銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「もう大丈夫。ありがとう…」

 しばらくしてから鼻声で伝えてラズールから離れる。
 ラズールが僕の頬を撫でた後に、布を濡らしてそっと当てる。

「目が腫れて顔も赤くなってしまいましたね。少し冷やしてから、第二王子の所へ行きましょうか」
「うん…」
 
 濡れた布の冷たさが、火照った頬に気持ちいい。
 僕はラズールにされるがままに顔を拭かれ服を着せられ、手を引かれて部屋に戻り椅子に座らされた。

「本日は、朝餉の後に散策に行かれるのでしょう?良い天気で風が心地よさそうですよ。外で食べれるよう、軽食を持って行きましょうか」
「うん…。ノアの分も作ってくれる?ノアも一緒に食べられたらいいな…」
「きっと大丈夫ですよ。フィル様の好物をたくさん用意しましょうね」 

 僕の前で両膝をつき、僕の両手を握りしめて、小さな子供をあやすように、ラズールが優しく話し続ける。
 イヴァル帝国で、僕が甘えられた唯一の存在のラズール。死ぬ前にリアムに会いたいと、ラズールをイヴァル帝国に置いて離れようとしたけど、今は僕について来てくれてよかったと心底思う。
 死が近づいている僕の恐怖心を、リアムと共にラズールが和らげてくれる。

「そろそろ参りましょう。第二王子が、フィル様のために朝餉を作ったそうですよ」
「…え、リアムが?」
「はい。フィル様のお口に合えばよろしいですが…。そもそも食べられる物なのでしょうかね」
「またそんな意地の悪いことを言う。でもそっか。だから部屋にいなかったんだ…。ふふ、楽しみだね」

 ラズールが立ち上がり、僕の背中を支えて扉に向かう。そして扉を開けながら、すごく不服そうに呟く。

「なんとも腹の立つ。第二王子はあなたをすぐに笑顔にさせることができる…」
「ラズールも、僕をいつも安心させてくれるよ?おまえには感謝してる」
「いえ…あなたは俺の何よりも大切な方ですから、当然です」

 少しだけ、ラズールの表情が柔らかくなる。
 ラズールは、無表情で感情がよくわからないと皆に言われるけど、僕はそれが不思議でたまらなかった。こんなにも不満そうにしたり嬉しそうな顔をするのに、どうしてわからないんだろう?
 ラズールに手を引かれてラズールのことを考えていると、小さな家だからすぐに食堂に着いた。扉は開いていて、僕に気づいたリアムが飛び出してくる。
 僕はラズールの手を離して、両手を広げてリアムを受け止めた。
 二三歩後ろによろけた僕を、リアムが抱きとめる。

「どうしたの?そんなに慌てて」
「おまえこそどうした!泣いてたのかっ?」
「あ…少し…」
「ごめんな。俺が一人にさせたから…。フィーが目覚めるまで傍にいればよかったな」
「ううん、謝らないで。それよりもリアム、料理を作れたんだね。早く食べたい」
「ん、こっちにおいで」

 リアムに手を引かれて椅子に座る。
 机の上に並べられた料理に目を輝かせている僕の隣に、リアムも座った。

 
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