最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ

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二十一章

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1・その日の夜、サムさんの屋敷で豪勢な食事が振る舞われた。サダハルさんも一緒にと屋敷に呼ばれていたようだ。とりあえず一旦、ここまでの慰労会ということらしい。サムさんは高そうなワインを開けてみんなに振る舞っていた。マシャにはブドウジュースを出してくれた。優しいヒトなんだ。スカーさんのお兄さんというだけある。

「ふむ。一人じゃないというのはいいものだな」

サムさんが小さく呟く。そういえば、家庭を早く持ちたいって言っていたよな。サムさんの相手ならいくらでもいそうだけど。
美味しかった食事も食べ終わって、みんなのんびりしている。マシャとシャオはソファにもたれかかってすうすう眠っている。いっぱい食べたしね。
それに、ふかふかのソファだからここで眠るのは気持ちいいだろうな。王子も少し離れたところに座っていた。食べたら随分顔色がよくなったな。サダハルさんはサムさんと話している。何やら盛り上がっているな。

「スカーさん、怪我は大丈夫?」

彼は壁を背に隙なく立っていた。いつでも臨戦態勢を崩さない。それがスカーさんの基本スタイルだ。

「姫…拙者のことなら気にするな」

なんだか突き放されたような気持ちになって、俺は腹が立った。

「スカーさんを心配してないヒトなんていないんだよ!少なくとも俺は心配してる。昨日だって怪我の手当てもさせてくれないし…」

「姫は優しいのだな」

「なにかの病気じゃないよね?」

突然不安になって、俺はスカーさんを見上げた。いつも寡黙だけど、時々お茶目な一面を見せてくれる彼のことを俺はものすごく信頼している。そう、出会った時から彼は変わらず俺のそばにいてくれる。スカーさんがちらっと俺を見た。そして懐から茶色い包みを出して開けた。それは。

「姫、食べるか?」

「食べる…」

思わずごくり、と生唾を飲み込んでしまった。美味しいんだよな、スカーさんの握り飯。いつ作ったんだろう?つやつやしたお米が本当に美味しそうだ。

「姫は細いのによく食べるな」

「普通だよ」

ふふっとスカーさんが嬉しそうに笑う。俺は握り飯を一つ掴んだ。
あむ、と口に入れると、ふわっとほんのり塩味が広がる。お米も甘くて最高だ。このお握り、お店で出したら絶対に人気商品になる。

「美味ー!」

まむまむと味わいながら咀嚼していたら、手がぬっと伸びてきた。ん?

「スカー、俺にも寄越せ」

「え、王ずるい!!」

「俺も食べるぞ」

「おにぎり食う姉御エロいっす」

「俺っちにもくれるよな?」

「…」

「おやおや」

「若いというのはいいのう」

シャオとルシファー騎士団のみんながわいわい集まっている。スカーさんはそれを読んでいたのか、シュバッとみんなの手に握り飯を乗せた。凄い早業だ。

「うまぁ!!」

モウカがもきゅもきゅ握り飯を噛み締めながら言う。隣でランスロットさんがお茶を啜っていた。もう食べたの?早いな。

「スカーさんのおにぎり、本当に最高だよね」

ほっぺたが落ちそうになっているのは睡蓮だ。

「いつもながらどこで作ってらっしゃるのでしょう」

フギさんがミステリアスに眼鏡を光らせている。スカーさんはそれにも動じず涼しげだ。

「睡蓮の味噌汁とセットだと、なお美味いんだよなー!」

「分かる」

テンゲさんと白蓮がおにぎりを見つめながら言う。それ、俺も食べてみたい。イサールも無言でもぐもぐしているな。

「今度みんなに美味しいお味噌汁、作ってあげるー!約束」

睡蓮が可愛くウインクをしながら言ってくれた。

「みなさんは仲良しなんですね」

おずおずと王子がやって来て言った。
スカーさんが、彼の手にも握り飯の入った包みをそっと置く。

「わ、美味しそう」

王子が包みを開けながら言う。彼は握り飯を頬張り始めた。

「わ、美味っ…うっ、ライラ…イサキ」

握り飯を食べながら王子は泣き始めてしまった。ずっと辛かったんだろうと思う。俺もそうだったからよく分かる。

「王子、大丈夫です。必ずライラさんとイサキさんを取り戻しましょう」

「はい、っ…」

俺の言葉に、王子は頷いてくれた。

2・「ここがレジスタンスの基地か…」

次の日、俺とシャオ、ルシファー騎士団、そして王子一行は地下に来ている。レジスタンスの基地があるからと聞いて来てみたけれど、なんともないようだ。ちょっとホッとした。王政側が何かしていたら、なんて暗い気持ちが俺の頭を過っていたからだ。

「殿下!!ご無事だったのですね!」

中から飛び出してきたのは獣人の少年だった。腰には重そうな剣を差している。他にもわらわらと獣人たちが現れる。みんな若そうだな。というか、ほぼ子供だ。
王子の周りに集まってみんな再会を喜んでいる。俺たちはしばらくそれを見守っていた。そんな俺たちに声をかけてきたのは、獣人の少女だった。見るからに活発そうな感じだ。

「あんた、シャオ陛下だよね!殿下の行方をあたしたちはずっと探していたのさ。イサキ様やライラ様がいないからみんな不安だったんだよ。とりあえず中へ入っておくれ」

基地の中には寄せ集めと思われる家具が置かれている。みんなで暮らしている雑多な感じが伝わってくる。きっと賑やかなんだろうな。楽しそうだなって不謹慎ながら思ってしまった。

「お茶も出せなくて悪いね。あたしらもギリギリで…ううん、国全体がそんな感じなのさ」

そりゃそうだよね。内乱が起きて、国は混乱している。そもそも国にヒトがいなくなっているし。

「ここまで来て分かったことがある」

シャオが椅子に腰かけて長い足を組んだ。こういうのも様になるヒトだ。悔しいけどカッコいい。

「一体何が分かったんだい?」

「この国はホミールに狙われてるぞ」

「ちょっ…シャオ!」

それはさすがに飛躍しすぎなんじゃ、と俺は思った。ホミールさんは一応、軍師なんだし国を思って動いているんじゃないのか?

