溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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 やっぱりこいつは鬱陶しい。でも、傍にいないと物足りなくも思う。自分の感情が、よくわからない。
 エイルリスは「勝手にしろ」とアレンを見上げ、他の毒草を探して歩いた。

 エイルリスは、数種類の毒草を採取できた。満足だ。
 毒草を寮の自室に持って帰ろうと、森を出て寮に向かう。
 当然のようにアレンもついて来る。

「アレン、俺は寮に戻る。おまえは午後の講義の準備でもしてろよ」
「俺も一緒に行くよ」

 前を向いたまま話すエイルリスの顔を覗き込むようにして、アレンが穏やかに微笑む。

「言っとくけど、違う寮の奴は入れないからな」
「えー、そうだっけ?」
「とぼけるな。それよりもアレン、聞きたいことがある」
「なに?」

 エイルリスは、足を止めてアレンを見た。

「おまえ、ケントにも何かした?」
「してないよ」

 エイルリスの問いに、アレンが間髪入れずに答えた。嘘をついてる様には見えない。もしくは、非常にうまく嘘をつき芝居をしているのか。
 エイルリスは「そうか」とだけ呟き、再び歩き出した。
 アレンが何かしたのだとしても、どうでもいいか。もうユラとケントには関わりたくないし。ユラは、本当に俺のことが憎そうだった。俺に怪しい薬をかけようとして失敗して、大好きなアレンに怒られて震えていたけど、また何かしてきそうだった。だから、俺やアレンを忘れているなら、それでいい。ケントも、ユラのためなら、何かしでかしそうだった。
 俺の周辺で騒ぎを起こしてほしくない。目立ちたくないんだ。誰も近づいてほしくないんだ。でも、一人くらいならいい。アレンは、何度言っても何を言っても俺から離れない。だから仕方がない。傍にいることを許してやる。催眠術の様な力を使えるなら、利用してやる。今のところ、俺に従順だからな。
 アレンは、エイルリスがそんなことを考えてるなど微塵も思っていない様子で、エイルリスを優しい目で見つめていた。


 翌週、ユラとケントの姿が学園から消えた。
 エイルリスは、平静を装っていたが、内心はとても驚き、疑問が渦巻いていた。
 アレンに聞いても、知らないと返ってくるだけだとわかっていたが、一応聞いた。
 すると、驚くことに素直に教えてくれたのだ。
 ユラは、怪しい薬を作っていた。それもたくさん。そのことが寮長にバレた。アレンを怪我させたこともバレた。そして理事長の耳に入り、謹慎を言いつけられた。知ってて黙っていたケントも、謹慎を言いつけられた。

「だから、二人の姿が見えないんだよ。今は実家にいるみたいだよ。もう学園に戻ってこないかもな」

 アレンが他人事のように言う。一応、当事者なのに。
 でもそうか。顔を合わせなくていいのなら、気が楽だ。別に二人のことは、何とも思っていない。でも、顔を合わせた拍子に、関わりがあったことを思い出されたら面倒くさいと思っていたのだ。
 エイルリスは「ふーん」と答えると、売店で買ったパンを手に、人の来ない校舎裏のベンチへと向かった。
 当然のようにアレンも来た。 
 エイルリスは、小さく息を吐いてアレンを見たが、以前のように追い払うことはしなかった。
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