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第4章 少しずつ変わって行く世界
第28話 露と落ち 露と消えにし我が身かな
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「いや済まぬ。言い間違えてしまった。神崎殿にお願いは本当なのじゃ。神音をお預けする故、修行をさせてくれぬか。まあ、そこの壮二じゃったな、嫌でなければ許嫁という形でもいいが」
爺さんがそんなことを言ったため、壮二は口と鼻から焼きそばを吹き出し、神音ちゃんは真っ赤になって、せっかくのアイスを落とした。
壮二は焼きそばが熱いのか苦しいのか、それともソースがしみるのか、じたばたしている。
神音ちゃんは、カップの底が重くて、アイスがきちんと立っていたのでほっとしている。生まれて初めて食べるアイス。一口食べた瞬間から、なにこの冷たくて甘い食べ物は、こんなものがこの世にあって、今まで食べさせてもらえなかったなんて……。と知らず知らずにほほを伝う涙。そう、泣きながら食べていたのに、落とした。逆になっていたら、爺さんはきっと今日死んでいただろう。
さて。母親の方は…… じっと子供たち二人を見る。
神音と壮二を見た後、にまっと笑い、真魚を呼ぶ。
「お姉さんかな? うちの子はどうかしら? 仲良くなれそう」
「真魚です。うん。うちの家族に比べると、ある意味普通そうだから、大丈夫だと思います。ただ…… なつみちゃんが泣くかも」
そう言って真魚の眉がへにょっとなる。
「なつみちゃん?」
「うちの社員と付き合っていたけれど、愛想をつかして壮二に乗り換えようとしたんです。だけど、壮二がまだ中学生だから手をこまねいている感じです」
真魚が小声でお母さんにそう説明すると、
「そんな子にあげるのはもったいないわぁ。壮二くん良い子なのに。あっちがダメならこっちなんていう行動だめよねぇ。お姉さん。真魚ちゃんもそう思うでしょう?」
気にしたことはなかったが、言われてみればそうかも。真魚も納得する。
しっかりしていても、真魚はまだ15歳の中学生。大人の言葉には弱い。
「壮二くん。家の子をよろしくね。おうちに預けるから、好きにしてもらっていいわよ。私が許します。妾の一人や二人男の甲斐性よね。神音もきっと文句はないと思うわ」
そんなことをお母さんが断言する。
それを聞いた神音ちゃんは、ええっーという顔をしている。
「まあ冗談は良いとして、うちに預けるのは本気ですか?」
「うむ」「ええ」
二人が頷く。
「神音ちゃんはそれでいいの?」
「はい、学校にも近いし修行もなくなるし」
と言って慌てて口を手で覆う。
だが、爺さんは不敵に笑っている。
ああ、壮二達が7か月でこの強さになったから、過酷な修行でもすると思っているんだろうな。うちは緩いからなあ。
「わかった。お預かりしましょう。今更一人増えても変わらんしな」
俺がそう言うと、なぜか二人は胸をなでおろす。
爺さんは、このまま鍛えてもらえば、わが一族の最強が誕生する。やっと肩の荷を下ろせる。と考え、お母さんは、これで、爺も少しはおとなしくなるし、優秀な子をこの年で確保できれば万々歳よ。ちょっと気が弱い感じもするけれど、少し諭してあげればまだ中学生。どうとでもなるはず。
いろんな思惑が交差する。
とりあえず、飯を食べ、落ち着いたところで、
「さあ、人数もそろったし、残り25階。夕方までに潰すぞ」
そう言うと、ゲスト家族は驚愕する。
5階分走って来た2人はもちろん、お母さんまで?
「ダンジョンというものは、数日かけて攻略するものと書いてあったんですけれど?」
なるほど、お母さんは調べたんだな。
「それは一般の場合です。家はその気になれば、数百単位で攻略しますから」
とりあえず、そう答える。
なるほど、確かに神崎殿。次元が違う。
しかし、ついて行けるのかわし?