「やっぱりかい」

彼女が首肯する。

「侍女たちによると、王族が一人ずつ姿を消しているようなんだよ。ホミールは三年前にこの国に来てね、王族にうまく取り入った。それからはやつの思うがままだよ」

「王族から反発するやつが出たからいちいち消してんのか。本当めんどいことが好きなんだな。そこまでして国が欲しいのか?」

シャオがあくびをしている。そして猫ちゃん並みにぐっと伸びた。この伸び方、ライラさんに教わったのかなあ?

「んー、じゃあとりあえず城?にサクッと侵入してみるか」

「はぁぁ?!」

彼女の反応に俺も一票。というか、今王族たちはどこで暮らしているんだろう?俺がそう彼女に質問すると、第二の城なるものがあるらしい。魔界でいうところの別邸に当たるのかな。シャオの気配が一瞬薄くなる。
彼は少年の姿になっていた。可愛い。普段の姿から、変身も出来るのか。

「これなら侵入できるだろ?」

「かわい・・・じゃなくて、なんでそこまでしてくれるんだい?あんたたちにとってはただの厄介ごとだろう?」

「まあその通りではあるんだけどな。でも俺は猛烈にホミールに腹が立っている」

シャオが怒る気持ちも分かる。

「シャオ、俺も一緒に行っていい?」

「ああ。お前が来てくれるとずいぶん助かる」

シャオがそう言ってくれて嬉しいな。


2・「ふーん、まあまあだな」

次の日の朝、俺たちは獣人国第二の城に来ている。どちらかといえばホテルみたいな建物だ。まだ新しい。

「俺たちは掃除夫として中に潜入するからな」

「シャオ、ばれないように気を付けてよ?ただでさえ君は目立つのに」

「分かってる」

俺たちは裏口から中に入った。思っていたよりすんなり中に入れたなあ。作業服と帽子で変装しているとはいえ、ドキドキだ。掃除道具を適当に手に持ってあからさまに掃除をしていますよという顔で中の様子を探る。ふと人影を感じて俺たちは壁の後ろに身を潜めた。間違いない。ホミールさんだ。

「これで私の王国が完成する。あとはレジスタンスの連中を根こそぎ潰して」

そんな物騒なことを呟いている。俺は嫌な予感がした。まさかもう。シャオも同じことを思ったらしい。
そっとその場を離れる。

「シャオ、どうしよう。王族のヒトたちが」

「落ち着け。まだそうと決まったわけじゃない」

「うん」

王族の人たちは上層階にいるらしい。俺たちは早足で階段を駆け上がった。誰ともすれ違わなかったのは幸いだ。まあすれ違っても掃除をしているふりをするだけなんだけどね。階段なんて特におあつらえ向きだし。

「ここか?」

シャオはそっと廊下に顔を出して窺がった。誰もいない。個室がいくつも並んでいる。
俺たちはあくまで掃除をしにやってきた体だ。こんこんと部屋のドアをノックしたけれど返答はない。
シャオがノブを掴んで回すと簡単に開いた。
そこにいたのは机の上に突っ伏した第八王女だった。これはやばいぞ。俺は彼女に駆け寄って、浄化の白魔法を唱えた。

「ん、ましろさま?私は・・・っつ」

毒物ではない毒物。これはいったいなんだろう?

「王女、いつやられた?」

シャオが冷静に尋ねる。彼女は記憶を思い出しているようだ。

「昨日夕食を食べてそれから記憶が」

「相変わらず痕跡はねえし、夕飯に紛れていたってのは考えにくいな」

そう、これは毒物じゃない。もっと高度なものだ。シャオが舌打ちする。

「これが神々の力ってやつか。本当つまんねえな。エリザといい」

「シャオは前のエネミーの件と今回の件が関係しているって思ってるんだ?」

「まー、一応な」

神々が動き出しているのか?なんのために?

「はっきりとは言えないが、マシャのことや、あのマシャの妹とかいうやつもこれらの件に関係している気がしてな」

確かにその通りだ。一体彼らは何が目的なんだろう。今までの件が本当に繋がっていたとしたらそんな恐ろしいことはない。

「ま、先に王族全員助けて俺たちの味方に付けようぜ」

シャオが軽やかに言う。簡単に言ってくれる。浄化の魔法は魔力の消費が激しいんだぞ。じとっとシャオを睨んだら、急に抱き寄せられてキスされた。口から入ってくるこれは魔力だ。でも王女が見ている前でしなくても。

「ましろには俺の絶大な魔力をやろう。そしたら大丈夫だろ?」

「お二人はラブラブなのですね。素敵」

ほらやっぱりこうなったじゃないか。まあ隠しているわけではないけれど。
俺たちは部屋という部屋を回って王族のヒトたちを全員介抱した。みんな夕飯を食べた後の記憶がないらしい。
痕跡を残さず自分の思い通りに出来る魔法なんて無敵過ぎる。
神が敵になったら俺たちはどうすればいいんだ?分からないけれど、やるしかないんだよな。

「おっし、あとは裁判だな。ホミール見てろよ」

シャオが嬉しそうにどこからか取り出した飴を舐め始めた。
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