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第3章
自覚
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彼女の拳が止んだのは、しばらく経ってからだった。
ぼくは地面に仰向けになったまま、荒く呼吸を繰り返していた。
彼女はぼくの胸倉を掴み、起き上がらせて、顔をぐっと近づける。
「……お前、○○高校のおぼっちゃんだろ? いつでも潰せるんだよ、お前なんか」
その言葉と同時に、膝が鋭くぼくの下腹部を打ち抜いた。
「っ……ぐ、あああっ!!」
これは、さすがに耐えられなかった。
全身に激痛が走り、声にならない声を上げながら、ぼくはその場に崩れ落ちた。
呼吸もままならず、両手で股間をかばうようにうずくまる。
だが彼女は、それすらも容赦しなかった。
「フッ……ダッサ。情けな」
踵で背中を踏みつけられ、地面に這いつくばる。
そして、彼女の声が静かに響いた。
「許してほしかったら、土下座しろよ」
ぼくは、無言で頭を下げた。
屈辱や悔しさというより、それが自然な流れのように思えた。
彼女はぼくの後頭部を、靴の底で押さえつけながら言った。
「女にのされて、情けねぇよなぁ、黙っててほしけりゃ、金出しな」
ぼくはすごすごと、財布を差し出した。
彼女は中を覗いてから、数枚の紙幣を無言で抜き取る。
「お前、マジで情けねぇ……、それでも男かよ!」
そして、踵を返すようにして、公園をあとにした。
ぼくは、痛みの残る体を起こすこともできず、ベンチに座ったまま夜の空を見上げていた。
情けない。
男として、最低だ。
そう思うのと裏腹に、心のどこかで、確かな「充足感」があった。
見下され、支配され、無力を思い知らされたことに、
恥ずかしさとともに、なぜか言い知れぬ爽快感を感じていたのだ。
あの夜が、ぼくにとっての「始まり」だった。
痛みと快感、恐怖と安堵、屈辱と悦び。
すべてが混じり合った、あの一夜。
それが、ぼくが“M”としての自覚を深めた、鮮烈な記憶だった。
ぼくは地面に仰向けになったまま、荒く呼吸を繰り返していた。
彼女はぼくの胸倉を掴み、起き上がらせて、顔をぐっと近づける。
「……お前、○○高校のおぼっちゃんだろ? いつでも潰せるんだよ、お前なんか」
その言葉と同時に、膝が鋭くぼくの下腹部を打ち抜いた。
「っ……ぐ、あああっ!!」
これは、さすがに耐えられなかった。
全身に激痛が走り、声にならない声を上げながら、ぼくはその場に崩れ落ちた。
呼吸もままならず、両手で股間をかばうようにうずくまる。
だが彼女は、それすらも容赦しなかった。
「フッ……ダッサ。情けな」
踵で背中を踏みつけられ、地面に這いつくばる。
そして、彼女の声が静かに響いた。
「許してほしかったら、土下座しろよ」
ぼくは、無言で頭を下げた。
屈辱や悔しさというより、それが自然な流れのように思えた。
彼女はぼくの後頭部を、靴の底で押さえつけながら言った。
「女にのされて、情けねぇよなぁ、黙っててほしけりゃ、金出しな」
ぼくはすごすごと、財布を差し出した。
彼女は中を覗いてから、数枚の紙幣を無言で抜き取る。
「お前、マジで情けねぇ……、それでも男かよ!」
そして、踵を返すようにして、公園をあとにした。
ぼくは、痛みの残る体を起こすこともできず、ベンチに座ったまま夜の空を見上げていた。
情けない。
男として、最低だ。
そう思うのと裏腹に、心のどこかで、確かな「充足感」があった。
見下され、支配され、無力を思い知らされたことに、
恥ずかしさとともに、なぜか言い知れぬ爽快感を感じていたのだ。
あの夜が、ぼくにとっての「始まり」だった。
痛みと快感、恐怖と安堵、屈辱と悦び。
すべてが混じり合った、あの一夜。
それが、ぼくが“M”としての自覚を深めた、鮮烈な記憶だった。
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