人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり

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第1章 異世界との遭遇

第26話 我が道を行く

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「まだやるんですか? 10回は超えましたよ」
「ああそうだな。まあいいか。俺たちは帰る」
 そこそこ無駄な動きもなくなったし、大丈夫か。

「体もそこそこ強化されたし、荷物も大丈夫だな。早く空間魔法を覚えろよ」
「はい頑張ります」
 そう言うと、勇者君はすっと杉山さんに近づく。
「僕は頑張るよ。待っていてね」
 そう言って、抱きしめ、キスをしやがった。
 ああ腹が立つ。

「いくぞ」
 そう言うが離れない。
 酒井わんこは、離れるもんかという感じで俺の背中に張り付きっぱなしだ。

 もう置いていくか? 俺がそう思うと、
「もう置いていこうぜ」
 真一から、そんな言葉が吐かれる。

「凪沙、行って。僕は大丈夫さ」
 そう言って爽やかに笑う。
 あーちくしょう。

「おらいくぞ、どこかに摑まっておけ」
 横で手を広げる、真一は無視され、俺に摑まっているわんこにへばりつく。

 そのまま、イメージをして最下層へと飛ぶ。
 背中の感じはある。
 すぐ後に、真一も飛んできた。

「よし、この石版に認証してくれ」
 そう言うと、二人とも認証する。
 と思ったら、杉山さんが、消えた。

「あらら。戻ったか。まあいい。俺らは帰るか」
 酒井わんこに、もう一つの石版に手を当てさせる。
「目的階層は、見えるか?」
「見えるんですけど、ここ200階層なんですか」
「そうだったか? あーそんなもんだ。1階は見えるか?」
「うん」
「じゃあ飛べ」
「やだ。一緒がいい」
 なんだこいつが、変にかわいいぞ。

 横で、真一がにやついているし。
「おう。それならみんなで出よう」
 そう言って、飛ぶ。

「ここが、1階?」
「ああすまん。入り口を隠してあるから暗いんだ」
 そう言って、出口へ向かう。

「わあ、川だ。田舎だ」
「やかましいさっさと移動しろ。ここに居るのを見られたくない」
「どっちへ行くの?」
「こっちだ」
 そう言って、スタスタと上の道へ向かい、家へと帰る。
 その道すがら、親へのいいわけで、俺は頭を悩ます。

「どうするんだ?」
「なにが?」
「この子を連れてきた、言い訳だよ」
「田舎体験をしながら、友人を待つ。俺はそれを受け入れた」
「そんなところでどうだ? 酒井さん」
「あっうん。何でもいいです」
 大丈夫かこいつ?

 あー日本へ帰ってきた。
 それに、松田さんのおうちへ行くのよね。
 お父さんとか、ご家族に挨拶しなきゃ、お世話になるのよね。
 家で、一緒に暮らす。……うふ。
 なんていい響き。小さな頃は、お嫁さんて憧れだったのよね。
 一緒の家なら、美咲。我慢できないんだ、一緒に寝ようとかって、松田さんが夜中に……。

「おい、日本に帰ってきたからって、こいつ明らかにおかしいぞ。特に顔が」
「言うな、見るな」
「よだれでも、垂らしそうな」
「見るな」
 少し足早に、家へと帰る。

 手前で、真一と別れ、なぜか「がんばれ」と声をかけられる。

 家へ帰ると、なぜか親父が、皿にのった炭を突っついていた。
「おう帰ったか。おまえ何やった?」
「あん? 何もしてないぞ」

 親父は目線をあげて、一瞬目を見開く。
「後ろの、コスプレしたお姉ちゃんは?」
 そうか、王国の戦闘用軽鎧。

「ああそれがな、」
「お父さんですね。初めまして。私、酒井美咲25歳。女です。身長161cmでバスト87.1でDです。ヒップも86あって、安産型です」
 一気に、そんなことを口走る。

 親父は驚いた様子で、それを聞いていたが、立ち上がり挨拶をする。
「えっ。ああそうですか。そりゃどうも。私はこいつの父親で巌。連れ合いは5年ほど前に亡くなったので、こいつと二人暮らしています。それで、息子とはどういうつながりで?」

「あっ、えーと色々とあって助けてもらいました。ふつつか者ですがよろしくお願いします」
「あーと。こちらこそよろしくお願いします。と言うことは、息子の嫁にでも来る話なのかな?」
「やだーぁ。お父さんたら。喜んで」
 そう言って、親父をばしばし叩く。

「なかなか、元気そうな娘さんだが。おい、広大ちょっと来い」
 そう言って、座敷へ連れて行かれる。

「言いたいことは分かるな。ガキじゃないんだ」
「あー。親父の言いたいことは十分承知だ。ただ言い訳させてくれ」
「なんだ」
 そう言って、にらんでくる。

「あいつは、馬鹿なんだ」
 きっぱりと言い切る。おやじは、さらに驚いたようだが。
「そうなのか? それで?」
「嫁さんどうこうなど、おれも今聞いた」
 そう言うと、また一瞬驚く。

「手を出しちゃいないのか?」
「それどころか、付き合った記憶もない」
「うむ。まあいい。これも何かの縁だ。おまえももう40になるだろ。手を打て」
 さっきの感じと、違うじゃねえか。何言ってんだよ親父。

「馬鹿な子はそれなりに良い。それよりもだ、あの格好と、つながりは何だ? どこで拾ってきた?」
「それについては、後で話す。ちょっと込み入っていてな。親父の手も借りなきゃならん」
「ふむ。あの悪ガキと何かをしていたが、それの絡みか?」
「ああそうだ。とにかく警察や自衛隊が絡む」
「それのせいで、越田が来たのか。おかげで、スルメが炭になっちまった。おまえ買って来いよ」
「よくわからんが、分かったよ」
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