはどこにいたのか証言して…」
イサキさんが固まる。
「その…記憶がなくて…」
「記憶がない?」
イサキさん、本当に記憶がないみたいだ。なんで?
「話になりませんな」
ホミールさんがいよいよ笑い出す。
「裁判長、この法廷を続けるだけ無意味では?」
「ふぅむ…」
裁判長も考え始めてしまった。
「待ってください!まだ証人がこちらにはいます!」
サダハルさんがすかさず食らいつく。でも裁判長は首を横に振った。そんな…。このままじゃ本当に閉廷してしまう。
「待った!!!」
「シャオ…?」
シャオの緑色の目がキラキラしている。彼は立ち上がった。
「ぐ…な、なんだその目は!!」
シャオがホミールさんを見ると、彼の周りに黒い紋様が浮かび上がる。あれはなんだろう?
「あれがやつの使役している神々の力だ」
シャオが手をホミールさんに向けて伸ばした。ぐぐ、と彼を締め上げる音。
「お、お前の目は封神の力を有しているというのか?」
ホミールさんが苦しそうに言う。
「ぐ…ぬ…」
「神々の力を消す」
シャオがぎゅっと手を握ると、黒い紋様がざあっと消え去った。
ぜいぜいと、ホミールさんがその場にうずくまる。
「よ、よくも…!!我々の邪魔をまたすると言うのか!
魔王ごときの分際で!」
ホミールさんの声じゃない?誰かが彼を操っているようだ。エリザ様に取り憑いていた神とはまた別なのかな?
「あーあ、結局力ずくなんじゃない」
「ふ、王らしいな」
ルシファー騎士団のみんながシャオの周りに立った。
「みんな、下がっててね!すぐケリつけちゃうから!」
睡蓮が笑顔で言う。シャオの目の力は封神の力だと言っていた。
とにかくホミールさんを操っている何かを倒さなくちゃ。
シャオが目の力で奴の動きを止める。その隙をついて彼の体力をみんなで削る。ホミールさんの動きさえ止められればひとまず邪魔はできる。
俺は後ろからみんなを保護する白魔法をかけた。みんなのダメージを最低限にするものだ。
「グググ…ギャアアアア」
「焼き払ってやる!」
シャオが更に瞳を輝かせる。それは叫びながら消えていった。
ホミールさんが両手足をついて苦しそうに息をしている。
「おい、ホミール。あんた、この腕どうしたよ?どうせ鑑識のデータを改ざんしたんだろ?」
シャオは彼の右腕を掴んだ。
「ぐぬ…」
腕からは鮮血が流れている。サダハルさんが言った。
「裁判長、弁護側は勾玉の検査を再度することを求めます」
「ふーむ…受理しましょう」
ホミールさんはすっかり参ってしまったらしい。神々の力はそれだけ絶大なんだろう。力を過信して、溺れてしまうくらいには。
ホミールさんは全てを自白した。
***
パーティー中、シャンデリアを落とそうとしたホミールさんはライラさんが発砲した弾に当たり右腕を怪我した。そのままシャンデリアを計画通り落とし、王族たちを第二の城へ避難させる。
一方でそのすぐ直後に第三王子を呼び出して誘拐。そのまま拉致して、灯台に隠す。抵抗されたがその際、神々の呪いのかかった水を飲ませた。
この時に服の装飾だった勾玉を王子は掴んでいた。ホミールさんはそれに気付かなかったらしい。
イサキさんらに王子を誘拐した現場を目撃されていたことを神々から伝えられ、イサキさんを操ることに。
だがそれはうまく行かず、彼女の記憶を消しただけだった。
そこでイサキさんが第三王子を誘拐したというシナリオを新しく作り出す。鑑識、検察も念のため操れるようにし、万が一にも備えた。だからデータを改ざんできた。全ては国を自分のものにするため。世界を自分のものにするため。