えーと、一階層2~3kmって書いていたわよね。3kmだと75kmもあるのよ。モンスターを倒しながら行けるの?
そう言っている間に、バーベキュー用の荷物が無くなり、
「行くぞ」
の掛け声。
「えっ、私の薙刀」
そう言うが、皆は走り始める。
ほぼ、全力疾走。これは辛いわ。
目の前に出てきたモンスターは、瞬時に凍り砕け散る。
その後、体が温かくなる。
幾度かそれを繰り返していると、ついて行くのに余裕が出て来た。
目の端には壮二が居る。
「ねえ壮二君」
「はい」
「あなたはまだ中学生だから、分からないと思うのだけど、女はね……強い男にあこがれて導いて欲しいと思うものなのよ」
「はあ」
「神音はね、小さなころから外で裸で走り回り、苦しい修行に耐えるのが嬉しい性格なの。分かる?」
「そうなんですか?」
「そう。だからね。遠慮なくビシビシと痛めつけて押さえつけると喜ぶのよ。それが神音なの」
何か怪しい話を、お母さんが壮二に吹き込んでいるな?
「そう。だからやさしさと厳しさで、あの子を教育してあげて。無理なんてほざいてもそれを克服すると、それは喜びに変わるから。きっとね」
壮二が信じてもいやだな。
「余裕がありそうなら、スピードを上げるぞ」
神崎さんがそう言った瞬間、スピードがもう一ランク上がった。
ああ……だめ、付いて行けない。何でみんな平気なの?
そう思った瞬間。爺さんが、もんどりうって転んだ。
「じいさん大丈夫か?」
「わしはもうだめだ。後は若いものにすべてを任せる。露と落ち 露と消えにし我が身かなじゃ」
「あんたは秀吉か。余裕があるじゃないか。仕方ないフェンもう一回だ」
だがフェンは、首を振る。
仕方が無い。
「10階で待っとくから。気を付けて来いよ」
そう言って、俺は爺さんを抱えてゲートをくぐる。
「ああっ、わたしもぉ……」
爺さんがそんなことを言ったため、壮二は口と鼻から焼きそばを吹き出し、神音ちゃんは真っ赤になって、せっかくのアイスを落とした。
壮二は焼きそばが熱いのか苦しいのか、それともソースがしみるのか、じたばたしている。
神音ちゃんは、カップの底が重くて、アイスがきちんと立っていたのでほっとしている。生まれて初めて食べるアイス。一口食べた瞬間から、なにこの冷たくて甘い食べ物は、こんなものがこの世にあって、今まで食べさせてもらえなかったなんて……。と知らず知らずにほほを伝う涙。そう、泣きながら食べていたのに、落とした。逆になっていたら、爺さんはきっと今日死んでいただろう。
さて。母親の方は…… じっと子供たち二人を見る。
神音と壮二を見た後、にまっと笑い、真魚を呼ぶ。
「お姉さんかな? うちの子はどうかしら? 仲良くなれそう」
「真魚です。うん。うちの家族に比べると、ある意味普通そうだから、大丈夫だと思います。ただ…… なつみちゃんが泣くかも」
そう言って真魚の眉がへにょっとなる。
「なつみちゃん?」
「うちの社員と付き合っていたけれど、愛想をつかして壮二に乗り換えようとしたんです。だけど、壮二がまだ中学生だから手をこまねいている感じです」
真魚が小声でお母さんにそう説明すると、
「そんな子にあげるのはもったいないわぁ。壮二くん良い子なのに。あっちがダメならこっちなんていう行動だめよねぇ。お姉さん。真魚ちゃんもそう思うでしょう?」
気にしたことはなかったが、言われてみればそうかも。真魚も納得する。
しっかりしていても、真魚はまだ15歳の中学生。大人の言葉には弱い。
「壮二くん。家の子をよろしくね。おうちに預けるから、好きにしてもらっていいわよ。私が許します。妾の一人や二人男の甲斐性よね。神音もきっと文句はないと思うわ」
