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同棲
ep.86
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「今のうちに俺、料理のレパートリー増やそうかな」
『無理しなくていいよ。作れる方が作ればいいんだし』
「そうすると美愛、頑張って作っちゃうでしょ」
『………』
そうかもしれない。
自分だけだったら適当にご飯を済ませるが、蒼ちゃんの分もとなるとちゃんとした料理を作るだろう。
仕事終わりでも疲れた身体に鞭を打って。
彼はそれを予測して、苦言を呈しているのだろう。
「先に帰ったほうが夕飯作る。それでいい?」
『ぇ……うん』
「決まりね」
蒼ちゃんはさりげなく、一緒に住む上でのルールを決めていく。
世の中には料理は女性がするもの、と古臭い考えを持つ男性も少なからずいるというのに彼はそういうタイプではないらしい。
わかりきっていたことだが、少し安心した。
pipipipi...
穏やかな夕食どきを過ごしていたその時。
私のスマホが雰囲気を壊すように鳴った。
嫌な予感がする。
私は手に持っていた箸を止めて、スマホの画面を盗み見た。
〝如月さん〟という意外な人物の名前の表示が。
こんな時間になんだろう。
《…はい》
〈悪い、原田。こんな時間に…〉
《いえ…どうかしたんですか?》
〈…いや、原田は青山店って知ってるか?〉
《?
はい…。以前、何度かヘルプに行かせていただいたことはありますけど…?》
〈実はな…青山店のメンバーが一人、今日飛んだらしい〉
《は…》
飛ぶとは連絡もなしに出勤しなくなること。
そんなしょっちゅうあることではないが、よくあること。
私も何回か経験したことがある。
非常に迷惑極まりない。
こんな時間に如月さんが連絡してきたわけがわかった。
〈急ピッチでヘルプ出せる店舗探したんだが…〉
《そんなすぐ見つからないですよね。どこも人員不足ですし…
結構カツカツですか?》
〈ああ。社員が店長以外いないらしい…
——で、原田明日出れるか?休みなのに悪い〉
《出勤します》
〈悪いな。エリア外のこと頼んで…〉
《いえ…》
〈明日頼んだ〉
《はい。お疲れ様です》
〈お疲れ〉
電話はそこで切れた。
明日の休日が今の会話で潰れてしまったが、しょうがない。
エリア外の件を私に連絡してくるということは相当、切迫詰まっていたのだろう。
確か青山店のエリア担当は千葉さんだった筈。
彼女の手が空いていなかったのだろうか。
でなければ、私に連絡が来る筈もない。
「仕事?」
『あ…ごめん』
「平気?」
『まぁ、うん。明日休み潰れちゃったけど…』
蒼ちゃんは見繕った励ましの言葉を述べることなく、ただ優しく私の頭を撫でてくれた。
仕事に関してはお互い口を出さない。
この距離感が心地いい。
別にそういう決まりを設けたわけではないが、いつの間にかそれが暗黙のルールとなっていた。
『無理しなくていいよ。作れる方が作ればいいんだし』
「そうすると美愛、頑張って作っちゃうでしょ」
『………』
そうかもしれない。
自分だけだったら適当にご飯を済ませるが、蒼ちゃんの分もとなるとちゃんとした料理を作るだろう。
仕事終わりでも疲れた身体に鞭を打って。
彼はそれを予測して、苦言を呈しているのだろう。
「先に帰ったほうが夕飯作る。それでいい?」
『ぇ……うん』
「決まりね」
蒼ちゃんはさりげなく、一緒に住む上でのルールを決めていく。
世の中には料理は女性がするもの、と古臭い考えを持つ男性も少なからずいるというのに彼はそういうタイプではないらしい。
わかりきっていたことだが、少し安心した。
pipipipi...
穏やかな夕食どきを過ごしていたその時。
私のスマホが雰囲気を壊すように鳴った。
嫌な予感がする。
私は手に持っていた箸を止めて、スマホの画面を盗み見た。
〝如月さん〟という意外な人物の名前の表示が。
こんな時間になんだろう。
《…はい》
〈悪い、原田。こんな時間に…〉
《いえ…どうかしたんですか?》
〈…いや、原田は青山店って知ってるか?〉
《?
はい…。以前、何度かヘルプに行かせていただいたことはありますけど…?》
〈実はな…青山店のメンバーが一人、今日飛んだらしい〉
《は…》
飛ぶとは連絡もなしに出勤しなくなること。
そんなしょっちゅうあることではないが、よくあること。
私も何回か経験したことがある。
非常に迷惑極まりない。
こんな時間に如月さんが連絡してきたわけがわかった。
〈急ピッチでヘルプ出せる店舗探したんだが…〉
《そんなすぐ見つからないですよね。どこも人員不足ですし…
結構カツカツですか?》
〈ああ。社員が店長以外いないらしい…
——で、原田明日出れるか?休みなのに悪い〉
《出勤します》
〈悪いな。エリア外のこと頼んで…〉
《いえ…》
〈明日頼んだ〉
《はい。お疲れ様です》
〈お疲れ〉
電話はそこで切れた。
明日の休日が今の会話で潰れてしまったが、しょうがない。
エリア外の件を私に連絡してくるということは相当、切迫詰まっていたのだろう。
確か青山店のエリア担当は千葉さんだった筈。
彼女の手が空いていなかったのだろうか。
でなければ、私に連絡が来る筈もない。
「仕事?」
『あ…ごめん』
「平気?」
『まぁ、うん。明日休み潰れちゃったけど…』
蒼ちゃんは見繕った励ましの言葉を述べることなく、ただ優しく私の頭を撫でてくれた。
仕事に関してはお互い口を出さない。
この距離感が心地いい。
別にそういう決まりを設けたわけではないが、いつの間にかそれが暗黙のルールとなっていた。
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