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5 「…うう、謝らないでよカイルさん。それに…一生って…そんなに重たい罪じゃないよ?」
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sideブラウン
私は安堵した。
それは、この事件に嫡男殿下が一切関わって居なかったからだ。
それが発覚したのは、つい先日。
嫡男殿下が関わっていない事が発覚し、無事に犯人を捉えたのだから、アン殿下には王宮に戻って頂く他ない。
迎えの馬車に乗り込むとその小さな小屋へ入り込む。
そこはまるで葬式のような雰囲気だった。
丁度私が迎えに行ったのは、カイルがその罪悪感から真実を告白した瞬間だったらしい。
顔面を蒼白させるカイルと、困惑に慌てる殿下。
私は…陛下の騎士であり、不敬を承知で言えば嫡男様もアン様も我が子のように愛する男、チャールズ・ブラウン。
アン様への謀反…そして、その発端である嫡男様の未婚…問題は尽きる事は無い。
嫡男様は、王としての資質は満足なのだが…どうも皇后に対する理想を抱いている。
身分違いの恋をしているらしく、その者以外との結婚を頑なに拒んだ。
そして…嫡男様が結婚をされないせいで継承位第二位の、アン殿下はこうして狙われた。
カイルが身を呈して守った甲斐もなく、記憶を失い瀕死のカイルとの同居。
弟を愛する嫡男殿下は酷く混乱し、陛下は伏せってしまい…語弊を恐れず言えば、今王宮は王族としての機能を全く維持出来ていない。
だが、アン殿下を狙った者は身勝手な嫡男主義の従者だった事だけは不幸中の幸いだ。
アン殿下を溺愛していた嫡男殿下がアン殿下の暗殺を命ずる事など無いと分かりきってはいたが、犯人を見つけるまではアン殿下を王宮には戻せなかった。
だが犯人が捕らえられた今、アン殿下は記憶を失っていても王宮に戻す事が出来る。
アン殿下を心配して、使い物にならない嫡男殿下と陛下に元に戻ってもらわなければこの国はお終いである。
葬式状態の二人をなんとか王家の馬車に乗せ、数時間を掛け王宮へと向かった。
「…いきなり王家の次男だと言われて驚いたでしょう、アン殿下。今までの無礼をお許しください。あなたに謀反を働いた者を見つけるまでは、身分を隠して頂く必要がありましたので…」
カイルの横でぽつんと小さくなるアン殿下は、今までの気高く気品のある振る舞いからは考えらない。
「…驚いたなんてものじゃありません…だって、騎士様だと思ってたカイルさんも、僕に真実を告げてからは謝罪の言葉意外何も言ってくれなくなってしまって…」
大男のカイルは黙ったまま、大きな身体を縮こませ罪悪感からか表情を濁らせる。
「カイルは殿下が生まれる前からの騎士ですからね…殿下を平民同然に扱うひと月に申し訳なく思うのは当たり前でしょう」
「っ…でも!そんなの変です、命懸けで守ってくれたカイルさんが僕に申し訳なく思う事なんて何も……」
他の者たちなら、こんな殿下を見たら別人のようだと言うだろう。だが、私は知っていた、気高く高飛車な性格は王族としての振る舞いであって、元々の性格は優しくおおらかだ。
「アン殿下……食事作法のご記憶は?」
「……ブラウンさん、なんとなく……多分」
無いのは過去に関する記憶のようで、教育や良識に対してはちゃんと持ち合わせており、馬車の乗り降りも美しい所作を見せた。
今のアン殿下は、その麗しさと王家としての美しい所作を兼ね備えた……穏やかな両家の坊やのようだ。
「でしたら、従者に給仕させても大丈夫ですね、着いたらすぐに食事に致しましょう」
私としては、恋愛結婚を望む嫡男様でも、美貌と穏やかさを備えた今のアン殿下でも……どちらも王位には相応しいと思っている。
だが問題は……カイルという鉄壁の盾。
