【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro

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【番外編】そこにある、確かなもの。

1. -ルークside- ① *

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「あっ、あ、んっ…ねぇ、っ…ルー、クっ。も、う…、ん、今っ夜は…っ」

 瞳を潤ませ、頬を紅潮させた愛しい人が、肩越しに艶のある声で訴えてきた。律動で途切れる言葉には甘い吐息も混じり、止まるどころか突き出したその細い腰を掴んで、余計にナカを掻き乱したくなる。
 俺は動きを少し緩めて滑らかな背中に覆い被さり、唇を塞いで咥内を余すところなくなぞり、舌を吸い上げた。腰を掴んでいた手を胸に這わせて頂の粒を捏ねると、ナカから俺のモノをきゅうっと締め付けてくる。

「…んむっ…っ、んん…」
「はぁ…っ。まだだよ、ユイ。もっとを魔力でいっぱいにしないと」

 唇を解放して下腹部をさすりながら言うと、ユイはさっきよりも蕩けた表情をしていた。口の端から零れる唾液が何とも淫らだ。

「で、も、もうっ、おなか…っ、いっぱいっ。そ、れに、なん、かいっ、も…、イっ、て…!」
「じゃあ…っ、仕方ないから、これで…最後ね?」

 速度を上げながら抽挿し、ユイのモノも同時に扱いた。それに呼応するかのように、ユイの喘ぎ声に切なさが増していく。肌がぶつかる音と濡れた音が、ユイの艶声を引き立てて情事の雰囲気をより甘くした。

「ひぅっ、…ああっ、は、んっ、あああん、ダ、メっ───っ!」

 ユイのナカがビクビク痙攣しているのが伝わり、ユイのモノからも白濁が迸った。それに刺激され、俺も自身の熱をユイの最奥に放つ。
 吐精した後もナカに擦り込むように、ゆっくり抽挿を続けた。

「うごか…ないでっ…。きもち…いいの、とまら、な…っ」

 息を荒げなら涙目で訴えるユイは、煽っているようにしか見えない。再び口づけで唇を塞ぐと、俺の舌を絡めようと追いかけてくる。そういうことを無自覚にやってくるから、また乱したくなる。

「ユイ、煽らないで?そんないやらしい表情を見せられると、また昂ってくる…」
「あっ、あおって…ない、から…っ!んっ…ぁ、いっか、い…ぬいて…っ」

 さすがに今夜はもう限界のようだ。俺は言われたとおり、ユイのナカからゆっくり自身を引き抜いた。その途中、ユイが「あ、んっ…」と切ない声を漏らすから、ナカを突き上げたい衝動を必死で抑えなければならなかった。
 ユイは全身の力が抜けたようにベッドにへたり込み、肩で息をしながらじろりと非難がましい視線を俺に向けた。俺はその視線の意味を理解しながらも、素知らぬ顔でユイの隣に横になった。

「またそんな可愛い目で見つめて」
「…っ、もうっ」

 頬を紅潮させ、ユイは納得いかないという表情を隠すように枕に顔を埋めた。

「照れてる。かわいい」

 俺はユイの左手を取り、小指に嵌められた指輪に唇を落とした。俺がある魔法を付与したそれは、ベッドサイドのランプの灯りで小さな輝きを放っている。
 未だ枕で顔を隠しているユイに覆い被さり、背中から腰にかけて丹念に痕をつけていると、ユイはくすぐったそうに身を捩った。

