溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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アンバーの記録簿

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 エイルリスとアレンが消えてから、どれくらいの時が経っただろうか。彼らと離れた月日は、今まで生きてきた年数を思うと、ほんの数年のことなのに、ひどく長かった気がする。
 アンバーは、ふふ…と思わず笑みを漏らした。
 エイルリスとアレンのことを、忘れたことはない。だけど、いつも考えてはいない。今、思い出したのは、懐かしい街に来たからだ。
 アンバーは、八年ぶりに、ルクス学園近くの街に来た。
 今回ここに来たのは、学園を懐かしんだからではない。この街で、悪魔が人を殺す事件があったからだ。しかも一人や二人ではなく、十人は殺している。部下の天使に調べさせ、犯人の目星がついたから来た。
 普段なら、犯人確保も部下にやらせるのだが、犯人が見知った悪魔だったから、アンバーが直接来た。犯人の悪魔の居場所は、まだ突き止めていない。でも、必ずこの街のどこかに潜んでいる。
 アンバーは、肩を揉みながら息を吐いた。

「ばったり会わないかなぁ。歩き回ると疲れるんだよな。歳だから」

 文句を言いながらも注意深く周囲を見ている。怪しい気配も探っている。必ず見つけなければならない。
 この街の警備隊も犯人探しをしているようだが、人間の手に負えるものではない。被害者が増えるだけだ。人間には大人しくしていてもらいたい。

「でも、かなり大人数の警備隊が動いているから、犯人の居場所を見つけるくらいの役には立つかも」

 そう呟いた端から、目の前を数人の警備隊が横切った。ぞろぞろと横の細い路地に入っていく。
 アンバーも大通りをはずれて、距離を取りながら警備隊の後をつけた。
 人の中に紛れ込んでいるかもしれないと、人通りの多い大通りを歩いていたが、やっぱり悪魔は悪魔らしく、暗い路地にいるかもしれないと思い直した。
 警備隊が一列になって進んでいく。時おり足を止めて、怪しい場所を見ている。怪しい人物を見かけては、声をかけている。
 建物の陰から様子を見ていたアンバーは、少し苛立ち、ため息をついた。

「違う。そいつじゃない。昼間っから酒を飲んでるただの酔っ払いじゃないか!悪魔の気配もないし。あいつら、見当違いの場所ばかり調べて!やっぱり人間は役に立たないな。自分で調べた方が早い」

 アンバーは、警備隊の向こう側へと通り抜けたかったが、今警備隊の中へ突っ込んでいったら、不審者だと勘違いされて調べられそうだ。そんなことになったらとても面倒だし、不敬を働いた彼らを許せなくなる。
 違う路地に行こうと、来た道を戻り大通りに出ようとして、人にぶつかった。

「あっ、申し訳な…」
「わあっ、すいませんっ……あ」

 謝ろうとして、相手の顔を見て固まった。
 見知った悪魔だった。
 
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