私は陛下に対し私生活の束縛をする事などまずなかった。だが…この男は昔からやたらと、殿下の意思を分かったように口を聞く。
「ブラウン殿……アン殿下は記憶を失って大変戸惑っておられますので、食事は私と二人で結構です」
罪悪感で灰のようになっていたかと思えば、従者に給仕をさせるという私の提案を一蹴した。
早く嫡男様には世継ぎをこさえて頂いて、アン殿下には貴族との縁談を進めたいというのが私の本音だ。
だが、殿下の事となるとすぐにカイルが割って入り…挙句こうして食事の相手ですら選ぼうとする。
「……殿下」
私がチラリと殿下に目をやると、カイルさんがそう言うなら二人の方がいいかな…と仰った。
これは昔からだ、カイルが言うと、殿下もそうしようと賛同する。無意識下で行われているのかもしれないが…私にとっても国の今後にとっても、この男の過保護さは鬱陶しい。
アン殿下には身の安全の為にも早く婚姻を結んで欲しいのに。
「殿下がそう仰るなら、食事はお二人で」
私は気に食わないのを悟られないように笑った。
「殿下、本当に…事情があるとは言え、あなたにした言葉遣いや態度…全てを謝罪致します。一生を掛けて償いますから、王宮では何でも私に申して下さいね」
「…うう、謝らないでよカイルさん。それに…一生って…そんなに重たい罪じゃないよ?」
「いえ、あなたに礼儀を欠くのは死罪も同然ですよ」
私からも護るように…カイルの身体は常に殿下の方へ向いている。
「カイル、それはお前にとって罰にならないでしょう。まぁ命じたのは私なのでもちろん、殿下がお許しになるのなら放免になるでしょうが」
一生殿下を、近くでお守りする……その言葉の重みを殿下は知らない。私はつい恐怖を覚える程の…強い執着。
「ブラウン殿……罰を与えられても私は構いませんよ。そうですね…無休で殿下の食事を作るとか…一生」
そう呟くカイルの口角が上がるのを私は見逃さなかった。
好きな人がいるからと結婚しない嫡男、結婚の意思はあれど鉄壁の騎士に守られた次男……。
王位の継承に当たる私の多難は終わりを見せることはない。
私は安堵した。
それは、この事件に嫡男殿下が一切関わって居なかったからだ。
それが発覚したのは、つい先日。
嫡男殿下が関わっていない事が発覚し、無事に犯人を捉えたのだから、アン殿下には王宮に戻って頂く他ない。
迎えの馬車に乗り込むとその小さな小屋へ入り込む。
そこはまるで葬式のような雰囲気だった。
丁度私が迎えに行ったのは、カイルがその罪悪感から真実を告白した瞬間だったらしい。
顔面を蒼白させるカイルと、困惑に慌てる殿下。
私は…陛下の騎士であり、不敬を承知で言えば嫡男様もアン様も我が子のように愛する男、チャールズ・ブラウン。
アン様への謀反…そして、その発端である嫡男様の未婚…問題は尽きる事は無い。
嫡男様は、王としての資質は満足なのだが…どうも皇后に対する理想を抱いている。
身分違いの恋をしているらしく、その者以外との結婚を頑なに拒んだ。
そして…嫡男様が結婚をされないせいで継承位第二位の、アン殿下はこうして狙われた。
カイルが身を呈して守った甲斐もなく、記憶を失い瀕死のカイルとの同居。
弟を愛する嫡男殿下は酷く混乱し、陛下は伏せってしまい…語弊を恐れず言えば、今王宮は王族としての機能を全く維持出来ていない。
だが、アン殿下を狙った者は身勝手な嫡男主義の従者だった事だけは不幸中の幸いだ。
アン殿下を溺愛していた嫡男殿下がアン殿下の暗殺を命ずる事など無いと分かりきってはいたが、犯人を見つけるまではアン殿下を王宮には戻せなかった。
だが犯人が捕らえられた今、アン殿下は記憶を失っていても王宮に戻す事が出来る。
アン殿下を心配して、使い物にならない嫡男殿下と陛下に元に戻ってもらわなければこの国はお終いである。
葬式状態の二人をなんとか王家の馬車に乗せ、数時間を掛け王宮へと向かった。
