銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 ラズールが僕の腰に手を回して髪を撫でる。
 昔からラズールに抱きしめられて撫でられると、とても安心した。今も、これからのことを考えて暗く落ちた気持ちが、少しだけ楽になった。

「話とはなんですか?今日はとても疲れたでしょう。もうお休みになられた方がよろしいのでは…」
「うん…疲れた。心も身体も…ボロボロだよ。僕は姉上を助けて死にたかったのに、僕だけが残ってしまった。本当は今すぐにでも死にたいけど…もう死ねなくなってしまった…」

 涙が一つ、ポロリとこぼれ落ちた。
 僕はラズールの上着に顔を押しつけて涙を拭く。

「…俺は、どこまでもあなたについて行きますよ。これから厳しい道を進むあなたを、全力で守ります。だからどうか、俺を頼ってほしい」
「うん…そのつもりだよ」

 ラズールの胸に顔を押しつけたまま、くぐもった声を出す。
 髪を撫でていたラズールの手が耳に触れて、僕はくすぐったくて思わず顔を上げた。

「涙を流す時も、俺の前で…俺の前だけにしてください」
「うん…昔もそうだったね」
「そうでしたね。あなたの泣き顔は本当に可愛らしくて…。今もあの頃と変わりません」
「そんなことない。僕はもう、子供じゃないから…」
「そうですね」

 ラズールが困ったように笑いながら、大きな手で僕の涙をぬぐってくれる。
 僕はラズールの手を掴むと、祈るように両手で包んだ。

「ラズール、お願いがある」
「なんでしょうか」
「ラズールと二人きりの時だけ、フィルでいてもいい?二人きりの時は、フィルでいさせてほしい」
「もちろん、よろしいですよ。俺の前では、本来のあなたでいてください。安心して、楽にすごしていただきたい。では俺からもお願いしてもよろしいですか?」
「ラズールのお願い?珍しいね」
「そうでしたか?…フィル様、俺の前では本来のフィル様でいてください。しかし、俺以外の全ての人の前では、あなたはフェリ様として振舞ってください」
「うん?わかってるよ。だってそう決めたじゃないか」
「…バイロン国の第二王子と会うことがあったとしても、フィルと名乗ってはダメなのですよ」
「あ…。わかっ…て…る…」

 僕は手を落として俯いた。
 そうだ。もし再びリアムに会えたとしても、僕は名乗れない。フェリとして接しなければならない。だけど…もう会うことはないか。僕は城から出ることはないのだから。

「フィル様?」

 名前を呼ばれて顔を上げる。
 ラズールが優しい目で僕を見ている。
 僕はラズールの胸を押して離れると、ベッドに向かった。

「もう寝る…。軽食と飲み物を用意しておいてほしい。起きたら食べるから」
「かしこまりました」
「これからは、おまえ以外は誰もこの部屋に入れないで。大宰相も大臣も、トラビスも、使用人もだ。皆にそう言っておいて」
「はい」

 僕はブーツを脱いでベッドに上がると、ラズールに背を向けてシーツを頭からかぶった。
 すぐにラズールが部屋を出ていき扉が閉まる。鍵がかかる音を聞いて、僕は目を閉じた。
 僕は少し寝ては目を覚ますことを繰り返した。そして翌朝、ひどい頭痛に苛まれて起き上がり、ベッドに座ってぼんやりとしていると、扉の外から怒ってるような足音が響いてきた。
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