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7 生まれてきた理由
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御目見えの日を境にして、家の中での私の扱いは一変しました。
「本日よりこちらがお嬢様のお部屋となります」
まず、真っ先に部屋を変えられました。
邸宅の中で最も大きな部屋から、一番狭い部屋に。
そこは、置かれている家具も古びていて、広さも前の部屋の半分程度です。
御目見えの日までは、シルティアが使っていた部屋でした。
「それでは、失礼します」
私をここに連れてきた侍女は、早々に部屋を出ていきました。
これで、私は一人です。
先日までは、常に何人かの侍女が付けられていたのに、それもなくなりました。
そしてここから、私が夜会に連れていかれることもなくなったのです。
お父様はそれまでずっと、私を夜会や晩餐会に伴っていたのに。
それも、シルティアの役割となりました。
私は何を求められることもなくなって、ただ、日々を無為に過ごすだけでした。
部屋を出れば、そこに侍女や使用人達の噂話が聞こえます。
「――シルティアお嬢様、大人気らしいわよ」
「――それはそうよ。だって明るくて活発で、話していて楽しい人だもの」
「――私達みたいな身分の人間にも分け隔てなく接してくれるものね」
「――それに比べてリリエッタ様は、いつでも澄まし顔でいかにもお貴族様よね」
聞えよがしとは、まさしく彼女達のことを言うのでしょう。
わざわざ私に聞こえる声で喋って、私が通りかかればそそくさといなくなる。
私が、彼女達に何をしたというのでしょうか。
いいえ、何もしてこなかったから、こんな風になっているのでしょう。
侍女や使用人達を使うことだけをして、感謝もしてこなかったのが、私です。
きっと、以前から使用人達の間ではシルティアの方が人気があったのでしょう。
今になって、私はそれを理解したのです。
だからってそれに対して私ができることは、何もありません。
お父様とお母様は、今夜もあの子を連れてパーティーに出かけています。
私だけが置き去りにされて、狭い部屋の中に取り残されています。
夜、暗い部屋の中で、私は窓から星空を見上げます。
そして、考えるのです。
「……私は、どうすればよかったのでしょう」
小さい頃からお父様の期待に応えられるよう、学び続けてきたはずなのに。
サミュエル殿下の婚約者という役割を全うしようとしてきたのに……。
けれど、その役割はシルティアが担うことになりました。
生まれてきた理由を妹に預けることとなった私は、何をすればいいのでしょう。
いえ、そもそも私は、リリエッタ・ミラ・デュッセルという女は――、
「私は、誰?」
呟く私の顔が、窓に映り込んでいます。
私は、笑っていました。
あの日と同じく、いつものように、教えられた通りに、学んできた通りに。
見せる相手もいない、華やか艶やかでそ空っぽな笑みを、浮かべていました。
私の中には、身を焼くような悔恨があります。
燃えるような怒りがあります。海より深い悲嘆があります。
それでも、窓に映る私は笑っていたのです。
一つも笑えないはずなのに。笑いたくなんて思っていないはずなのに……!
「ああ……」
吐息が漏れます。何もかも、シルティアの言う通りでした。
私には何もなくて、本当にむなしい生き方しかしてこなかった、みじめな女で。
だから、どなたか教えてください。
生まれてきた理由を失った私は、これからどう生きていけばよいのでしょうか。
どなたか、教えてください。
「本日よりこちらがお嬢様のお部屋となります」
まず、真っ先に部屋を変えられました。
邸宅の中で最も大きな部屋から、一番狭い部屋に。
そこは、置かれている家具も古びていて、広さも前の部屋の半分程度です。
御目見えの日までは、シルティアが使っていた部屋でした。
「それでは、失礼します」
私をここに連れてきた侍女は、早々に部屋を出ていきました。
これで、私は一人です。
先日までは、常に何人かの侍女が付けられていたのに、それもなくなりました。
そしてここから、私が夜会に連れていかれることもなくなったのです。
お父様はそれまでずっと、私を夜会や晩餐会に伴っていたのに。
それも、シルティアの役割となりました。
私は何を求められることもなくなって、ただ、日々を無為に過ごすだけでした。
部屋を出れば、そこに侍女や使用人達の噂話が聞こえます。
「――シルティアお嬢様、大人気らしいわよ」
「――それはそうよ。だって明るくて活発で、話していて楽しい人だもの」
「――私達みたいな身分の人間にも分け隔てなく接してくれるものね」
「――それに比べてリリエッタ様は、いつでも澄まし顔でいかにもお貴族様よね」
聞えよがしとは、まさしく彼女達のことを言うのでしょう。
わざわざ私に聞こえる声で喋って、私が通りかかればそそくさといなくなる。
私が、彼女達に何をしたというのでしょうか。
いいえ、何もしてこなかったから、こんな風になっているのでしょう。
侍女や使用人達を使うことだけをして、感謝もしてこなかったのが、私です。
きっと、以前から使用人達の間ではシルティアの方が人気があったのでしょう。
今になって、私はそれを理解したのです。
だからってそれに対して私ができることは、何もありません。
お父様とお母様は、今夜もあの子を連れてパーティーに出かけています。
私だけが置き去りにされて、狭い部屋の中に取り残されています。
夜、暗い部屋の中で、私は窓から星空を見上げます。
そして、考えるのです。
「……私は、どうすればよかったのでしょう」
小さい頃からお父様の期待に応えられるよう、学び続けてきたはずなのに。
サミュエル殿下の婚約者という役割を全うしようとしてきたのに……。
けれど、その役割はシルティアが担うことになりました。
生まれてきた理由を妹に預けることとなった私は、何をすればいいのでしょう。
いえ、そもそも私は、リリエッタ・ミラ・デュッセルという女は――、
「私は、誰?」
呟く私の顔が、窓に映り込んでいます。
私は、笑っていました。
あの日と同じく、いつものように、教えられた通りに、学んできた通りに。
見せる相手もいない、華やか艶やかでそ空っぽな笑みを、浮かべていました。
私の中には、身を焼くような悔恨があります。
燃えるような怒りがあります。海より深い悲嘆があります。
それでも、窓に映る私は笑っていたのです。
一つも笑えないはずなのに。笑いたくなんて思っていないはずなのに……!
「ああ……」
吐息が漏れます。何もかも、シルティアの言う通りでした。
私には何もなくて、本当にむなしい生き方しかしてこなかった、みじめな女で。
だから、どなたか教えてください。
生まれてきた理由を失った私は、これからどう生きていけばよいのでしょうか。
どなたか、教えてください。
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