気がつけば異世界

蝋梅

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113.休憩の終わりに

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「日も暮れる」
「そうね」

 半日も地上にいたのは久しぶりだった。ラジに言われなくても苦手な赤色に染まった空を見ればわかる。

 もうじき、この一帯は闇一色になるだろう。

「ねぇ、私達はもうカブちゃんに戻るから、これでさよならなんだけど。どうするの?」

 ステップに足をかけながら既に暗闇の林にむけて声をかけてみた。

「カブチャン?」
「ん?ああ、ザッガなんとかより良いでしょ。カブトムシだから、カブちゃん」
「……そうか」

 モーさんや。聞いてきて解せぬみたいな顔しないでくれる?返事までの間がやたら長いし。

「反応ないって事で。じゃあ出発すると」
「待て」

 暗闇から移動する音もなく現れたのは二人。

「出てきたっていう事は、会話をする気があるのよね?悪いけど、私は顔を見て会話をしたいんだけど」

 リアンヌさんが、私を庇うように前に出ていたので大丈夫と目で合図をすれば、仕方がないですねと苦笑いをしながら数歩右にずれてくれた。

 最近では、こういう尊重してもらえるのが、実は嬉しかったりする。

「時間的に今晩はかな?」

 返事はない。正直、私の関心は薄い。

「地元民に私が言うのもなんですが、これから夜型の魔獣達のお食事時間みたいだから気をつけてね」

声掛けはした。

「お待ち下さい!」

 少し高めの女の子の声と共に暗闇から出てきた人数は正解だった。

「カブちゃん、ライトコッチに向けて。そう、直は目がやられるから少しずらして。おっ、いいねぇ~」

 私とカブちゃんは、一心同体!まではいかないまでも、指示の疎通はここ数日間で格段に進歩していた。その結界、痒いところにまぁ手が届くこと。

「さて、初めまして?光の国の人かな?」

 金の瞳の10代の男女二人は、フードを深く被っているが、どちらもお人形さんみたいな顔立ちである。

「わ、わたくしは、フルーレ・ティナ・シャイエと申します」

「俺はマイン……だ」

 女の子から自己紹介をしてくれた。ついでに君は?と彼女の隣にいる喋らない不機嫌丸出しの子に目で問えば、渋々答えた。

「えっと、フルーレちゃんとマイン君だっけ、何かご用?」

 暗くなり、カブちゃんのお腹も見づらいというか、ほんの少し慣れたので足のステップに腰を下ろす。

 いや、若くなっても疲れんのよ。

「な、無礼な!この方はっ」
「お姫様って言いたいわけ?」

 呼び方が気に入らないのか、少年は怒り出した。

だが、しかし、おねーさんには響かない。

「うーん、未成年を危険地帯に置いておくのはよくないのか」

でもなぁ。

「光、出てきて」

 呼べば、発光体かというくらいの神々しさ、中身は少し残念な光の神器が現れた。

「こ、この気配」
「強い」

 敵視しかなかった二人の空気は劇的に変化した。そう、私の隣に立つ光に釘付けである。

 まぁ、わかるよ。なんだかんだで異次元レベルの見た目だものね。中身はともかく。

「ねぇ光。彼、または彼女の血は確か?」

 光は、私の問に迷う事なく即答した。

『否』

 頬杖をついていた手を緩めて伸びをしながら立ち上がった私は、まだ幼さが残る二人に最後の通告をした。

「魔物に食い殺されるか。それとも私に息の根を止められるか。どっちがいい?」

 この世界では、下手な甘さは命取り。

「残念ながら、子供だからとか関係ないのよね」

あら、本気よ?

「光、剣になれ」

 光の国の王の血を継いでいない王女がいる可能性はあるかもしれないけど。

「言い訳ではなく、事実を話せるなら剣を納めるけど、もし嘘なら……わかるわよね?」

 二人の子供の顔からは、一気に表情が消えた。

「らしくないように感じるが」

 私がステップで陣取っているせいでカブちゃんの中に入れないモーさんがボソリと呟いた。

「ナウル君には優しくてこの子達には冷たいって事?」

 返事がないので正解らしい。

「慎重にもなるでしょ。カブちゃんに二人を乗せて、もし攻撃されたら?」

 この後、また数日間を地中で過ごすのだ。その際に狭い限られた空間で暴れられでもすれば負傷者が出る可能性は高い。また、とりあえず地上に出るとしても、そこが安全とは限らない。

