溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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 エイルリスは、時間をかけてブルースター寮の周りを一周した。そして大きなため息をつく。
 ばったりアレンと会えるかもしれないと期待していただけに、落胆が激しい。
 やはりアレンは寮にいないのかと肩を落とした。
 アレンはエイルリスのことを忘れている。だから、アレンに会って知らない人を見る目で見られるのが怖くて、講義に出なかったのだけど、今はそのことを後悔している。会える時に会いに行けばよかった。今すぐ会えないとわかると、会いたくて堪らなく寂しい。
 そんなことを考えて歩いていたら、ローズマリー寮の前に来ていた。
 エイルリスは、ローズマリー寮を見上げた。
 ここも、人の気配が少ない。数人は残っているようだが、ほとんどの生徒が家に帰るか旅行に行ってるようだ。
 エイルリスは顔を戻して歩き出した。
 ローズマリー寮には用はない。だから寮の方を見もせずに通り過ぎようとした時、入口から見覚えのある人物が出てきて歩みを止めた。
 ユラだ。久しぶりに会った。
 確かユラは、アレンによって記憶を操作されているから、エイルリスのことを覚えていない。
 だけど、エイルリスはユラと話しがしたいと思っていた。冬季休みが終われば、ユラを訪ねようと思っていた。だからここで会えたことは好都合だ。
 夏季休みの前に、ユラは謹慎になっていたはずだ。アレンの話では、もう戻って来ないかもということだったけど、戻って来てたのか。ちょうどよかった。聞きたいことがある。
 エイルリスは、道を塞ぐようにしてユラの前に出た。
 ユラが足を止め、エイルリスを見て驚く。

「え?なに…」
「少しいいか?聞きたいことがある」
「僕に?君とは初めて話すけど…」
「まあ…そうだな」

 エイルリスは心の中で舌を打つ。
 アレンが記憶操作の術をかけたせいで、説明しずらい。めんどくせぇ。

「人に聞かれたくない話がある。それにここは寒いし。ローズマリー寮に入ってもいいか?」
「はあ…。まあいいけど」

 ユラがものすごく警戒している。当然だ。でも、警戒していたけど、エイルリスを寮の中に入れてくれた。
 ルクス学園の四つの寮全てに、入ってすぐの場所に、歓談ができるよう、幾つかのソファーと机がある。
 その内の一つに、エイルリスとユラは、向かい合って座った。
 周りに誰もいないから、遠慮なく話せる。
 フォラスとの決着をつけた場所で、アンバーに翼を白く戻してもらった日、エイルリスは寮に戻る途中で、足元で揺れる草花を見て、ユラのことを思い出した。ユラが怪しげな薬を作っていたことも。
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