そんなことをお母さんが断言する。
それを聞いた神音ちゃんは、ええっーという顔をしている。
「まあ冗談は良いとして、うちに預けるのは本気ですか?」
「うむ」「ええ」
二人が頷く。
「神音ちゃんはそれでいいの?」
「はい、学校にも近いし修行もなくなるし」
と言って慌てて口を手で覆う。
だが、爺さんは不敵に笑っている。
ああ、壮二達が7か月でこの強さになったから、過酷な修行でもすると思っているんだろうな。うちは緩いからなあ。
「わかった。お預かりしましょう。今更一人増えても変わらんしな」
俺がそう言うと、なぜか二人は胸をなでおろす。
爺さんは、このまま鍛えてもらえば、わが一族の最強が誕生する。やっと肩の荷を下ろせる。と考え、お母さんは、これで、爺も少しはおとなしくなるし、優秀な子をこの年で確保できれば万々歳よ。ちょっと気が弱い感じもするけれど、少し諭してあげればまだ中学生。どうとでもなるはず。
いろんな思惑が交差する。
とりあえず、飯を食べ、落ち着いたところで、
「さあ、人数もそろったし、残り25階。夕方までに潰すぞ」
そう言うと、ゲスト家族は驚愕する。
5階分走って来た2人はもちろん、お母さんまで?
「ダンジョンというものは、数日かけて攻略するものと書いてあったんですけれど?」
なるほど、お母さんは調べたんだな。
「それは一般の場合です。家はその気になれば、数百単位で攻略しますから」
とりあえず、そう答える。
なるほど、確かに神崎殿。次元が違う。
しかし、ついて行けるのかわし?
えーと、一階層2~3kmって書いていたわよね。3kmだと75kmもあるのよ。モンスターを倒しながら行けるの?
そう言っている間に、バーベキュー用の荷物が無くなり、
「行くぞ」
の掛け声。
「えっ、私の薙刀」
そう言うが、皆は走り始める。
ほぼ、全力疾走。これは辛いわ。
目の前に出てきたモンスターは、瞬時に凍り砕け散る。
その後、体が温かくなる。
幾度かそれを繰り返していると、ついて行くのに余裕が出て来た。
目の端には壮二が居る。
「ねえ壮二君」
「はい」
「あなたはまだ中学生だから、分からないと思うのだけど、女はね……強い男にあこがれて導いて欲しいと思うものなのよ」
「はあ」
「神音はね、小さなころから外で裸で走り回り、苦しい修行に耐えるのが嬉しい性格なの。分かる?」
「そうなんですか?」
「そう。だからね。遠慮なくビシビシと痛めつけて押さえつけると喜ぶのよ。それが神音なの」
何か怪しい話を、お母さんが壮二に吹き込んでいるな?
「そう。だからやさしさと厳しさで、あの子を教育してあげて。無理なんてほざいてもそれを克服すると、それは喜びに変わるから。きっとね」
壮二が信じてもいやだな。
「余裕がありそうなら、スピードを上げるぞ」
神崎さんがそう言った瞬間、スピードがもう一ランク上がった。
ああ……だめ、付いて行けない。何でみんな平気なの?
そう思った瞬間。爺さんが、もんどりうって転んだ。
「じいさん大丈夫か?」
「わしはもうだめだ。後は若いものにすべてを任せる。露と落ち 露と消えにし我が身かなじゃ」
「あんたは秀吉か。余裕があるじゃないか。仕方ないフェンもう一回だ」
だがフェンは、首を振る。
仕方が無い。
「10階で待っとくから。気を付けて来いよ」
そう言って、俺は爺さんを抱えてゲートをくぐる。
「ああっ、わたしもぉ……」
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