 一番は、乱闘騒ぎでカブちゃんが壊れたら困る。

「それに真面目に話をするなら本来の姿でお願いしたいかな」

 私の言葉に二人の子供は手を繋ぎ目を閉じた。程なくして彼らから金色の煙が吹き出す。

 それも、かなりの勢いで。

「ちょ、毒ガスとかじゃない?」

 地の国での地下での出来事が蘇り、つい手で口と鼻を覆う。

『害はないですよ。むしろ癒やしの効果があります』

 光が教えてくれるけど、安心はできない。しかも癒やしってどんなよ? モチベーションを上げてくれるとか? 最近、お酒しか楽しみがないんだけど。しかも少量しかくれない。それをなんとかしてくれる?

「あ、飲まれない身体に強化されるとか」
『解かれました。魔力の保持量はなかなかですね』
「今、サクッと無視したでしょ?!」

 私と全く視線を合わせない光の肩にチョップをお見舞いするも、ダメージはゼロのようだ。仕方がないので光の視線の先を見た。

「お~、双子なのね。あれ?あまり変わらない?」

 金髪の金眼で顔は少しシュッとしたかな。

「先程より倍近く力が増えている」

 モーさんが、ボソッと教えてくれるも魔力がないので相変わらず何も感じない。

「いや、モーさんは何を始めているのよ」
「長引きそうだから」

 彼はカブちゃんから漏れる明かりがより強い場所へと移動して何やらナイフで木を削っている。随分他人事な態度である。

「あの」
「ああ、ごめんね。元の姿も双子なのは分かったわ。それで用件は何かな? 残念だけど光の神器はあげないわよ?」

 うっという表情のフルーレちゃん。可愛いけどこればかりは無理だなぁ。

「ソレは、我々の国の物だ」

 マイン君は、フルーレちゃんとは対象的で前に数歩進み出てきた。なかなか良い目をしている。

「光はさ、まだ私がこの世界に来たばかりの時に冬の神から渡されたの。戦で敗れた国のだと言っていたかな」

 話しながらも隣の光の様子を覗えば、いつもと変わらず、ボーッとして見える。

「ならば貸して頂けませんか? この場を通るという事は、シャイエに行かれるのですよね? シャイエに着いてから数日間、いえ、1日でもよいのです!」

 必死さは伝わってきたけど。

「カブちゃんに乗せてあげて光を貸し出した私に何か利益があるの?」
「利益ですか?」
「そうよ」

 がめつい私は、タダでは動かないわよ。

「それに貸し出したとして、その先は? 予想では国から逃げてきた感じよね? 誰が王になるかの争いに負けそうになってとか。初対面の怪しげ集団にわざわざ名前を明かす時点で利用意欲満々よね」

 神器達も息抜きが必要かなと、人型になっていたし、気づく人はすぐに分かるのかな。

「まー、いいや。入って」
「え?」

 双子は、見事にポカーンと口を開けている。最近よく見る光景だけど。

「そんな大きな口を開けてたら虫が入るわよ」
「……乗せてくれるのか?」

 マイン君の言葉に中に入る扉に手をかけながら振り返り彼らを見下ろした。

「戻るという事は、王になると決めたのよね? ならば光の、シャイエに着くまでに私に見せて」
「な、何をお見せすればよいのでしょうか?」

 双子の片われの女の子、フルーレちゃんが、じっと見つめてきた。

「今の君達には、ハッキリ言って自分が光の民なら命を掛けよう、付いていこうとは思えない」

 美しく、弱々しい双子の若者。

「だから態度で、その口で私をその気にさせて」

 味方に、力になりたくなるように。自分達には価値があると。

「なかなか難しい事を仰る」

 リアンヌさんが、いつもとは違う低い声で小さく呟いたけど、なんか楽しそうですよ?

「出来た」

 どうやらモーさんは、私が説明した箸を作ったようだ。膝の上には、花の柄を彫りこんだ匙まである。どんだけ器用なんだか。

 というか皆、マイペース過ぎよ。

「まー、こんな感じの個性的メンバーだけど。どうぞ」

 皆の戦闘能力は高いのに締りのない終わりになったのは私のせいじゃないはず。


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