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少し急になった斜面を登り目の前が開けた瞬間、轟音と共に水しぶきが飛んできた。崖の向こう側に大きな滝が見える。
イヴァル帝国の王都の周りには石でできた高い壁がある。その壁ほどもある高さから大量の水が流れ落ちている様は、圧巻だ。
「すごい…」
僕は繋いでいた手を離して、滝に一歩近づいた。
途端に後ろから抱きとめられる。
「危ないぞ」
「すごい…、ねぇすごいよ!」
「ああ。俺もこんなに大きな滝は初めて見た」
「リアムは他の滝を見たことがあるの?」
「バイロンにも幾つかあるからな。また連れて行ってやる」
「うんっ」
僕は嬉しくて興奮して、振り返るなり抱きついた。腕に力を込めるとリアムも強く抱きしめてくれる。
初めて目にした景色に感動して、幸せに満たされて嬉しくて、また涙が溢れた。
「フィー、泣いてるのか?」
「うん…っ」
「どうした?」
「僕…辛くても泣くの我慢してたのに…幸せだとすぐに涙が出てくる…」
「そうか。いいぞ、いつでも泣け。ただし俺の前だけな」
「うん…」
幸せな気持ちになるのはリアムが傍にいる時だから、リアムの前でしか泣かないよ。
そう言おうとした時、またもや胸が痛くなった。痛みで思わず顔が歪む。
僕は顔を見られたくなくて、リアムの胸に額を押しつけた。
「おまえは可愛いな。もっと甘えろよ」
「ん…」
リアムは僕の不調に気づいていない。気づかれてはいけない。心配をかけさせてしまう。
それにしてもこれはどういうことだろう。僕は何か胸の病気なのだろうか?でも僕は姉上と違って健康だ。今まで毒を喰らって寝込むことはあっても、病気をしたことはなかった。
ツキンツキンと痛む胸を押えて、小さく息を吐く。確実に痛みが長くなっている。まだ今は耐えられるが、耐えられなくなってきたらリアムに相談してみようか。リアムの城に着いたら。
「フィー、もう大丈夫か?」
「ん…大丈夫」
しばらくしてようやく痛みが引いてきた。僕はゆっくりと顔を上げてリアムに微笑む。
リアムが愛おしそうに笑って、僕の瞼にキスをする。
「腫れたな」
「変な顔してる…から見ないで」
「変じゃない。可愛い」
「僕よりきれいなリアムに言われても…」
「ふむ、イヴァル帝国の城にいる者達の目がおかしいと思っていたが、おまえもか?フィーが一番きれいじゃないか」
「…ほんと?」
「本当だ。だから俺は、おまえを誰にも見せたくない。誰もがおまえに目を奪われるからな」
「えー…」
僕は街の中をリアムと並んで歩いていた時のことを思い返す。
僕達はフードを深く被っていた。それでもすれ違う人々はこちらを見てきた。主にリアムの方を。フードで顔が半分隠れていたとしても、リアムは人を惹きつけるオーラがあるから。
一方、小さくて貧相な僕を見る人はいない。いるとしたらリアムの隣にいたからだ。ついでに見てきただけだ。
なのにリアムはいつもきれいだ可愛いと褒めてくれる。そのおかげで全く無かった自信というものが、僕の中に芽生え始めている。
「誰にもきれいと思われなくてもいいけど、リアムがそう思ってくれているなら…嬉しい」
「そうだな。俺もフィーが世界一かっこいいと思ってくれたならそれでいい」
「ふふっ、もちろん思ってるよ」
「おまえは本当に可愛いな。さて滝も見たし俺の城に帰ろう。婚儀を挙げて正式に俺の妻になったら、またゆっくりと旅に来よう」
「うん」
僕が大きく頷くと、リアムが僕を抱き上げた。そしてそのまま山を降り始める。
驚いて歩くと言うけど「下りの方が滑りやすくて危険だ」と離してくれない。
リアムは意外と頑固だ。こうなったら譲らない。
