【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro

文字の大きさ
10 / 128
第一章

9

しおりを挟む

昼食後、子ども達に誘われて孤児院の前庭に出た僕は、みんなと一緒に木陰で寛いだ。リリィは僕の背後に立ち、髪を白詰草でハーフアップに結って遊んでいる。

「ユイお兄ちゃんってお顔もキレイだけど、かみもキレイだよね。朝あいさつしたときも、すごくキレイな人だなぁってドキドキしちゃった」
「おれもびっくりした」

リリィとライルがそう口にした。顔についてはそんな自覚がないから、正直よく分からない。

学習時間をきっかけに、子ども達と一気に打ち解けた。午前中に別室で魔力操作の練習をしていたユアンも、今は他の3人と一緒に僕の傍で本を読んでいる。
ユアンはこの4人の中で一番年上の12歳で、本を読むのが好きらしい。

「僕もユイさんに、今度おすすめの本を教えてあげるね」
「ありがとう、ユアン」


子ども達は孤児院の周囲や、村のことをいろいろ教えてくれた。
この教会と孤児院は村から少し離れたところにあり、村の人たちが収穫した作物やパンなどを持ってきてくれる。村に住む子どもは、孤児院の子たちを除けば4・5人しかいないそうだ。

「おうちのお手伝いがないときは、よくあそびにくるよ」
「パン屋のサラ姉ちゃんもきてくれるな」
「ユイさんもそのうち会えるよ」

話をしているうちに、アリスはいつの間にか僕の膝を枕にして気持ちよさそうに眠っていた。それに気が付いたリリィとライルも、急に眠気が襲ってきたのか僕にもたれかかって眠ってしまった。

「3人とも寝ちゃったね。ユイさん、重くない?院長先生呼んでこようか?」
「ううん、大丈夫。もう少し寝かせてあげよう」

それからしばらく、穏やかな時間が流れた。ユアンは本を読み進め、僕は時折吹く風を感じたり草木のざわめきを聞きながら、ぼんやり空を眺めていた。
空の青を見ていると、ふとルークのことを思い出した。

「そういえば、ユアン。ルークはどうしたの?昼食の時もいなかったけど……」
「多分、近くの森に行っているよ。ルーク兄さん、薬の材料を集めに行くことがよくあるんだ。でも夢中になるとなかなか帰ってこなくて…」
「ルークって薬が作れるの!?」

そういえば、僕が熱を出した時に院長がそんなこと言っていた。

「うん。たまに村の人にも頼まれてる」
「すごいね」

「何がすごいの?」

僕とユアンが驚いて振り向くと、いつの間にかルークが後ろに立っていた。

「ルークっ、おかえり」
「ただいま、ユイ。何の話してたの?」
「ルークが薬を作れてスゴイねって話」
「あぁ、たいしたことないよ。教わったとおり材料を混ぜ合わせてるだけだから。それより、もうすぐお茶の時間だよ。みんなを起こしてダイニングに行こう」


3人を起こしてダイニングに向かうと、院長がパウンドケーキを切り分けていた。

「みんな、ケーキをテーブルに運んで。ユイは、子ども達にミルク淹れてくれる?」
「分かりました」

ミルクの入ったピッチャーを持って、ダイニングテーブルに準備されていた4つのカップに注いだ。みんな美味しそうにパウンドケーキを食べている。
院長は僕とルークに紅茶を淹れてくれた。

「さあ、どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」

みんなでお茶の時間を楽しんでいると、勝手口からノック音が聞こえた。

「あら、きっとアランね。ユイ、ドアを開けてくれる?」
「あっ、はい」

ドアを開けると、木箱を抱えた青年が立っていた。僕と歳が変わらないくらいで、見上げるほど長身だった。

「院長~、野菜持ってきました……って、誰?」
「あっ、僕は──」
「いつもありがとうね、アラン。中に運んでくれる?」

僕とアランと呼ばれた青年の間に院長が入った。アランが促されてキッチンの隅に木箱を運び終えると、院長が紹介してくれた。

「アラン、紹介するわ。今日から司祭の補佐をすることになったユイよ。ユイ、彼はアラン。この村でご両親が農業を営んでいて、そのお手伝いをしているの。いつも孤児院に野菜を卸してくれているのよ」
「そうなんですね。ユイといいます。よろしくお願いします、アランさん」
「こちらこそ。……司祭の補佐ってことは、成人してるんだよな?歳は?」
「18です」
「俺の方が年上だけど、1つしか違わないな。アランでいいよ。敬語もいらない」

アランはそう言って笑顔で手を差し出してきた。同年代の友人ができることが嬉しくて、僕は笑顔でアランの手を取った。

「うん。ありがとう、アラン」
「……っ」
「?…どうかした?」
「あぁ、いや。…なんでもない」

どうしたんだろう……?やっぱり敬語の方がいいのかな?

訝しんでいると、後ろから誰かにグイっと両肩を掴まれた。

「いつもありがとうございます、アランさん。そろそろ手を離していただけませんか?まだユイに部屋の場所を伝えていなかったので、案内したいんですが」
「はっ?おいルーク、お前……」
「行こうか、ユイ」

僕の後ろからアランに食ってかかるようにルークが言い、僕の肩を抱いたままその場を後にした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」

竜弥
BL
異世界に転生する直前、天貴(てんき)が選べた“持ち物”は三つ── だが、彼はひとつしか持たなかった。 残されたのは部屋と、布団と、そして──忠犬。 「クータンを頼む」。それが、最後の言葉だった。 ぽつんと現代に残された玄太は、天貴の部屋で布団にくるまりながら泣いていた。 でも、捨てられたわけじゃなかった。 天貴が“本当に”持っていきたかったのは、玄太だったのだ。 その事実を知った瞬間、忠犬は立ち上がる。 天貴の武器を手に、異世界転送の手はずを整え、 天貴が今どんな敵と向き合い、何に苦しんでいるのかを知った玄太は、叫ぶ。 ──忘れ物はおれ!…届けに行くっすから! これは、異世界に送られた大好きな先輩を追って、 “忠犬男子”が次元を越えて追いかける、少しおかしくてちょっと泣ける物語。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

ルイとレオ~幼い夫が最強になるまでの歳月~

芽吹鹿
BL
夢を追い求める三男坊×無気力なひとりっ子 孤独な幼少期を過ごしていたルイ。虫や花だけが友だちで、同年代とは縁がない。王国の一人っ子として立派になろうと努力を続けた、そんな彼が隣国への「嫁入り」を言いつけられる。理不尽な運命を受けたせいで胸にぽっかりと穴を空けたまま、失意のうちに18歳で故郷を離れることになる。 行き着いた隣国で待っていたのは、まさかの10歳の夫となる王子だった、、、、 8歳差。※性描写は成長してから(およそ35、36話目から)となります

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...