溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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「あいつ…いないと思ったら、こんな所にいたのかよ。でも、何してるんだ?」

 エイルリスは、アレンがよく見える位置へと移動する。少し横に移動しただけで、アレンの顔がよく見えるようになった。
 アレンは笑っていた。誰かと話してるのかと思ったが、一人のようだ。一人で喋って笑ってる。

「こわ…。会った時から変な奴だとわかっていたけど、本当に変な奴だ。あんな姿、他の奴らに見られたら、心配されるか怖がられて病院に送られるぞ」

 そう呟いて気づき、軽く笑う。
 ふっ、俺も一人で喋ってるじゃねぇか。くそが。アレンのせいで、どんどんと調子が狂っていく。
 このまま去ってもよかったが、アレンが何をしているのか気になる。それに、ケントのことも確認したい。
 エイルリスは、アレンに向かって足を出した。しかし、違和感に気づく。
 アレンは笑っている。でも、いつもの穏やかで明るい笑顔じゃない。何かを企んでいるような、悪い顔で笑ってる。あんな顔は初めて見た。
 アレンは優しく善人よりの部類だと思っていたけど、違うかもしれない。少し観察してみても、面白いかも。でもまあ、全くの悪意を持たない善人など、いないからな。アレンも、俺の前では善人ヅラをしているが、悪いことを考えもするだろう。
 エイルリスは、アレンがこちらに気づくよう、わざと草や枝を踏み、音を出して歩いた。
 すぐにアレンが気づいて目をこちらに向け、驚く。そして走ってきて、エイルリスの前で止まった。

「ルリス!どうしてここにいるんだ?」
「おまえこそ何してる?」
「俺は花を探しに来たんだ。先週の野外活動の時に見つけてて」
「花?」
「ふふっ、ほらこれ。きれいだろ?まるでルリスみたいだ」
「ふーん」

 アレンが、後ろに隠していた花を、エイルリスの顔の前に差し出した。
 一つの茎に、小さな花が密集している。そして花の外側から中心に向かって、青から白へとグラデーションになっている。本当にきれいだ。
 エイルリスは、学園に来てから花をゆっくりと見ることはなかった。
 家族と暮らしている時や、老夫婦の家にいる時は、庭や家の中に様々な種類の花があり、穏やかな気持ちで眺めていたものだ。だが、この学園に来てからは、愛でる気にもならなかった。
 だから今、アレンが持っている花をきれいだと思った自分に、驚いている。そして、先ほどアレンは、この花に話しかけていたのかと納得しかけたが、違う。花を見て、あのような笑い方はしない。
 エイルリスは直球で聞く。

「さっき笑ってただろ。その花を見て笑ったのか?」

 アレンは微笑を崩さずに「そうだよ」と答えた。
 だけどエイルリスは気づいた。微かに、本当に微かに、アレンの頬がピクリと震えたことに。他の者では、きっと気づかない。
 アレンは何かを隠してる?何か目的があって、俺に近づいてるのか?
 まあ、どうでもいいか。俺の復讐の邪魔さえしなければ、好きにしろ。
 エイルリスはアレンから距離をとり、毒草を探すために移動する。

「どこ行くの?」
「用事が終わったなら戻れよ」
「ルリスと一緒に戻る!」

 アレンが慌てて、エイルリスの隣に並ぶ。
 エイルリスは、盛大にため息をついた。


 
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