勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

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第4章 少しずつ変わって行く世界

第4話 アメリカ大統領、進撃の余波

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「ねえ、今日も来ているわよ」
 窓の外を眺め、美月がぽつりと言う。

「ああ、ダンジョントレーニングの後、俺の親衛隊とか呼ばれているらしい」
「あのプラカード、ご近所さんに不評なのよね」

 窓のカーテンを、こそっとすかして、小さな隙間から覗く。
 自衛官の多さは分からないが、来ているのはわかる。
 この窓を開いて、自由になりたい。

「アメリカさんが、俺を取り込もとしていると噂が立ってな。以前訓練した、士官が毎日来ているんだが、総理は知っているんだろうな」
 俺がそう言うと、美月が答える。
「差し金じゃないの? 一司」
 左手の親指と人差し指で自分の顎をはさみ、右手はびしっと誰かを指し示している。
 そんな、謎は全て解けたというようなポーズをする美月。 

 掲げられているプラカードを見る。
「士官学校、教官求むとかって良いのか?」
「そんな所を読まなくっても…… 教官、愛しています。と言うのもあるじゃない」
 言われて見るが、
「持っているの、おっさんじゃん。やだよ」
 俺はそう答える。

 美月もそっと覗き確認して、
「えー、スカートを履いているよ。たぶん女の人だよ」
 ちょっと首をひねりながら、そんな答えをして来る。
「お前が見ても、たぶんか……」
 通報しておこう。

 ジト目で睨む、美月。
「可愛い子なら良いんだ?」
 そう言って一瞬消える。
「そうだな。それなら…… なんで包丁を持っている。それにどうやって? 包丁が炎を纏っているんだ?」
「最近覚えて、使えるようになったの。えーと、エンチャントだったっけ?」
 不敵な笑みのつもりか、でへへと笑っている。その顔は単なる変態さんだな。
 流れる魔力を分解して、炎を止める。
「あれ?」

 最近、いろんな物が見えるんだよな。
 魔素とか魔力の流れとか、たまに人じゃないものも見えるし…… 交差点とかに蹲っていて、気になって声かけたのがまずかった。

 聖魔法で昇華できたから良いけれど。ついてこられた時には、ちょっと怖かったよ。
 ダンジョンでもそのうち、ゴーストとか…… そう言えば、ゾンビぽい犬が居たなあ。出てくるなよ。振りじゃないぞ。
 それにしても、俺自身いよいよ、人間じゃなくなった気がする。

 まだ「あれっ」とか言いながら、ブンブン包丁を振っているけど危ないぞ。
 ヒョイッと、包丁を取り上げる。
「もう」
 なんて、文句を言っているけど、普通なら事案だぞ。


 寝ていても、意識が広がると色んな所の色んな物が頭に入ってくる。
 普通なら頭がおかしくなるレベル。たぶん。

 この前、フェンとかフレイヤが、到頭(とうとう)覚醒か? なんて言っていたし、フレイヤに聞けば良いんだろうが、俺としては、聞きたくないのだよ…… 聞くと否応なく認めなきゃいけなくなるし。

 そういえば、九州の時が最初だ。
 あの時、神に何かされたのか?

 その後だったか、美月を抱っこ状態で抱えて、がんばっていた時だったよな。
 下腹部が、急に温かくなってきて。
 うわこの状態で、美月が漏らしたか。
 そんなことを思ったが、急激に力が増して変なエネルギーが、体を巡りだしたんだよな。

 気になったから後で調べて。
 該当しそうだったのは、チャクラとか言う訳の分からないものだったが、確かに頭頂部と、下から来たのが繋がってから、変なものが見える頻度が増したからなあ。

 あの後は、本当に漏らされて、検証どころじゃなかったが……。 美月も俺から暖かいエネルギーが流れ込んで来て、股間から頭まで、突き上げられて……。
 というか、串刺しにされて意識が飛んだって言っていたよな。

