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80.争いのない世界とは
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「傷ついても綺麗な顔ねぇ」
夕方になり外からの光が赤色になってきた。その夕日を浴びた中性的な顔は人形のように動かない。ふと頬に指先が届く前に長い影が現れた。
「ナウルの容態は」
「見ての通り。怪我は大したことないわ。力の使いすぎで寝ているだけ」
ラジは、私の言葉で力を抜いた。
まるで彼のお父さんである。
ん? という事は斬りつけた私は敵か。まあいいや。ラジを探す手間が省けて丁度良い。
「ラジはこの後は用事あるの? ないなら少し交代してくれない?」
トイレに行きたいという生理現象だ。ノアもいるし城の周囲はこれでもかというくらい防御を施してあり、すなわち別にずっと見張っている必要もない。
だけど、なんとなく目覚めた時に一人にしておきたくなかった。
「構わないが」
「キュ」
ノアの鳴き声でベッドに視線がいく。ふるりと睫毛が揺れ茶色の瞳が見えた。
「俺は」
「まだ起きないほうがいいわ。枯渇寸前まで力を使ったみたいだから」
あなた、絶対に肥満であろう、横幅が見事な医師が、枯渇したナウル君を診てよく生きていたと言っていた。
まあ、終わりよければ全てよし。
「ラジウス様…すみ」
「謝罪は受けない」
ハァ、一気に不穏な空気にしないでくれる?
「ねぇ。争いのない世界ってさ、難しいわね」
トイレに立つはずだったけど椅子に戻った私は、誰に問うわけでもなく呟いた。
「武器が世の中から全て消えればいいのかしら?」
そうしたら、とりあえずは斬られない。
「力があるものが弱き者を支配するのでは無いでしょうか。それに武器を消したとしても作る者が必ず現れると思います」
ナウル君が私の一人言に参加してきた。何気に真面目だな。
「なら知能がないほうがよいのかしら?」
「尚更治安が悪くなるだけだろう」
ラジも加わった。
「私は、そもそも血筋で其々のトップが決まっているのも不思議なのよね」
愚王ならどうなるの?
怖すぎる。
そんな事をぼんやり考えていると。
「あの、これお返しします。ただ、まだ」
なんとか身体を起こしたナウル君がポケットから地の神器、目貫を私に向けて差し出してきた。それらを受け取り状態を確認する。
「そうね。九割は綺麗になっている気がする。腕輪になるまであと一息かなぁ」
黒ずみがとれて形がはっきりしたそれは、片方は男性、もう片方は女性を象ってある。但し下半身は魚だ。何で地なのに魚なのかしらと考えていたら。
「何故、俺だったんですか?」
小さな頼りない声がまるで子供のようだ。
何故か。
「うーん。渇れかけた湖を戻せば人気者になれるから」
可愛げない睨みを飛ばされたので付け足す。
「飲んだ席や中庭ではラジ達以外に会話は漏れてない。だけど間者はいると気づけば真っ先に上がるのは」
混ざった血の者。
「私の考えが違っていればよいけれど、短期間で感じたのは、他国と混ざる人は極端に少ない」
それは異常なくらい。
「もっとさ、自由でいいんじゃないのって思った」
凝り固まった世界。
それが私の印象。
「この世界なんてどうでもいいはずなのに。私、おかしいわね」
「ユラ」
ラジが私をじっと見つめて名を呼ぶ。私を非難するつもりかしら?
ふいに大きな足音がした。
それはこの部屋を目指しているよう。でも、ノアは丸くなり目をつぶったままだ。すなわち敵ではない。
「おいユラとナウル! 昼間の説明しろよ!」
ただし歩く騒音、マート君だった。
夕方になり外からの光が赤色になってきた。その夕日を浴びた中性的な顔は人形のように動かない。ふと頬に指先が届く前に長い影が現れた。
「ナウルの容態は」
「見ての通り。怪我は大したことないわ。力の使いすぎで寝ているだけ」
ラジは、私の言葉で力を抜いた。
まるで彼のお父さんである。
ん? という事は斬りつけた私は敵か。まあいいや。ラジを探す手間が省けて丁度良い。
「ラジはこの後は用事あるの? ないなら少し交代してくれない?」
トイレに行きたいという生理現象だ。ノアもいるし城の周囲はこれでもかというくらい防御を施してあり、すなわち別にずっと見張っている必要もない。
だけど、なんとなく目覚めた時に一人にしておきたくなかった。
「構わないが」
「キュ」
ノアの鳴き声でベッドに視線がいく。ふるりと睫毛が揺れ茶色の瞳が見えた。
「俺は」
「まだ起きないほうがいいわ。枯渇寸前まで力を使ったみたいだから」
あなた、絶対に肥満であろう、横幅が見事な医師が、枯渇したナウル君を診てよく生きていたと言っていた。
まあ、終わりよければ全てよし。
「ラジウス様…すみ」
「謝罪は受けない」
ハァ、一気に不穏な空気にしないでくれる?
「ねぇ。争いのない世界ってさ、難しいわね」
トイレに立つはずだったけど椅子に戻った私は、誰に問うわけでもなく呟いた。
「武器が世の中から全て消えればいいのかしら?」
そうしたら、とりあえずは斬られない。
「力があるものが弱き者を支配するのでは無いでしょうか。それに武器を消したとしても作る者が必ず現れると思います」
ナウル君が私の一人言に参加してきた。何気に真面目だな。
「なら知能がないほうがよいのかしら?」
「尚更治安が悪くなるだけだろう」
ラジも加わった。
「私は、そもそも血筋で其々のトップが決まっているのも不思議なのよね」
愚王ならどうなるの?
怖すぎる。
そんな事をぼんやり考えていると。
「あの、これお返しします。ただ、まだ」
なんとか身体を起こしたナウル君がポケットから地の神器、目貫を私に向けて差し出してきた。それらを受け取り状態を確認する。
「そうね。九割は綺麗になっている気がする。腕輪になるまであと一息かなぁ」
黒ずみがとれて形がはっきりしたそれは、片方は男性、もう片方は女性を象ってある。但し下半身は魚だ。何で地なのに魚なのかしらと考えていたら。
「何故、俺だったんですか?」
小さな頼りない声がまるで子供のようだ。
何故か。
「うーん。渇れかけた湖を戻せば人気者になれるから」
可愛げない睨みを飛ばされたので付け足す。
「飲んだ席や中庭ではラジ達以外に会話は漏れてない。だけど間者はいると気づけば真っ先に上がるのは」
混ざった血の者。
「私の考えが違っていればよいけれど、短期間で感じたのは、他国と混ざる人は極端に少ない」
それは異常なくらい。
「もっとさ、自由でいいんじゃないのって思った」
凝り固まった世界。
それが私の印象。
「この世界なんてどうでもいいはずなのに。私、おかしいわね」
「ユラ」
ラジが私をじっと見つめて名を呼ぶ。私を非難するつもりかしら?
ふいに大きな足音がした。
それはこの部屋を目指しているよう。でも、ノアは丸くなり目をつぶったままだ。すなわち敵ではない。
「おいユラとナウル! 昼間の説明しろよ!」
ただし歩く騒音、マート君だった。
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