***
「そこまでして国が欲しかったのか?」
シャオが鋭く尋ねる。
「誘惑に負けたのだ。力という誘惑にな」
ホミールさんはうなだれて、刑務官とその場を去っていった。
「一つ、よく分かりました」
裁判長が頷く。
「被告人、ライラ・バレットは無罪!」
***
もうすぐ日が沈む。夕方の太陽は真っ赤だな。
「姫、この度は不用な心配をかけた。すまなかった」
俺はスカーさんと二人で夕日を見ていた。急に謝られて、俺は驚いてしまった。確かに心配はしたけれど、謝られるほどじゃない。
「拙者は兄者とは違うのだ」
「え…?」
スカーさんが顔に巻いている黒い布を外した。やっぱり痛々しく赤くただれている。
「拙者は純粋な獣人ではない。
母は人間なのだ。拙者はハーフで、この病気はハーフ特有なもの」
「そうだったんだ。ちょっと診せてくれる?」
前にも言ったと思うけど、俺は薬を作るのが得意だ。特に傷に関しては。スカーさんが片膝を突いてくれる。俺は観察した。そして常備している塗り薬を腰に付けているポーチから取り出した。
スカーさんに断りを入れて、丁寧に薬を塗る。この薬の効能はかなり範囲が広い。
「ふむ…いい香りがする」
「うん、それとあまりべたつかないから結構好評だったよ」
「姫はさすがだな」
薬を塗り終わった、包帯を巻く。
「痒かったり痺れたりしない?」
「ああ、大丈夫だ」
よかった。
「これ、あげる。終わったらまた作るから言って」
俺はスカーさんに薬の入った瓶を手渡した。
「ありがとう、姫。あなたは拙者にとっても特別だ」
まさかそんなことを言われるとは思わなくて、俺は目頭が熱くなった。つい涙が溢れる。
「ありがとう、スカーさん」
慌てて涙を拭って、俺は笑った。
「さあ、明日には魔界に帰る予定だ。よく休まなくては」
「うん」
俺たちは屋内に戻った。
***
色々、あったな。夜、なんでだか寝付けなくて、俺は今日のことを思い出していた。
ライラさんは無事に無罪になったし、内乱をやめるという宣言が王政側から出たのだった。王族のヒトたちは、ホミールさんにだんだん逆らえなくなっていたらしい。それだけ彼の圧力は凄まじかった。レジスタンスは表向きは解散したとされたが、彼らは裏側から城を支えることになった。
「ましろ、眠れないのか?」
ごろん、とシャオがこちらを向く。そして俺を抱き寄せてきた。彼の腕の中は居心地が良すぎる。俺は彼の胸に頭をくっつけた。
鼓動が聞こえてくる。
「ごめんね、起こしちゃった?」
「いや、色々ありすぎてな」
「そうだよね」
「あのライラが結婚なんてな」
そう、ライラさんが第八王女と結婚することになったのだ。
「もしかして、寂しいの?」
ふざけて聞いたらほっぺをむにっとつままれる。痛い。
「んなわけあるか。あいつには何回飴や菓子を隠されたか」
「シャオ、ライラさんに鍛えられたんだね」
「…もうそれでいい」
面倒だし、と彼はむすっとしながら呟いた。あながち間違いでもなかったみたいだな。
「明日からまた仕事か…休みたい」
お、いつものぐずぐずシャオに戻った。お仕事嫌々モードはシャオにとって日常だしな。
「俺も手伝うから。ね?」
「約束だからな!」
「はいはい」
明日からまた忙しい日々が始まる。帰ろう、みんなで。
2・魔界に帰ってきた俺たちは結婚式を挙げるための儀式をしている。そう、祝詞を唱えてもらったのだ。他にも、色々な儀式をこなした。
「いよいよ、結婚式だね、姫」
睡蓮ににこにこしながら言われて、俺はその言葉にドキドキしてきた。
だって、やっぱりシャオってすごくかっこいいじゃん!