「…いきなり王家の次男だと言われて驚いたでしょう、アン殿下。今までの無礼をお許しください。あなたに謀反を働いた者を見つけるまでは、身分を隠して頂く必要がありましたので…」
カイルの横でぽつんと小さくなるアン殿下は、今までの気高く気品のある振る舞いからは考えらない。
「…驚いたなんてものじゃありません…だって、騎士様だと思ってたカイルさんも、僕に真実を告げてからは謝罪の言葉意外何も言ってくれなくなってしまって…」
大男のカイルは黙ったまま、大きな身体を縮こませ罪悪感からか表情を濁らせる。
「カイルは殿下が生まれる前からの騎士ですからね…殿下を平民同然に扱うひと月に申し訳なく思うのは当たり前でしょう」
「っ…でも!そんなの変です、命懸けで守ってくれたカイルさんが僕に申し訳なく思う事なんて何も……」
他の者たちなら、こんな殿下を見たら別人のようだと言うだろう。だが、私は知っていた、気高く高飛車な性格は王族としての振る舞いであって、元々の性格は優しくおおらかだ。
「アン殿下……食事作法のご記憶は?」
「……ブラウンさん、なんとなく……多分」
無いのは過去に関する記憶のようで、教育や良識に対してはちゃんと持ち合わせており、馬車の乗り降りも美しい所作を見せた。
今のアン殿下は、その麗しさと王家としての美しい所作を兼ね備えた……穏やかな両家の坊やのようだ。
「でしたら、従者に給仕させても大丈夫ですね、着いたらすぐに食事に致しましょう」
私としては、恋愛結婚を望む嫡男様でも、美貌と穏やかさを備えた今のアン殿下でも……どちらも王位には相応しいと思っている。
だが問題は……カイルという鉄壁の盾。
私は陛下に対し私生活の束縛をする事などまずなかった。だが…この男は昔からやたらと、殿下の意思を分かったように口を聞く。
「ブラウン殿……アン殿下は記憶を失って大変戸惑っておられますので、食事は私と二人で結構です」
罪悪感で灰のようになっていたかと思えば、従者に給仕をさせるという私の提案を一蹴した。
早く嫡男様には世継ぎをこさえて頂いて、アン殿下には貴族との縁談を進めたいというのが私の本音だ。
だが、殿下の事となるとすぐにカイルが割って入り…挙句こうして食事の相手ですら選ぼうとする。
「……殿下」
私がチラリと殿下に目をやると、カイルさんがそう言うなら二人の方がいいかな…と仰った。
これは昔からだ、カイルが言うと、殿下もそうしようと賛同する。無意識下で行われているのかもしれないが…私にとっても国の今後にとっても、この男の過保護さは鬱陶しい。
アン殿下には身の安全の為にも早く婚姻を結んで欲しいのに。
「殿下がそう仰るなら、食事はお二人で」
私は気に食わないのを悟られないように笑った。
「殿下、本当に…事情があるとは言え、あなたにした言葉遣いや態度…全てを謝罪致します。一生を掛けて償いますから、王宮では何でも私に申して下さいね」
「…うう、謝らないでよカイルさん。それに…一生って…そんなに重たい罪じゃないよ?」
「いえ、あなたに礼儀を欠くのは死罪も同然ですよ」
私からも護るように…カイルの身体は常に殿下の方へ向いている。
「カイル、それはお前にとって罰にならないでしょう。まぁ命じたのは私なのでもちろん、殿下がお許しになるのなら放免になるでしょうが」
一生殿下を、近くでお守りする……その言葉の重みを殿下は知らない。私はつい恐怖を覚える程の…強い執着。
「ブラウン殿……罰を与えられても私は構いませんよ。そうですね…無休で殿下の食事を作るとか…一生」
そう呟くカイルの口角が上がるのを私は見逃さなかった。
好きな人がいるからと結婚しない嫡男、結婚の意思はあれど鉄壁の騎士に守られた次男……。
王位の継承に当たる私の多難は終わりを見せることはない。
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