勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第3章 本格的侵攻開始   か?

第29話 いつもの騒動

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 金曜日の夕方。
 学校帰りに、彼女の旅行用の荷物を運ぶ為に、俺、少林芳雄も彼女の家へうかがった。

 伺った時に、彼女のお母さんから、口では
「ご迷惑をおかけして、ごめんなさいね」
 とか言われているが、酔っぱらって簡単に許可を出すから、お父さんは絞めたとか言う話の流れになった。
 話の流れからすると、あまりお母さんからは、良い印象を持たれていない事に気がつく。

 まあ、無事に送り出してくれたから良いのだが、彼女の準備を待っていると、その間にも、うだうだと延々と言われた。
 突然わいて来たクラスメート。
 それも男。
 娘が旅行に行くなんて、当然心配だろう。
 仕方がないよなと考えていて、うっかり二人の目の前で、亜空間庫に彼女の荷物をしまってしまった。

 当然彼女も、彼女のお母さんも目が点である。

 失敗したことに気が付いた俺は、頭の中で速やかに言い訳を構築する。
「ああ驚かれたでしょう。特外種駆除従事者免許を取ってダンジョンで活動をしていると、まれに特殊スキルみたいなものが取れるんです。便利ですよ」
 と社長のように、にこやかに言ってみた。

「まあ。そうなんですね。まるでマジックみたい」
「ええそうでしょう。すごく便利なんですよ。ハハッ」
 と笑ってみる。

 でも、うだうだの続きが来た。
「でも高校生なのに、もうその歳でお仕事をされているの?」
 なんだか、いい加減うっとうしい。
 そう思いだした頃。瀬尾さんが慌てた感じで、会話に割り込んできた。

「何を言っているのお母さん。少林君の勤めている会社って、世界唯一の技術を持っている会社で、誰でも入れるところじゃないのよ」
 と言ってくれた。
 だが俺は、あ~たぶん誰でも入れるけどね。入ると確かに普通の人間じゃなくなるけれど。
 そんなことを思ったが、当然そんなことは口には出さない。

「会社? 所詮ダンジョンで、害獣駆除の会社でしょ」
 お母さんが薄笑いを浮かべてそういった瞬間、瀬尾さんの目が光った。

「お母さんちょっと」
 なんだ? 瀬尾さんが、お母さんを奥につれて行った。

 奥からわずかだが声が聞こえる。
「……だから、……おとう……部分……1月で、数千万……から……とんでも……なのよ」

 奥から帰って来た瀬尾さんは満足そうで、お母さんの目が円マークになってニコニコしている。
 すごい、満面の笑みだ。
 さっきと、完全に人が変わっている。

 言葉も、さっきまでとは全然ちがい、
「みゆき、がんばるのよ~」
 と言いながら、にこやかに手を振って送り出してくれた。

 彼女に聞いてみる。
「お母さんに、何を言ったの?」
 一瞬、彼女の顔が引きつったが、
「うちのお母さんて、普通の会社に勤めたことがなくて、ほぼ専業主婦なのよ。でね、最近の社会的な情報。特にダンジョンができてからの、一般的な常識について教えてあげたの」
 そういうふうに彼女は答えてくれた。
「ふーん」
 おれはそれだけしか返さなかったが、さっき聞こえてきた言葉の断片は、そんな感じじゃなかった。
 おそらく彼女は、もっと現実的な魔法の言葉を使ったのだろう。
 キーワードは『金持ち』だな。
 さっき見た彼女のお母さんは、そんな目をしていた。


 そんなことを考えながら歩いていたら、あっという間に帰り着いた。
「遠慮せず上がって」
 そう言って招き入れたが、俺ははて? どこへ案内すればいいんだ?
 
 とりあえずリビングか。そう考えて、移動をする。

 リビングへ入っても、誰もいなかった。
「何か、飲み物でも入れよう、何がいい?」
「飲み物も欲しいけど、その前に着替えたいの。家で、着替えればよかったんだけど」
 ああお母さんが、俺に突っかかって来ていたからか。

「じゃあ部屋に案内するよ。俺の部屋で悪いけど……」
 しかし、どうやって……、ダンジョンは認証がないと入れない。

 こっちにも部屋はあるけれど、全然使っていない。
 完全に物置状態で、掃除もしていない。
 偽装用に一応の家具とかは置いてあるけれど……。

 固まった俺を見て、
「ちょっと位、部屋が散らかっていても気にしないよ」
 と言ってくれたが、そうじゃないんだ。
 まあ何とかごまかそう。

「まあ、部屋があれだけど、気にしないでくれるとうれしいな」
 とだけ答えて、移動を始める。

 2階へ上がり、自分のネームプレートのかかった部屋に入る。
「ちょっと、待ってて」
 と言って、中に入る。
 大慌てで窓を開けて、布団をバサバサと埃を払い、掃除機を引っ張り出す。
 10分後、掃除を終わらした俺は、彼女をリビングで待たしておけば良かった事に気が付く。

 脱力しながら、
「入っていいよ」
 と彼女に声をかける。

「ここがそうなの?」
 嬉しそうに入ってきたが、部屋を見て困惑している。

「どうしたの?」
「うーん」
 なんだか、言いづらそうにしている彼女。

「まあいいわ、着替えさせて」
「ああ」

 さっきの彼女の表情が気になって、ボーっとしていると、
「生着替え見たいの? でももう少し、時間が欲しいなっ」
 と言われて気が付き、慌てて部屋から出て行った。

 少林君て…… そうね社長さんは神崎さんよね。
 他人だからやっぱり冷たくされたりするのだろうか? 私はどう見ても生活感のない部屋を見回す。

 力になってあげたいけれど、私にできることなんて……。

 着替えて下へ降りていくと、話し声がしていた。
 彼と妹さん? それにしては声が……。

「失礼します」
 と一応声をかけてリビングに入ると、すごい美人でグラマーな女の人にプロレス技を掛けられていた。
「美月さん。ギブアップ」
 と宣言をしている。
 だが、彼は首に腕を回されており、顔が胸に埋まっていた。

 なんだか腹が立ち、
「何をやっているんですか! 少林くん嫌がっているじゃないですか」
 と叫んでいた。

 動きが止まる室内。


「あっ着替えたの。動きやすそうでいいね」
 と、胸から顔をあげた彼は、私の着ている格好。
 ボトムはスキニーデニムに、トップスはゆったり目のもこもこスエットを見て、平然と答える彼。

 その時なぜかイラっと来た。
 ちょっとにらんで、
「その人は?」
 と、突っ慳貪(つっけんどん)に聞いてしまった。

「ああ、松沼美月さん。一司さん、社長の婚約者」
 と、紹介された。

 でも私は、
「神崎さんの…… そう、でもずいぶんと、少林くんと仲がいいんですね」
 自分で、うわ言ってしまったと悔やんだ。
 でも、次の瞬間。

 たしかに、さっきまで少林くんの横にいたはずなのに。
 なぜか、いま私は…… 背後から抱えられて、胸やお尻やいろんな所をもまれている?

 にっ逃げられない…… 何なのこれは?
 びっくりして、声も出ない。

 やはり次の瞬間、テーブルの向こうに居たはずの少林くんが、私の正面に立ち。私の体をまさぐっていた手を止めてくれた。

 へなへなと崩れ落ち、上を見上げると松沼さんと少林くんが、私をはさんで頭上で力比べをしている。
 なんなの、これは……?
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