「ねぇ、ユイ。どうして、ユイは子どもが欲しいの?」

 俺の言葉に、ユイは一瞬身体を強張らせた。しばらくの沈黙の後、背中を向けていた身体をゆっくり反転させ、俺をじっと見つめながら答えた。

「……証がほしい」

「証?」

「そう。僕がこの世界で生きた証。そして、僕と君の間に、確かな愛があったっていう証。それに───」

 伸ばされたユイの手が俺の頬に触れ、柔らかな笑みを湛えて優しく撫でてくる。

「───もし僕がいなくなっても、子どもがいればルークは寂しくないでしょ?」

「……そんなわけない。たとえ子どもがいても、ユイがいなくなった世界なんて堪えられない」

 いつかは訪れることでも、ユイがこの世界から消えるなんて考えたくもない。俺は頬に触れるユイの手を取り、きつく指を絡ませながら首筋に唇を落とした。

「…んっ、ルーク…」
「ユイ…やっぱり、もう一回だけ」
「さっき最後って───」
「お願い」

 返事を聞くより先にユイの足を持ち上げると、濡れたままのは抗うことなく俺を迎え入れてくれた。

「───あっ…んん!」

 俺は再びユイのナカをぐちゃぐちゃにかき乱すように揺さぶりながら、胸の内では黒い感情を燻らせていた。



 ユイ。早く、俺の子を孕んで。


 あなたを繋ぎとめる楔を、俺にちょうだい……。




 ユイと正式な夫夫ふうふとなり、半年が過ぎた。新居での生活もすっかり慣れ、二人で穏やかな日々を送っている。ユイは「二人だけだと、やっぱり広いね」と言っていたが、王都や領都の邸に慣れていた俺には、二人でちょうどいい広さだった。
 結婚後に始めた魔法具兼薬屋は、開業してまだ2ヵ月程だが思いのほか客足が多い。姉さんから貰ったエリクサー製作の報酬やユイの辺境伯領へ遠征した時の褒賞も十分あるし、このまま順調に経営していたら生活に困ることはまずないだろう。これもユイが<ノクターナ>の常連客にウチを売り込んでくれたおかげだ。
 しかし、今日のようにユイが外に仕事に行く日は、やはり気分が沈む。まだ俺一人でも店を回せるのもあり、ユイはウィリアムさんとディーンさんの希望で週に2回<ノクターナ>に出勤している。
 楽しんで仕事をしているようだし、それを止めるつもりはない。気に入らないのは、言い寄ってくる客が多いということだ。
 ただでさえ人目を惹くユイは、俺と身体を重ねてからというもの、日に日に色気が増している。あのイヤーカフをしている限り危害を加えられることはないが、結婚指輪をしていてもお構いなしに口説いてくる輩がいると、この前ディーンさんがこっそり教えてくれた。当のユイはそんな輩の言うことは冗談だと受け流しているようだが、不愉快であることに変わりない。

 ユイを何とか家に囲えないものか……。

「……あ」

 ある考えが頭に浮かび、思わず声が出てしまった。しかし、この考えは俺の中ですぐに却下された。ユイの負担が大きすぎるし、何より俺がユイを独占できなくなる。もちろん、ユイが望むなら話は別だが……。
「すみませーん」という客の呼び声がして、思考がそこで途切れた。店内を見渡せば女性客が殆どで、チラチラとこちらを見ている。あまり気は進まないが、しっかり接客して馴染み客を増やさなければ。
 俺は気持ちを切り替えて、仕事に集中することにした。
 しかし、このとき浮かんだ考えが、夕方に帰宅したユイの一言で一気に現実味を帯びてくるなんて思ってもみなかった。



「ねぇ、ルーク。子どもって…どうやって、つくるの?」

 夕食を終えて一緒に食器を片付けていると、キッチンの方からユイが耳まで真っ赤に染めながら尋ねてきた。俺は危うく食器を落とそうとしたが、ぎりぎりのところで持ちこたえた。

「えっと…、今日<ノクターナ>で仕事してたら、お客さんの子どもの話が聞こえてきてね。同性同士は魔法具を使うってことは前に聞いてたけど、具体的にどうするのかな…って」
「……ユイ、子どもが欲しいの?」
「………いつかは」

