ふれたら消える

明樹

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 早く涼しい部屋で冷たいものを飲みたいと玄関を開けると、目の前に夏樹がいて驚いた。
 夏樹も一瞬驚いた顔をした後すぐに「よお」と笑う。

「なんで夏樹が家にいんの?」
「今日、塾が終わったら行くっつってただろ?昊こそ、なんで家にいないんだよ。とりあえずおまえが帰って来るまで青と颯人としゃべってたんだよ」
「え?颯人もいんの?」

 下を見ると、確かに見覚えのない靴がある。
 そうか、俺のいない間に青は、颯人と夏樹と過ごしてたのか。じゃあ、篠山のことを突っ込んで聞かれないで済むかも。
 そう都合のいいように解釈して、靴を脱ぎ玄関を上がる。

「夏樹はここで何してたんだ?もう帰るのか?」
「トイレだよ。ところでさ、篠山が来たんだって?」
「…来た。呼んでもないのに家まで来るか?すげー腹立つんだけど」
「まあな。で、どうなったんだ?帰ってくるの、早いじゃん」

 俺は夏樹をつれてリビングに入り、ソファーに座るように言う。そして流し台で手を洗うと、冷蔵庫から冷えた紅茶のペットボトルとグラスを二つ持ってソファーに行く。

「外歩いて喉がかわいてさ。暑い日は外に出たくないのに最悪だ」
「おつかれ、昊」

 夏樹が笑って、グラスに紅茶を注いでくれた。冷えた紅茶を一気に飲んで、大きく息を吐く。
 夏樹もグラスの半分まで飲んで、「それで?」と首を傾けた。

「あー…篠山?あいつヤバイよな。俺が別れるって言ったら、腕で首を押さえつけてきた…てか、そもそも俺はつき合ってるつもりもなかったんだけどな」
「は?首を押さえつけてきたって…あっ、もしかして赤くなってるの、そういうことっ?汗がかゆくてかいたのかと思ってた…」
「…夏樹、青が聞いてきたら痒くてかいたってことにしといて。青には知られたくない」
「知られてもいいんじゃね?青は、おまえのために怒ってくれるよ」
「そうかもしんねぇけど…俺が嫌なんだよ」
「そっか…わかった、言わない」
「ん、さんきゅ」
「それで?他にも何かされた?」
「あー、キスされそうになって、吐きそうなくらい気持ち悪かった」
「ちっ、あいつ最低だなっ」
「だろ?でもたまたま通りがかった隣のクラスの奴が助けてくれたんだ。夏樹知ってる?柊木ってやつ」

 夏樹が腕を組んで目線を上に向ける。そしてすぐに「あっ」と叫んで俺を見た。

「青と同じくらい背が高いやつ! クラスの女子がよく話してるやつ!」
「有名なのか?」
「女子の間ではそうなのかも。モテるみたいだよ?」
「ふーん。でも夏樹もモテるじゃん」
「まあな、俺はいい男だから」
「自分で言う?」
「言う。昊も人気あるだろ」
「俺には誰も寄ってこねぇよ」
「それは昊が仲良い人以外どうでもいいって態度してるから」
「実際どうでもいい」
「あはは!俺はそーゆー昊が大好きだぜ」
「俺も。友達は夏樹だけでいい」
「でも、本当に傍にいてほしいのは青なんだろ」

 俺は夏樹を見つめ、微かに笑った。
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