「ましろ!新発売だった!!」
シャオがぴゅうという効果音がつくような勢いでやってくる。どうやら新しいお菓子が発売されたらしいな。シャオはそのお菓子を早速買い占めてきたらしい。
「チョコの中に固めのビスケットが入っててゴリゴリする!美味い!!」
頼んでないけど、味のレポートまで始めたな。
「よかったね、シャオ」
「ん!」
マシャがててて、と俺のところに駆け寄ってきた。そして何かを見せてくる。こうゆうところ、本当にシャオ。可愛い。
「わ、花丸がいっぱい。お勉強頑張ったんだね」
屈んでそう言ったらマシャがどや顔してるし。可愛すぎる。思わず頭を撫でてしまう。
「す、かぁ、と、した!」
スカーさん、幼稚園の先生としては即戦力だな。
「マシャ、勉強を頑張った褒美にお前にチョコをやろう」
シャオがマシャにチョコを渡している。それを目をキラキラさせながらマシャが受け取っている。
「ほ…うび…!!」
「なんかついこの間までの緊迫感がゼロだよね。すごくいいことだけど」
「ははは」
睡蓮の言う通りだな。でも平和なのはいいことだ。平和って当たり前じゃないんだから。
「体調は大丈夫ですか?」
「はい。すっかり良くなりました」
イサキさんがにっこり笑っている。よかった、すっかり元気になったみたいだな。
サダハルさんが証拠を確認している。
俺ももう一度確認しておこう。
・シャンデリアを落としたのはホミールさん。ライラさんに王族、を傷付けると脅されたから。
・第三王子はライラさんに脅されて渋々レジスタンス活動をしている。
・イサキさんは王子を監禁したホミールさんを複数人で目撃している。
(ホミールさんも彼女がなにか見ている、と証言した。なにかは不明だ)
俺たちは、ライラさんの疑いを晴らさなければならない。
そして、この国の内乱を収めなければ。
いよいよ法廷が始まる。
「準備はよろしいですかな?」
「検察側、完了しています」
「弁護側……完了しています」
サダハルさん、緊張してるな。
「今回の件では、証人の証言が二転三転するというようなことが頻発しています。そのようなことのないよう、慎重に証言するように」
裁判長の言うことは最もだ。
「では証人をお呼びしてください」
一番最初の証人、それはもちろんイサキさんだ。前回、何らかの魔法で、証言を中断させられてしまった。それをしたのはホミールさんで間違いない。でも証拠はない。神々の力じゃないかってシャオは言っていたな。
「では証人、証言をお願いします」
「ここで改めて言っておきます。殿下は灯台に監禁されていました」
「なんですって!!その証拠はあるのですか?弁護人」
「はい、監禁された際、殿下は抵抗を試みたようです。こちらの勾玉をとっさに掴んでいました」
サダハルさんは勾玉を証拠品として提出した。
「な…これは血液が付着しています。一体誰のものなのでしょうか?」
「そちらの血液は鑑定したところ…」
サダハルさんの顔が青い。
「イサキさんのものでした」
イサキさんがぽかん、としている。俺たちも同じ気持ちだ。
「そ!そんなはずは!俺は!!」
「証人、落ち着いてください」
ホミールさんが笑っている。ここまで読んでいたのか?
「とにかく、真相はまだわかりません。改めて情報を見直しましょう」
・王子は監禁された際、誰かに後ろから頭を殴られた。その際、勾玉を掴んでいた。
・勾玉に付着していたのはイサキさんの血液だった。
一体どういうことなんだ?わからないことが多すぎる。
「証人、あなたが王子を監禁したのですか?」
「違います!有り得ません、そんなこと…!」
「では、第三王子が監禁された際、あなたはどこにいたのか証言して…」
イサキさんが固まる。
「その…記憶がなくて…」
「記憶がない?」
イサキさん、本当に記憶がないみたいだ。なんで?
「話になりませんな」
ホミールさんがいよいよ笑い出す。
「裁判長、この法廷を続けるだけ無意味では?」
「ふぅむ…」
裁判長も考え始めてしまった。
「待ってください!まだ証人がこちらにはいます!」
サダハルさんがすかさず食らいつく。でも裁判長は首を横に振った。そんな…。このままじゃ本当に閉廷してしまう。
「待った!!!」
「シャオ…?」
シャオの緑色の目がキラキラしている。彼は立ち上がった。
「ぐ…な、なんだその目は!!」
シャオがホミールさんを見ると、彼の周りに黒い紋様が浮かび上がる。あれはなんだろう?
