ふれたら消える

明樹

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「お母さん、買い物行ってくるから。昊、何か食べたい物ある?」

 ドアから顔をのぞかせて、お母さんが聞いてくる。

「んー、じゃあプリン買ってきて。青は?」
「…いらない」
「わかったわ。家族分買ってくるから。昊、大人しく寝てるのよ?青も静かにね」
「うん。行ってらっしゃい」

 昊が、お母さんに向かって手を振る。部屋のドアが閉まって、すぐに玄関に鍵がかかる音が聞こえてくる。

「青の好きなアイスも頼めば良かったのに」
「いらない…」

 昊が寝ているベッドのはしに頭を乗せて、小さな声で言う。
 僕の頭上からクスリと笑う気配を感じて、そっと顔を上げた。

「青、来いよ」

 昊がベッドの端に寄って、タオルケットを持ち上げる。
 僕はのそのそと立ち上がると、昊の隣に寝転んだ。

「早くいつもの元気な青に戻って欲しいな」

 昊が僕の背中に手を回して、抱きしめてくれる。
 僕は昊の胸に顔を押し当てて、ここ数日でずいぶんと緩くなった涙腺を、また緩ませた。

「うっ、ずっ…、だっ…て、昊の怪我…あとが残るって…」
「ちょっとだけだよ?それに俺は男だし。これは勲章くんしょうだ」
「でも…昊…|綺麗(きれい》な肌なのに…、ぐす…っ」
「青…青が泣いてると俺も泣きたくなる。俺はさ、青が怪我しなくて良かったって嬉しいんだから。これが逆にさ、青に守られて俺は無傷で、青が怪我してたとしたら、俺は悲しくて死んじゃうかもしれないぜ?」
「えっ?やっ、やだ…っ!」

 あの時の、昊が気を失ってぐったりとしてしまった時の恐怖を思い出して、僕は大声で泣き出した。

「昊が死んじゃうならっ、僕も死ぬ…っ!うわぁーんっ!」
「青…」

 わあわあと泣く僕の背中を、昊が優しく叩く。

「大丈夫。俺は死なない。青を置いて死んだりしないよ…」

 リズムよく背中を叩かれ、心地よい声で名前を呼ばれて、だんだんと気持ちが落ち着いてくる。
 僕はやっと泣き止んで、時々しゃくり上げながら昊に強くしがみついた。

「ふふ…青は可愛いな」
「昊…僕、昊が一番好き。お父さんやお母さんよりも好き」
「俺もだよ、青。誰よりも好き」

 昊の唇が、僕の耳に触れるからドキドキする。
 兄弟なのに変かなぁと思うけど、昊はその辺の女の人よりも綺麗なんだから、しょうがないよなぁとも思う。
 僕は、昊に誰よりも好きと言われたことが嬉しくて、昊の胸から顔を上げると、やっと笑顔を見せた。

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