 意識が、戻った瞬間に、もう一度。ねえさっきの、やって。
 甘えた感じで言われたが、自分に理解できないものを、再現できるか。

 頭の中でふと、「人類の革新」という、アニメで有名な言葉がよぎる。
 それの検証も、必須だろうが……。

 まあ先ずは、外の馬鹿どもだ。
 絶対国の思惑が、というか、仲間だと言う押しがすごい。
 ご近所さんが通報しても、
「そりゃ、大変ですね」
 と言って警察が電話を切ったらしいからな。
 その後、110番が話し中だった。というから間違いないだろう。

 気合を入れて、携帯を取り出す。
「総理、神崎です」
「ああ今。閣議中だから手短にな」
 ああっ閣議だ? こっちと、どっちが大切だと思っているんだ。
「嫌がらせを辞めないと、アメリカへ、会社ごと引っ越しますよ」
「嫌がらせ? いやそれは、皆君を慕っているんだから」
 電話越しでも分かる位、動揺をしている。
 大体、返答でばらしているじゃないか。

 しまった、国会中継をつけておくんだった。 
 私としたことがぁ。こんな面白そうな所を、フォローできなかったとは……。

 まあ、多少認識の違いはあるようだが、犯人はお前だ。
「それじゃあ、要件は伝えたので対処をお願いします」

 うん、一発だったね。
 電話からほどなくして、波が引くように、みんなが居なくなった。
 約一名、漢の娘が最後まで、少し粘っていたけど、居なくなった。


 そんな、総理とのおバカなやり取りがあった頃。
 マンションの隣の部屋。
「何か久しぶりだな。なつみ。あがれよ…… どうした?」
 普段なら勝手にずかずか上がって来るなつみが、玄関から動かない。

「うーん。まあ、今までありがとう。一翔と別れるわ。霞ちゃんがいるし。良いよね」
 軽く頭を下げて、そんな事を伝えるなつみ。
 普段いつもにこやかで、かわいい顔がまじめだと、与えるダメージが倍加する。

 そして、こんなことに慣れていない一翔は、致命的な精神攻撃を受けた。
 背後に、ガーンという文字が見えるようである。
 きっとHPはのこり1である。

 よせばいいのに、しつこく食い下がる一翔。
「でも、会社や学校はどうすんだ?」
「会社? 学校? なんで? 当然、辞めないわよ」
「でも、俺と顔合わすし」
「いやなら、辞めれば。止めないわよ」
 きっぱりと、躊躇なく告げられる。
「ぐはっ」
 胸を押さえ、膝をつく一翔。

「じゃあね」
 そう言ってなつみは、小さく軽く手を振ってドアを出る。
 ドアを閉じると、俯いて一度深くため息をつく。
 そして顔を上げ。
 晴れやかな顔で、隣のドアを開き、中へ入っていく。

「ただいまぁ」
 そう、彼女はずいぶん前に、ダンジョン側に部屋をもらい、住んでいた。

 最初こそは、一翔の部屋に転がり込んでいたが、一緒にいるとだめな部分が色々見えるし聞こえもする。
 一人で居たい時もある。
 そうして、なつみは思い悩み、一司に頼んだ。

 ダンジョン側へ入っていくと、リビングでゲームをしている壮二を見つける。
 そっと後ろから抱きしめ、そこからゲームの邪魔にならないように、壮二を抱っこする形へと、流れるような動作で移行をする。
 壮二本人はゲームをし辛そうだが、なつみからの過度なスキンシップに、最近は慣れたようである。

 背中へと張り付いたなつみは、一翔に別れを伝えたことで。
 晴れ晴れとして、壮二の背中にすりすりする。

 そのとき一司は、心の中に暗雲が立ち込め雷雨状態の一翔と、ダンジョン側に移動する晴天のような心のなつみを、マンションのリビングで感じていた。
 これは、この状態が分かっていても、人は分かり合えるのか? と似合わない考察をしていた。
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