「あれがやつの使役している神々の力だ」
シャオが手をホミールさんに向けて伸ばした。ぐぐ、と彼を締め上げる音。
「お、お前の目は封神の力を有しているというのか?」
ホミールさんが苦しそうに言う。
「ぐ…ぬ…」
「神々の力を消す」
シャオがぎゅっと手を握ると、黒い紋様がざあっと消え去った。
ぜいぜいと、ホミールさんがその場にうずくまる。
「よ、よくも…!!我々の邪魔をまたすると言うのか!
魔王ごときの分際で!」
ホミールさんの声じゃない?誰かが彼を操っているようだ。エリザ様に取り憑いていた神とはまた別なのかな?
「あーあ、結局力ずくなんじゃない」
「ふ、王らしいな」
ルシファー騎士団のみんながシャオの周りに立った。
「みんな、下がっててね!すぐケリつけちゃうから!」
睡蓮が笑顔で言う。シャオの目の力は封神の力だと言っていた。
とにかくホミールさんを操っている何かを倒さなくちゃ。
シャオが目の力で奴の動きを止める。その隙をついて彼の体力をみんなで削る。ホミールさんの動きさえ止められればひとまず邪魔はできる。
俺は後ろからみんなを保護する白魔法をかけた。みんなのダメージを最低限にするものだ。
「グググ…ギャアアアア」
「焼き払ってやる!」
シャオが更に瞳を輝かせる。それは叫びながら消えていった。
ホミールさんが両手足をついて苦しそうに息をしている。
「おい、ホミール。あんた、この腕どうしたよ?どうせ鑑識のデータを改ざんしたんだろ?」
シャオは彼の右腕を掴んだ。
「ぐぬ…」
腕からは鮮血が流れている。サダハルさんが言った。
「裁判長、弁護側は勾玉の検査を再度することを求めます」
「ふーむ…受理しましょう」
ホミールさんはすっかり参ってしまったらしい。神々の力はそれだけ絶大なんだろう。力を過信して、溺れてしまうくらいには。
ホミールさんは全てを自白した。
***
パーティー中、シャンデリアを落とそうとしたホミールさんはライラさんが発砲した弾に当たり右腕を怪我した。そのままシャンデリアを計画通り落とし、王族たちを第二の城へ避難させる。
一方でそのすぐ直後に第三王子を呼び出して誘拐。そのまま拉致して、灯台に隠す。抵抗されたがその際、神々の呪いのかかった水を飲ませた。
この時に服の装飾だった勾玉を王子は掴んでいた。ホミールさんはそれに気付かなかったらしい。
イサキさんらに王子を誘拐した現場を目撃されていたことを神々から伝えられ、イサキさんを操ることに。
だがそれはうまく行かず、彼女の記憶を消しただけだった。
そこでイサキさんが第三王子を誘拐したというシナリオを新しく作り出す。鑑識、検察も念のため操れるようにし、万が一にも備えた。だからデータを改ざんできた。全ては国を自分のものにするため。世界を自分のものにするため。
***
「そこまでして国が欲しかったのか?」
シャオが鋭く尋ねる。
「誘惑に負けたのだ。力という誘惑にな」
ホミールさんはうなだれて、刑務官とその場を去っていった。
「一つ、よく分かりました」
裁判長が頷く。
「被告人、ライラ・バレットは無罪!」
***
もうすぐ日が沈む。夕方の太陽は真っ赤だな。
「姫、この度は不用な心配をかけた。すまなかった」
俺はスカーさんと二人で夕日を見ていた。急に謝られて、俺は驚いてしまった。確かに心配はしたけれど、謝られるほどじゃない。
「拙者は兄者とは違うのだ」
「え…?」
スカーさんが顔に巻いている黒い布を外した。やっぱり痛々しく赤くただれている。
「拙者は純粋な獣人ではない。
母は人間なのだ。拙者はハーフで、この病気はハーフ特有なもの」
「そうだったんだ。ちょっと診せてくれる?」
