ふれたら消える

明樹

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 夏樹と二階にあがり、青の部屋の前で足を止め声をかけようと口を開いた。その瞬間、扉が勢いよく向こう側へと引かれる。
 驚く俺の前に慌てた青が顔を出した。

「昊っ!大丈夫だった?」
「…おまえ、よく俺だとわかったな」
「足音が二つ聞こえたから。篠山は?」
「あー、なんか知らないけどすぐに帰ってったぞ。暑い中、歩かされて疲れた」
「そう…」

 明らかに青がホッとした顔をする。
 そんなに心配させてたのかと少し心が痛んで、俺は青の頭に手を乗せた。

「心配したのか?大丈夫、そう簡単に倒れたりしねーよ」
「なんのこと?」
「俺が暑さで倒れないか心配してくれたんだろ?昔に倒れたことあるからさ」

 青の目が大きく開かれ、後ろの夏樹を見て俺を見る。しばらく俺を見て困ったように目を細めた。

「そういえば倒れたことあったね。あの時は心臓が止まるかと思ったよ。今は?大丈夫?」
「ああ。背中に汗かいて気持ち悪ぃけど。じゃあ俺は夏樹と部屋に行くから。颯人、またな」
「うん、今度勉強教えて」
「わかった」

 俺は颯人に手を上げ青から目をらした。
 青は、まだ何か言いたそうにしていたけど、さっさと隣の部屋に入る。夏樹も入ってきて扉が閉まると、ようやく全身から力が抜けた。

「あっちぃ。ごめん、すぐ冷房つける」
「俺は大丈夫だよ。昊は外に出てたから暑いよな。青の部屋にいれば涼しいのに」

 エアコンのスイッチを入れベッドにもたれて床に座りながら、夏樹を睨む。
  夏樹も隣に座って、穏やかに微笑んで俺と目を合わせる。

「嫌だね。篠山のこと聞かれたくねぇし」
「そう?青、すごく心配してたぞ。篠山がおまえに何かしたらどうしようって」
「青が?熱中症の心配じゃなくて?」
「それもあるけど、一番は篠山のことだな」
「ふーん」

 俺はベッドに頭を乗せて天井を見つめた。
 青は篠山と俺のことを気にかけてたのか。兄弟としてだろうけど、俺が篠山とつき合ってたと知って嫌だったのかな。だったらいいな。

「ところで柊木は?その後どうなった?」

 夏樹の声に、視線を下ろして隣を向く。夏樹も柊木に負けないくらいかっこいいよなと心の中で呟く。

「なんか俺と仲良くなりたいってさ。だから連絡先交換した」
「昊と仲良く?ふーん、なんでだろ。篠山みたいじゃなければいいけどな」
「まさか。俺に執着してくんの、篠山くらいだろ」
「そんなことないと思うけど」

 夏樹が小さな声で言い、壁を見つめる。壁の向こうは青の部屋だ。
 俺は壁に虫でもついてるのかと思い、白い壁を凝視ぎょうしした。



 
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