だから僕は諦めて、大人しくリアムの肩に頭を乗せた。
イヴァル帝国の王都の周りには石でできた高い壁がある。その壁ほどもある高さから大量の水が流れ落ちている様は、圧巻だ。
「すごい…」
僕は繋いでいた手を離して、滝に一歩近づいた。
途端に後ろから抱きとめられる。
「危ないぞ」
「すごい…、ねぇすごいよ!」
「ああ。俺もこんなに大きな滝は初めて見た」
「リアムは他の滝を見たことがあるの?」
「バイロンにも幾つかあるからな。また連れて行ってやる」
「うんっ」
僕は嬉しくて興奮して、振り返るなり抱きついた。腕に力を込めるとリアムも強く抱きしめてくれる。
初めて目にした景色に感動して、幸せに満たされて嬉しくて、また涙が溢れた。
「フィー、泣いてるのか?」
「うん…っ」
「どうした?」
「僕…辛くても泣くの我慢してたのに…幸せだとすぐに涙が出てくる…」
「そうか。いいぞ、いつでも泣け。ただし俺の前だけな」
「うん…」
幸せな気持ちになるのはリアムが傍にいる時だから、リアムの前でしか泣かないよ。
そう言おうとした時、またもや胸が痛くなった。痛みで思わず顔が歪む。
僕は顔を見られたくなくて、リアムの胸に額を押しつけた。
「おまえは可愛いな。もっと甘えろよ」
「ん…」
リアムは僕の不調に気づいていない。気づかれてはいけない。心配をかけさせてしまう。
それにしてもこれはどういうことだろう。僕は何か胸の病気なのだろうか?でも僕は姉上と違って健康だ。今まで毒を喰らって寝込むことはあっても、病気をしたことはなかった。
ツキンツキンと痛む胸を押えて、小さく息を吐く。確実に痛みが長くなっている。まだ今は耐えられるが、耐えられなくなってきたらリアムに相談してみようか。リアムの城に着いたら。
「フィー、もう大丈夫か?」
「ん…大丈夫」
しばらくしてようやく痛みが引いてきた。僕はゆっくりと顔を上げてリアムに微笑む。
リアムが愛おしそうに笑って、僕の瞼にキスをする。
「腫れたな」
「変な顔してる…から見ないで」
「変じゃない。可愛い」
「僕よりきれいなリアムに言われても…」
「ふむ、イヴァル帝国の城にいる者達の目がおかしいと思っていたが、おまえもか?フィーが一番きれいじゃないか」
「…ほんと?」
「本当だ。だから俺は、おまえを誰にも見せたくない。誰もがおまえに目を奪われるからな」
「えー…」
僕は街の中をリアムと並んで歩いていた時のことを思い返す。
僕達はフードを深く被っていた。それでもすれ違う人々はこちらを見てきた。主にリアムの方を。フードで顔が半分隠れていたとしても、リアムは人を惹きつけるオーラがあるから。
一方、小さくて貧相な僕を見る人はいない。いるとしたらリアムの隣にいたからだ。ついでに見てきただけだ。
なのにリアムはいつもきれいだ可愛いと褒めてくれる。そのおかげで全く無かった自信というものが、僕の中に芽生え始めている。
「誰にもきれいと思われなくてもいいけど、リアムがそう思ってくれているなら…嬉しい」
「そうだな。俺もフィーが世界一かっこいいと思ってくれたならそれでいい」
「ふふっ、もちろん思ってるよ」
「おまえは本当に可愛いな。さて滝も見たし俺の城に帰ろう。婚儀を挙げて正式に俺の妻になったら、またゆっくりと旅に来よう」
「うん」
僕が大きく頷くと、リアムが僕を抱き上げた。そしてそのまま山を降り始める。
驚いて歩くと言うけど「下りの方が滑りやすくて危険だ」と離してくれない。
リアムは意外と頑固だ。こうなったら譲らない。
だから僕は諦めて、大人しくリアムの肩に頭を乗せた。
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