銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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第二章

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「くしゅんっ…」
「フィー、寒いのか?早く宿に入ろう」
「うん…」

 ロロとリアムの馬を宿の使用人に預けると、リアムが僕の腰を抱いて宿の玄関をくぐった。すぐに宿の主人が出てきて一番豪華な部屋に案内される。
 僕は部屋に入るなり窓辺に走って外を眺めた。後ろでリアムと主人が何か話していたが、外の景色に夢中な僕の耳には届かない。
 そのうち主人は出ていったのか、リアムが傍にきた。

「フィー、もう寒くはないか?」
「大丈夫だよ。それよりも見て!綺麗だなぁ」
「ああ、雪が降ってきたのか。フィーは初めて見るのか?」
「うん、なんか不思議…。ね、後で外に出てもいい?」
「風邪引くぞ」
「だって…触ってみたい!」
「ふっ、わかった。夕餉を食べたらな」
「うんっ、楽しみ…」

 窓のガラスに手をついて雪を眺め続ける僕の背中から、リアムが僕を抱きしめてくる。
 僕は肩を揺らして、リアムを振り仰いだ。

「な、なに…?リアムも寒いの?」
「いや?ただこうしたかっただけ」
「あ…僕、リアムの城で寝込んでたから、髪の毛…洗ってない…よ」

 僕が匂いを気にして俯いたというのに、リアムが僕の髪に鼻先を埋めて匂いを嗅ぎ出した。

「ちょっと!洗ってないって言ってるのに…っ」
「大丈夫、良い匂いがする。フィーは全身から甘い匂いがするな。何かつけてる?」
「もうっ、離してっ!何もつけてないしたぶん汗の匂いだからっ!先にお風呂に入ってくる!」
「じゃあ俺も一緒に」
「だめ!リアムは僕が出たら入って。…あ、それとも先に入る?」
「…いや、フィーの後でいい」
「そう?じゃあ先に入らせてもらうね」

 この宿は高級な宿だから着替えも身体を拭く物も風呂場に用意されている。
 僕はマントを脱いで棚にかけると、僕を見つめてくるリアムの視線から逃れるように隣にある風呂場へと入った。


 リアムの城を出て再び旅を始めた二日後の夕方に、デネス大国の国境を越えた。そして今、国境からほど近い街の、一番高級な宿で休んでいる。
 国境に入る直前に、リアムから「これはフィーのだ」と通行証を渡された。掌に乗る金色に輝く通行証の表にはバイロン国の紋章が、裏には『フィル・ルクス・バイロン』と名前が書かれてあった。
 僕が驚いてリアムを見上げると、リアムは甘く笑って僕の頬を撫でた。

「これって…!」
「ほら、こちらは俺の通行証だ。『リアム・ルクス・バイロン』と書いてある。そしてそれがフィーの通行証。いい名前だと思わないか?俺の身内としての証明書にもなる。勝手に作って怒ってるか?」
「…ううん。嬉しい…ありがとう…」

 なんだろう。よくわからないけど、叫び出したいような変な気持ち。きっと僕という存在がはっきりとした気がして、感動したんだ。
 僕は通行証を胸に当てて、しばらくは初めての気持ちに震えていた。
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