前にも言ったと思うけど、俺は薬を作るのが得意だ。特に傷に関しては。スカーさんが片膝を突いてくれる。俺は観察した。そして常備している塗り薬を腰に付けているポーチから取り出した。
スカーさんに断りを入れて、丁寧に薬を塗る。この薬の効能はかなり範囲が広い。
「ふむ…いい香りがする」
「うん、それとあまりべたつかないから結構好評だったよ」
「姫はさすがだな」
薬を塗り終わった、包帯を巻く。
「痒かったり痺れたりしない?」
「ああ、大丈夫だ」
よかった。
「これ、あげる。終わったらまた作るから言って」
俺はスカーさんに薬の入った瓶を手渡した。
「ありがとう、姫。あなたは拙者にとっても特別だ」
まさかそんなことを言われるとは思わなくて、俺は目頭が熱くなった。つい涙が溢れる。
「ありがとう、スカーさん」
慌てて涙を拭って、俺は笑った。
「さあ、明日には魔界に帰る予定だ。よく休まなくては」
「うん」
俺たちは屋内に戻った。
***
色々、あったな。夜、なんでだか寝付けなくて、俺は今日のことを思い出していた。
ライラさんは無事に無罪になったし、内乱をやめるという宣言が王政側から出たのだった。王族のヒトたちは、ホミールさんにだんだん逆らえなくなっていたらしい。それだけ彼の圧力は凄まじかった。レジスタンスは表向きは解散したとされたが、彼らは裏側から城を支えることになった。
「ましろ、眠れないのか?」
ごろん、とシャオがこちらを向く。そして俺を抱き寄せてきた。彼の腕の中は居心地が良すぎる。俺は彼の胸に頭をくっつけた。
鼓動が聞こえてくる。
「ごめんね、起こしちゃった?」
「いや、色々ありすぎてな」
「そうだよね」
「あのライラが結婚なんてな」
そう、ライラさんが第八王女と結婚することになったのだ。
「もしかして、寂しいの?」
ふざけて聞いたらほっぺをむにっとつままれる。痛い。
「んなわけあるか。あいつには何回飴や菓子を隠されたか」
「シャオ、ライラさんに鍛えられたんだね」
「…もうそれでいい」
面倒だし、と彼はむすっとしながら呟いた。あながち間違いでもなかったみたいだな。
「明日からまた仕事か…休みたい」
お、いつものぐずぐずシャオに戻った。お仕事嫌々モードはシャオにとって日常だしな。
「俺も手伝うから。ね?」
「約束だからな!」
「はいはい」
明日からまた忙しい日々が始まる。帰ろう、みんなで。
2・魔界に帰ってきた俺たちは結婚式を挙げるための儀式をしている。そう、祝詞を唱えてもらったのだ。他にも、色々な儀式をこなした。
「いよいよ、結婚式だね、姫」
睡蓮ににこにこしながら言われて、俺はその言葉にドキドキしてきた。
だって、やっぱりシャオってすごくかっこいいじゃん!
「ましろ!新発売だった!!」
シャオがぴゅうという効果音がつくような勢いでやってくる。どうやら新しいお菓子が発売されたらしいな。シャオはそのお菓子を早速買い占めてきたらしい。
「チョコの中に固めのビスケットが入っててゴリゴリする!美味い!!」
頼んでないけど、味のレポートまで始めたな。
「よかったね、シャオ」
「ん!」
マシャがててて、と俺のところに駆け寄ってきた。そして何かを見せてくる。こうゆうところ、本当にシャオ。可愛い。
「わ、花丸がいっぱい。お勉強頑張ったんだね」
屈んでそう言ったらマシャがどや顔してるし。可愛すぎる。思わず頭を撫でてしまう。
「す、かぁ、と、した!」
スカーさん、幼稚園の先生としては即戦力だな。
「マシャ、勉強を頑張った褒美にお前にチョコをやろう」
シャオがマシャにチョコを渡している。それを目をキラキラさせながらマシャが受け取っている。
「ほ…うび…!!」
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