M性に目覚めた若かりしころの思い出

kazu106

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目覚めと、勇気

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なぜ女子たちが男子たちに暴力を行っていたのか、理由は知る術もない。
ただ、女子3人が男子4人を圧倒していたことは、事実である。
人数比で劣る女子の方が、男子を完全に支配していたのである。

しかも戦うどころか、その前から男子が女子に屈服していたのである。
戦う前からすでにその構図が構築されていたということは、その前に既に叩きのめされていたことになる。

当時の私には、通常では考えられなかった世界が、目の前で現実として起きたことが衝撃であった。

当然ながらその夜は、試験勉強など、まったく手につかなかった。
私は興奮が冷めやらず、それまで経験することもなかった異質な性的な欲望を、感じざるを得なかった。
眠ることなく一晩中、想像を膨らませてしまったのは、言うまでもないことである。

男子4人は翌日以降、しばらく大人しかったのを、よく覚えている。
女子3人も見かけたが、特に変わった様子はなく、他の不良女子たちとともにたむろしていた。
何が起こったのか、私と当人たち以外は、おそらく誰も知らない。

ただ、私の中では、この日を境に大きな変化が生じていた。

例の女子3人も含め、不良女子たちとわたしとの距離が近づいたとき、背筋に緊張感が走るようになったのである。
ひとつ間違えば、自分も彼女たちから、あの日の男子たちのように屈辱感を味わされるかもしれない。
最初はそれが、恐怖感だったように思う。
しかし、日々あの場面を思い出す度に、次第にそれが、期待感へと移っていたように思う。

いつの間にか想像の世界の中で、あの男子4人に自分を同化している自分に、気が付いていたのであった。
あの場面こそ、私のM性の原点であったことは、間違いないものと思っている。

強い女性を崇拝する気持ちは、この日から、いま現在にまで至っているのである。

月日が経ち、しばらくすると例の男子4人は、再び徐々に威勢を張りだしていた。
あの日の出来事で傷めていた心も、少しは癒えたのだろうか。
私にも再びお金をせびるようになっていた。

が、私は、それ以前のわたしとは違っていた。

再び威圧感を与えてきた男子たち。
しかし、彼らの声にはどこか以前ほどの力強さが感じられない。
私は彼らの目をまっすぐ見据えた。
以前の自分ならすぐに目をそらしていたはずなのに、いまはむしろその怯えた表情に小さな余裕さえ感じている。
「どうした?やれば?」
その言葉が自分の口から出た瞬間、自分でも信じられなかった。
しかし、それに返してきたのは、彼らの沈黙だった。
お互いに視線を交わしたあと、彼らは何も言わずに背を向けて歩き去った。

あの日、彼女たちが教えてくれたこと。それは、恐れないことで手に入る「力」だったのかもしれない。
彼女らが、わたしのM性を目覚めさせてくれたことは、間違いない。
それと同時に、社会で生きて行くための勇気を、見せ付けてくれたようにも思っている。

彼女らと話すことは、在学中は一切なかった。
いったい今頃、どこで何をしているのだろうか……。
人生が終わる前に、一度はお会いしてみたいと、願うものである。

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