人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり

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第1章 異世界との遭遇

第27話 報告

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「おい。着替えは持っているんだろう」
「うん。はい」
「風呂にでも入って、ゆっくりしろ」
「えっ。お風呂入る入る」
 やっぱり日本人だな。
 日々、初歩的な浄化は使っていたようだが、風呂は別格だ。

「私の、荷物をください」
 親父が居るが、まあ良い。
 収納庫から、ザックを取り出して渡す。
 横で目を見開く、親父に言う。
「後で説明するから」

 酒井さんを、風呂場に案内して使い方を説明する。
 田舎の家だから、風呂は別棟になっている。
「うわー広い。一緒に入れますね。入ります?」
 そんな冗談は無視だ。

「一体何だよ、あの宣言は。親父より俺の方が驚いたぞ」
「えー、あー。嫌ですか? 私じゃだめ?」
 もじもじしていたが、近寄ってきて、下から見上げてくる。
 ずるいだろう。それは。

「あー。どうしても嫌というわけじゃないが、まだよくわからん同士だしな。こういうことは順を追って、むぐっ」
 いきなりキス。

 そっと離れると。
「そういうのは、中高生でいいんです。私たちは、大人。どう感じるかです」
 訳の分からない言葉だが、妙に納得してしまった。
「えへっ。やっぱり、一緒に入ります?」
「親父に殺される。釜は壊すなよ」
 そう言って、そそくさと、風呂場から離れる。

 浴室に入り、シャワーを出す。
 あーテンパって、色々暴走した気がするぅぅ。
 どうしよう、キスまでしちゃった。
 嫌われている感じはないけど、失敗い…… かなぁ。
 がっついてると、思われたかしら。
 少しぬるめのお湯を、頭からかけながら、そんなことが頭に浮かぶ。

「おう、どうした。赤い顔して」
「何でもない。まず彼女が降りてくるまでに、俺たちがしていたことを、ざっと説明しておこう」

 そう言って座り、ビールをぐっと飲む。
 親父が突っついていた、スルメだった炭を捨て、亜空間収納庫に、ストックしていた1夜干しをあぶったので、3倍酢でつまむ。

「夏前に、畦で草刈りをしていたんだよ。そしたら、奇妙な生き物を一緒に刈っちまってな」
 そう言っただけで、思い当たったようだ。
「それってあれか、市内で居た、ダンジョンの」
「そうだ。後で分かった。そのニュースを見て、探したんだ。ダンジョンを」
「なら、あったんだな?」
 俺はうなずく。

「今、入り口は隠してある。家の田んぼ、そのすぐ下側。谷の法面だ」
「そんな所に」
「他にもある。今回警官が来たのは、そっちの事だろう」
「どこに?」
「家の山」

「なんだと。そんなに幾つもあるのか。あれはモンスターが出てくるんだろ?」
「ところがどれも、今のところ出てきていない。なぜかは知らんが、出口でモンスターが引き返している」
「そうなのか? しかし、出てくれば問題になる。みんなに迷惑がかかる」
「もう一個あるが、そこも、イノシシが管理していたから、大丈夫だろう」
「イノシシが? 管理? なんだそりゃ」
「多分、定期的にモンスターを狩っているんだろ」

 そう説明すると、あっけにとられているのだろう。親父が見たことがないような変な顔をしている。
「まあいい。それで?」
「ああまあ。それで面白がって、真一と二人で、どんどん攻略して、多分最終の所まで行ったんだよ」
「最終まで? 自衛隊でも、まだほとんど攻略が進んでいないと聞いたぞ」
「200階層くらいだが、まあそれが、いけたんだよ」
 そう言って、ぐっとビールを飲むと、親父のグラスにもつぐ。

「そこでだ、もう一つの石版を見つけて」
「石版? 石版てなんだ?」
「あるんだよ。1階から10階ごとに。それに登録すれば、目的の所へ飛べるものが」
「そんな報告、見た事ないな。いや、そうか。10階ごとに目印があると書いていたのが石版か」
 親父が、そんなことをつぶやく。

「どこでそんな物を見たんだよ、と言っても警察署の資料室か。退職しているんだから叱られるぞ」
「やかましい」

「それでだ、もう一つの石版で飛んだら、異世界につながっていた。国名はアミサム王国。絶賛魔王様の侵攻を受けていてな、魔王は俺と真一で追い返した」
「ふーむ。にわかには、信じられんが。それであの子は?」
「勇者様だ」
「勇者様?」
「ああ。魔王に襲われて困ったんだろう。アミサム王国ともう一つのアルテリウム王国が共同で異世界召喚をして、勇者を呼んだらしい」
 そう言うと、口を開けて呆ける親父。箸に挟んでいた烏賊がテーブルに落ちる。

「そんな事ができるのもびっくりだが、異世界か…… あれ? そういえば変なニュースがあったな。現在の神隠しか、異世界召喚とか言って、ニュースになっていた。確か東京の方で」
「それだ。被害者は、坂本祐哉23歳と」
「ちょっと待て、メモする」
 そう言って、メモを用意する親父に対し、向こうで書いてもらったメモを見せる。

 そんなのがあるなら、はやく見せろという感じで、ひったくられる。
「ほう3人。もう一人女の子がいたのか」
「そうなんだ。そっちが良い子だったんだが、勇者君と付き合い始めて、出遅れた」
「彼女には言うなよ」
 そう言って、にらまれる。
「分かっているよ」

「で、残り二人は?」
「修行中」
「なんだそりゃ?」
「こっちへ帰ってきても、当然前職は首だろ?」

 そこし考える親父だが、
「まあ、そうだろうな」
 と答えが返ってくる。

「で、強くなれば自衛隊とか、どうせ監視対象になるだろうし、雇ってもらえるだろう」
「異世界。勇者か。まあそうだな。まだ向こうか?」
「まだ20階くらいで、うろうろしている」
「そうか。だが彼女の事について、報告は必要だぞ。親御さんだって心配だろうし」
「そうなんだよ。そこで相談しようかと」
「ところで、彼女は遅いな」
 時計を見る。1時間以上経っている。

「やべ」
 俺は、風呂場へ向けてダッシュする。
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