 食器がぶつかり合う音でかき消されそうなほど小さな声で、ユイは頬をさらに朱く染めて言った。以前から分かっていたことだが、ユイは本当に子どもが好きだ。村にいた頃の孤児院でもアルの相手をする時も、俺に向けるものとは違う優しいまなざしをしていた。世話をするのも上手いし、子どもができたらきっと大切に育てるだろう。
 ユイが自分との間にできた子を抱く姿を想像すると、何とも言えない愛おしさが込み上げてくる。
 俺は食器を洗うユイの隣に立ち、皿を拭きながらかいつまんで説明した。
 同性同士で子どもを授かりたい時、<生命いのちの環>という指輪型の魔法具を使用する。指輪を嵌めた者はその効果により一時的に妊娠できる身体に変化し、身籠ることができるようになる。しかし、それにはパートナーとなる者の魔力が必要で、身体のつくりが変化する間は継続して身籠る側に魔力を送らなければならない。

「魔力を送るって、どうやって?」
「方法はいろいろあるよ。でも、一番効果が高いのは体液の摂取かな。とりわけ精液は、体液の中で最も魔力が含まれている」
「…どれくらいの期間?」
「個人差にもよるけど、身体の変化のためには最低でも半月」
「……つまり」
「身籠るためには、たくさんエッチするってことだね」

 ユイがより理解しやすいよう、前に教えてもらった異世界の言葉を使ってみた。ユイのかわいい反応を見る限り、使い方に問題はなかったようだ。
 だが、子を授かるには様々な危険性もある。必ずしも妊娠するとは限らないし、身籠る側の身体の負担がとても大きい。俺たち夫夫の場合、魔力量や身体関係のことを考えると身籠る側はユイになる。

 ユイとの間に子どもができれば、それは嬉しいに決まってる。だが俺は、たとえ子どもができなくても、ユイがそばにいてくれればそれでいい。

 そんな意味を込めて、俺はもう一度ユイに子どもが欲しいかと尋ねた。洗い物を終えたユイは、覚悟を決めたように真っ直ぐ俺に向き直り、「欲しい」とはっきり答えた。

「わかった。準備に時間もかかるから、さっそく明日から始める」
「ありがとう、ルーク。僕のわがままを聞いてくれて」

 ユイの微笑む顔を見たら、少し罪悪感が芽生えた。俺の胸の内はある想いは、ユイとの間に子どもを作れるという純粋な喜びだけではなかったから。


 その翌日から、俺は<生命の環>を作るための準備に取り掛かった。
 <生命の環>を使用するためにはまず、<魔法具管理局>という国立機関から製作許可証を取得し、作ってもらう工房に提出しなければならない。人身売買を目的に力の弱そうな男を攫って、無理やり子どもを産ませるような犯罪行為を防ぐためだ。
 製作許可証を得るには、医術師の意見書と婚姻証明書を管理局に提出すればいい。
 また製作を頼まれた工房は、<生命の環>に自身の工房の刻印を入れることを義務付けられている。そうすることで、犯罪に使われた場合はどの工房で作られたかがすぐに判るため、依頼主も特定できる仕組みになっている。今回は俺が作ることになるから、許可証が手に入ればすぐにでも着手できる。
 製作にはそれほど時間のかからない魔法具だが、ユイが身に着けるものに妥協はしたくない。かといってユイとの時間を減らしたくもないから、俺は少しずつ丁寧に作り進めた。

 そして1ヶ月半後、無事に<生命の環>が完成した。必要な魔法式を刻み込み、自分の魔力を注ぎ込んだ魔石を埋めた小さな指輪だ。
 俺はユイの左手を取り、小指に指輪を嵌めた。ユイは自分の指に嵌められた指輪をまじまじと見つめながら、感嘆するように言った。

「すごく綺麗だ。これが子どもを授かるための魔法具だなんて思えないくらい…」
「ユイのために作るんだから、これくらいはね」
「本当に、ありがとう」

 指輪に手を添え、ユイはふわりと微笑んだ。暖かい風が吹いてきそうな笑顔を見て、俺は胸の中をくすぐられうような感覚を抑えながら、優しくユイを抱きしめた。

 その日の夜から、さっそく子作りのために励んだのは言うまでもない。


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