102 / 112
10
しおりを挟む
「ここで何してるの?」
「あ…」
目の前で立ち止まった人物を見上げて、エイルリスは固まった。
黒髪が風に揺れ、インディゴブルーの瞳がいつもより濃く見えて、きれいだ。
「アレン…」
「俺のこと知ってるの?君は…ええっと」
「…エイルリスだ」
「エイルリスくんかぁ。同じ学年?」
「そうだ」
エイルリスは涙が出そうになり、慌てて俯いて目を瞬かせた。
今泣いたらヤバい奴だろ。冷静に…落ち着け。
「どうしたの?」とアレンがしゃがんでエイルリスの顔を覗き込んできた。
エイルリスは、ゆっくりと顔を上げる。アレンと目が合う。胸が苦しくなってくる。
ああ、いつもの優しい顔だ。
アレンは、エイルリス以外の人にも、笑顔で穏やかに接する。でも、作ったような笑顔だと、エイルリスはいつも思っていた。
今、エイルリスに向けられてる笑顔は、作った笑顔じゃない。記憶がなくなる前と同じ、愛おしさが混じった優しい笑顔だ。
エイルリスは、思わず手を伸ばして、アレンの頬に触れた。
「なんで…そんな顔…」
「…ごめん。何言ってるかわかんないや。でも、どうして泣きそうな顔してるの?辛いことがあった?」
「あっ…た」
「そっか。俺でよかったら話を聞くよ。俺、君ともっと話したい」
アレンが、エイルリスの手を掴み、手の甲を撫でた。
いきなり頬に触れても嫌がらない。そして、壊れ物に触れるように優しくエイルリスの手を撫でる。
なんで、そんなに優しくする?もしかして、思い出してはいないけど、無意識に動いてるのか?心の奥には、俺への気持ちが残ってるから?
もっと触れたいし触れてほしいと願っていると、アレンが立ち上がり、エイルリスも立たせてくれた。
エイルリスは、そっとズボンの上から瓶に触れた。
ここでアレンに会えてよかった。門とは違う方向から現れたけど、きっと飛んで来たのだろう。
あのまま、自室に戻らずにここへ来てよかった。アレンに会えた。
さっそくアレンを俺の部屋に誘い、これを飲ませる。黙って飲ませることになるけど、怪しい薬だけど、これに頼るしかない。
ごめんなアレン…。もし毒になるようだったら、俺が治してやるから。ああ、でも、アレンが俺のことを好きではないなら、治療できない。アレンは、好きな人の体液でしか傷を治せないのだから。
でも、迷ってる時間はない。
エイルリスは「俺の部屋で話さないか?」と言って、アレンを見つめた。
アレンが喜んで頷く。
「行く!君はどこの寮?俺はブルースター寮なんだ」
「ポインセチアだ」
「冬のポインセチアか。俺は夏のブルースターだよ。ローズマリーは春でオキザリスは秋。知ってた?」
「なんとなく」
「ふふっ、じゃあ行こうか」
「ついて来て」
「わかった」
エイルリスが歩き出すと、すぐ後ろをアレンがついて来た。
「あ…」
目の前で立ち止まった人物を見上げて、エイルリスは固まった。
黒髪が風に揺れ、インディゴブルーの瞳がいつもより濃く見えて、きれいだ。
「アレン…」
「俺のこと知ってるの?君は…ええっと」
「…エイルリスだ」
「エイルリスくんかぁ。同じ学年?」
「そうだ」
エイルリスは涙が出そうになり、慌てて俯いて目を瞬かせた。
今泣いたらヤバい奴だろ。冷静に…落ち着け。
「どうしたの?」とアレンがしゃがんでエイルリスの顔を覗き込んできた。
エイルリスは、ゆっくりと顔を上げる。アレンと目が合う。胸が苦しくなってくる。
ああ、いつもの優しい顔だ。
アレンは、エイルリス以外の人にも、笑顔で穏やかに接する。でも、作ったような笑顔だと、エイルリスはいつも思っていた。
今、エイルリスに向けられてる笑顔は、作った笑顔じゃない。記憶がなくなる前と同じ、愛おしさが混じった優しい笑顔だ。
エイルリスは、思わず手を伸ばして、アレンの頬に触れた。
「なんで…そんな顔…」
「…ごめん。何言ってるかわかんないや。でも、どうして泣きそうな顔してるの?辛いことがあった?」
「あっ…た」
「そっか。俺でよかったら話を聞くよ。俺、君ともっと話したい」
アレンが、エイルリスの手を掴み、手の甲を撫でた。
いきなり頬に触れても嫌がらない。そして、壊れ物に触れるように優しくエイルリスの手を撫でる。
なんで、そんなに優しくする?もしかして、思い出してはいないけど、無意識に動いてるのか?心の奥には、俺への気持ちが残ってるから?
もっと触れたいし触れてほしいと願っていると、アレンが立ち上がり、エイルリスも立たせてくれた。
エイルリスは、そっとズボンの上から瓶に触れた。
ここでアレンに会えてよかった。門とは違う方向から現れたけど、きっと飛んで来たのだろう。
あのまま、自室に戻らずにここへ来てよかった。アレンに会えた。
さっそくアレンを俺の部屋に誘い、これを飲ませる。黙って飲ませることになるけど、怪しい薬だけど、これに頼るしかない。
ごめんなアレン…。もし毒になるようだったら、俺が治してやるから。ああ、でも、アレンが俺のことを好きではないなら、治療できない。アレンは、好きな人の体液でしか傷を治せないのだから。
でも、迷ってる時間はない。
エイルリスは「俺の部屋で話さないか?」と言って、アレンを見つめた。
アレンが喜んで頷く。
「行く!君はどこの寮?俺はブルースター寮なんだ」
「ポインセチアだ」
「冬のポインセチアか。俺は夏のブルースターだよ。ローズマリーは春でオキザリスは秋。知ってた?」
「なんとなく」
「ふふっ、じゃあ行こうか」
「ついて来て」
「わかった」
エイルリスが歩き出すと、すぐ後ろをアレンがついて来た。
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
光と瘴気の境界で
天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。
彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。
目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず…
アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、
彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。
古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。
魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。
ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。
復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。
篠雨
BL
予言の魔王として闇に閉ざされた屋敷に隔離されていたノアール。孤独な日々の中、彼は唯一の光であった少年セレを、手元に鎖で繋ぎ留めていた。
3年後、鎖を解かれ王城に連れ去られたセレは、光の勇者としてノアールの前に戻ってきた。それは、ノアールの罪を裁く、滅却の剣。
ノアールが死を受け入れる中、勇者セレが選んだのは、王城の命令に背き、彼を殺さずに再び鎖で繋ぎ直すという、最も歪んだ復讐だった。
「お前は俺の獲物だ。誰にも殺させないし、絶対に離してなんかやらない」
孤独と憎悪に囚われた勇者は、魔王を「復讐の道具」として秘密裏に支配下に置く。しかし、制御不能な力を持つ勇者を恐れた王城は、ついに二人を排除するための罠を仕掛ける。
歪んだ愛憎と贖罪が絡み合う、光と闇の立場が逆転した物語――彼らの運命は、どこへ向かうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる