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二人が来たことで、その場は鎮圧するかと思って安堵していた…
ーが、リーゼの胸元の痕に気が付いたウィルフレッドが大爆発。暴れるなんて可愛らしい言葉で言い表せない程の状態に陥り、シンとカナンを含めた騎士数十人掛りで必死に抑えつけるが、我を忘れたウィルフレッドに敵う訳もなく、ことごとく玉砕。負傷者が出る中、シンが叫んだ。
「お嬢さん!!頼む!!この状況を収められるのはあんただけだ!!」
「え!?」
「これ以上は僕も限界!!お願い!!」
「えぇぇ……」
リーゼが尻込みしてしまうほど、今のウィルフレッドは我を失っている。その状態で、自分を認識してくれるか疑わしいが、これ以上負傷者が出るのを黙って見ていられない。
当事者であるロドルフはウィルフレッドの殺気にやられ、気を失ってしまい既に意識はない。この状態では逃げることもできない。
リーゼは意を決したように顔をあげると、シンが抑えつけているウィルフレッドの前へ出た。
直視すればその恐ろしさが、殺気がよく分かる。けど、これはすべてリーゼの為のもの。
リーゼはウィルフレッドの顔を優しく包むと、自分の顔を近づけ唇を合わせた。その瞬間、ウィルフレッドから力が抜けた。
「リーゼ……?」
「ウィル様、落ち着いてください。私は無事です」
優しく微笑むと、大きな腕に抱きしめられた。
「遅くなってすまない。怖い思いをさせていまった」
「大丈夫ですよ。カナンが来てくれました」
ウィルフレッドの声はとても弱々しく、安心させるようにリーゼも大きな背中に手を回して抱きしめ返した。
耳元で聞く愛する人の声がこれほどまでに安心するとは思わなかった…
気付くと、リーゼの頬を涙が伝っている。
「あ、れ…?」
頭では大丈夫だと思っていても、心は大丈夫じゃなかったらしい。不意の涙に自分でも驚いているが、それ以上にウィルフレッドの悲痛な表情が胸に刺さる。
「気にしないで」と言いたいが、言葉が出てこない。ウィルフレッドは黙って力強く抱きしてくれる。
不器用なウィルフレッドは気の利いた言葉が出てこず、抱きしめる事しかできないでいたのだ。そんな自分が不甲斐なくて恰好悪くて、リーゼに見せる顔がないと…
そんな時、耳に聞こえてきたのはシンとカナンの会話。
「お嬢さんが無事だったから良かったものの…お前、何してんの?」
「弁解の余地もありません」
万が一の為に置いておいたのにも関わらず、こんな痕まで付けさせる事態になったことに怒っているのだろう。
(当然と言えば当然だ)
主従関係というのは信頼関係が重要だ。このような事態になれば、それは信頼問題に関わってくる。信頼して預けた俺やシンの期待を裏切った事にもなる。
「今回の件は私の落ち度。どのような罰も受ける覚悟はできております」
頭を深々と下げて謝罪するカナン。ウィルフレッドとしては腹立たしさはあるが、結果的に無事にリーゼを腕の中へ戻せたのだから、そこまでの罰を与えようとは思っていない。
「どれだけ痛めつけられても構いません!!リーゼ様が受けた傷に比べたら何てことありません!!」
力強く言い切った。
先ほどまで泣いていたリーゼも、不安そうにカナンを見ている。シンは黙ったまま、カナンを睨みつけていたが、暫くすると大きな溜息が聞こえた。
「お前さ、自分を良く見せようとすることに関しては天才だよね」
呆れるように言うが、その真意が見えない。
「先に言っとくけど、僕はお前に罰は与えない」
「「は!?」」
シンの言葉にカナンだけではなく、ウィルフレッドも声をあげた。
「ちょっと待て、それでは上に立つ人間としては失格だ。どれだけ可愛い部下であろうと、間違ったことをしたら罰するのは当然だ」
「そうです!!」
ウィルフレッドに同調するように、カナンが言葉を重ねてきた。
「はぁぁ~…みんな外見に騙されちゃ駄目だよ」
シンは面倒臭いと言わんばかりに、頭を掻いている。
「こいつ、見た感じドSに見えるだろうけど、根っからのドM体質なんだよ」
なんかよく分からない言葉が聞こえて、ウィルフレッドとリーゼは困惑した表情を見せている。
「だから僕からの罰は、こいつにとってはご褒美みたいなものになっちゃうの。…って言うかお前、まさかとは思うけど、わざと遅れて来たんじゃないよね?」
ギロッと睨みつけられたカナンは、顔を俯かせ目を泳がせている。これは肯定していると言っているようなもの。
その瞬間パーン!!と物凄い音と共に、カナンが吹き飛んだ。どうやら、シンが殴り飛ばしたらしい。
「…お前さ。前にも言ったよね?仕事に性癖を挟むなって」
「す、すみません…」
「そんな顔じゃ説得力もないけど?」
乱暴に髪を掴まれ、無理やり顔を上げさせられたカナンの頬は真赤に腫れているが、その表情は恍惚していて鼻息が荒々しい…
シンは「チッ」と小さく舌打ちすると、カナンの髪を掴んだまま立ち上がった。
「お嬢さんごめんよ。今回の不始末は僕のせいだ。僕が責任を持って、こいつの躾をし直してくる」
それだけ言うとシンは目を輝かせているカナンと一緒に、気を失っているロドルフを連れて出て行ってしまった。
その際に「人払いはしとくよ」と一言残して…
ーが、リーゼの胸元の痕に気が付いたウィルフレッドが大爆発。暴れるなんて可愛らしい言葉で言い表せない程の状態に陥り、シンとカナンを含めた騎士数十人掛りで必死に抑えつけるが、我を忘れたウィルフレッドに敵う訳もなく、ことごとく玉砕。負傷者が出る中、シンが叫んだ。
「お嬢さん!!頼む!!この状況を収められるのはあんただけだ!!」
「え!?」
「これ以上は僕も限界!!お願い!!」
「えぇぇ……」
リーゼが尻込みしてしまうほど、今のウィルフレッドは我を失っている。その状態で、自分を認識してくれるか疑わしいが、これ以上負傷者が出るのを黙って見ていられない。
当事者であるロドルフはウィルフレッドの殺気にやられ、気を失ってしまい既に意識はない。この状態では逃げることもできない。
リーゼは意を決したように顔をあげると、シンが抑えつけているウィルフレッドの前へ出た。
直視すればその恐ろしさが、殺気がよく分かる。けど、これはすべてリーゼの為のもの。
リーゼはウィルフレッドの顔を優しく包むと、自分の顔を近づけ唇を合わせた。その瞬間、ウィルフレッドから力が抜けた。
「リーゼ……?」
「ウィル様、落ち着いてください。私は無事です」
優しく微笑むと、大きな腕に抱きしめられた。
「遅くなってすまない。怖い思いをさせていまった」
「大丈夫ですよ。カナンが来てくれました」
ウィルフレッドの声はとても弱々しく、安心させるようにリーゼも大きな背中に手を回して抱きしめ返した。
耳元で聞く愛する人の声がこれほどまでに安心するとは思わなかった…
気付くと、リーゼの頬を涙が伝っている。
「あ、れ…?」
頭では大丈夫だと思っていても、心は大丈夫じゃなかったらしい。不意の涙に自分でも驚いているが、それ以上にウィルフレッドの悲痛な表情が胸に刺さる。
「気にしないで」と言いたいが、言葉が出てこない。ウィルフレッドは黙って力強く抱きしてくれる。
不器用なウィルフレッドは気の利いた言葉が出てこず、抱きしめる事しかできないでいたのだ。そんな自分が不甲斐なくて恰好悪くて、リーゼに見せる顔がないと…
そんな時、耳に聞こえてきたのはシンとカナンの会話。
「お嬢さんが無事だったから良かったものの…お前、何してんの?」
「弁解の余地もありません」
万が一の為に置いておいたのにも関わらず、こんな痕まで付けさせる事態になったことに怒っているのだろう。
(当然と言えば当然だ)
主従関係というのは信頼関係が重要だ。このような事態になれば、それは信頼問題に関わってくる。信頼して預けた俺やシンの期待を裏切った事にもなる。
「今回の件は私の落ち度。どのような罰も受ける覚悟はできております」
頭を深々と下げて謝罪するカナン。ウィルフレッドとしては腹立たしさはあるが、結果的に無事にリーゼを腕の中へ戻せたのだから、そこまでの罰を与えようとは思っていない。
「どれだけ痛めつけられても構いません!!リーゼ様が受けた傷に比べたら何てことありません!!」
力強く言い切った。
先ほどまで泣いていたリーゼも、不安そうにカナンを見ている。シンは黙ったまま、カナンを睨みつけていたが、暫くすると大きな溜息が聞こえた。
「お前さ、自分を良く見せようとすることに関しては天才だよね」
呆れるように言うが、その真意が見えない。
「先に言っとくけど、僕はお前に罰は与えない」
「「は!?」」
シンの言葉にカナンだけではなく、ウィルフレッドも声をあげた。
「ちょっと待て、それでは上に立つ人間としては失格だ。どれだけ可愛い部下であろうと、間違ったことをしたら罰するのは当然だ」
「そうです!!」
ウィルフレッドに同調するように、カナンが言葉を重ねてきた。
「はぁぁ~…みんな外見に騙されちゃ駄目だよ」
シンは面倒臭いと言わんばかりに、頭を掻いている。
「こいつ、見た感じドSに見えるだろうけど、根っからのドM体質なんだよ」
なんかよく分からない言葉が聞こえて、ウィルフレッドとリーゼは困惑した表情を見せている。
「だから僕からの罰は、こいつにとってはご褒美みたいなものになっちゃうの。…って言うかお前、まさかとは思うけど、わざと遅れて来たんじゃないよね?」
ギロッと睨みつけられたカナンは、顔を俯かせ目を泳がせている。これは肯定していると言っているようなもの。
その瞬間パーン!!と物凄い音と共に、カナンが吹き飛んだ。どうやら、シンが殴り飛ばしたらしい。
「…お前さ。前にも言ったよね?仕事に性癖を挟むなって」
「す、すみません…」
「そんな顔じゃ説得力もないけど?」
乱暴に髪を掴まれ、無理やり顔を上げさせられたカナンの頬は真赤に腫れているが、その表情は恍惚していて鼻息が荒々しい…
シンは「チッ」と小さく舌打ちすると、カナンの髪を掴んだまま立ち上がった。
「お嬢さんごめんよ。今回の不始末は僕のせいだ。僕が責任を持って、こいつの躾をし直してくる」
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